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加藤哲郎、日本シリーズ「巨人はロッテより弱い」発言の真相は
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2019.10.24 06:00 最終更新日:2019.11.06 10:18
100試合以上のペナントレースとは違い、負けたら終わりの「日本シリーズ」。最高峰の舞台の裏にあった男たちの人間ドラマを追う。
巨人と近鉄が対戦した1989年の日本シリーズ。6回1/3を無失点で、第3戦の勝ち投手になった加藤哲郎(55・近鉄)さんに、ある記者が「(巨人は)ロッテより弱いんじゃないか?」と聞いた。
「僕は『ロッテに失礼なんで、そうは答えられないです。ただ打線のうえでは、(ロッテのほうが)怖いかもしれない』と答えました。そしたら翌朝の新聞に『ロッテより弱い』と。そのときは、なんとも思わなかったんですが、先輩、後輩が『エラいことになってるで』と言う。球場に行くと、前日とはまったく違う雰囲気でした」
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その日までの巨人は3連敗中。シリーズ敗退の崖っぷちにあった。
「意外にも巨人側が怒ってるとか、そういった“圧”を感じることはなかった。やはり3連敗中だったからでしょうか。東京ドームの巨人ファンのスタンドもおとなしめだったんです。言われ放題で気分は悪いんだろうけど、言い返す言葉もないし……みたいな、しょぼくれた感じだったんでしょうね」
しかし、結果はそこから連敗。近鉄が3勝2敗のかたちでホーム・藤井寺球場での試合を迎えることになった。
「もう、そのときは形勢が不利になっていました。よく『ホームに戻るんだから』と言われますが、やっている選手からしたらそんな単純なものじゃないですよ。
応援団は増えますけど、選手たちの気持ちの中では『ちょっとこれはマズいなあ』、こんな感じでした。近鉄は5戦めのエース対決で、原(辰徳)さんの満塁本塁打で負けた。そこが分岐点でした」
そして3勝3敗で迎えた第7戦、ふたたび加藤さんに先発がまわってくる。巨人打線に打ち込まれ近鉄は、4連敗で日本一を逃した。
「『やっぱり、自分の順番になるわな』『分が悪いな』と思いました。結果的に駒田(徳広)さんに先制本塁打を打たれ……。でも、『勝負は時の運』『負け方が悪かっただけで、1つの勝ち負けの差だけ』と割り切っている部分が、当時はありました。
僕だけじゃなくて、エースの阿波野(秀幸)も山崎(慎太郎)も1勝1敗ですから。でも、こうやってクローズアップされることはありがたいです。あのことは自分が野球をやっていた“足跡”のように感じます」
かとうてつろう
1964年4月12日生まれ 宮崎県出身 ドラフト1位で1983年に近鉄入団。1989年8月、ダイエー戦でプロ初完封勝利。1994年、広島へ移籍するも、1シーズンで引退。引退後は俳優、クラブ店長、焼き肉店店長などを経験した