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独走ソフトバンクを支えるバックネット裏の「人工知能兵器」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2016.05.28 06:00 最終更新日:2016.05.29 02:45
ヤフオクドームのバックネット裏の記者席真上に、奇妙な装置がぶら下がっているのをご存じか。一見するとただの黒い板にしか見えないが、中身は最新技術を詰め込んだ優れものだ。その名も「トラックマン」。デンマーク製の弾道測定器で、米軍が迎撃用ミサイル「パトリオット」を開発する際に生まれた技術を活用しているという。
スポーツでいち早く取り入れたのがゴルフ界。ヘッドスピード、スピン量、飛距離などを正確に計測する。野球では、メジャーのある球団が7年前に設置し、2014年には全30球団がインストールを終えた。日本では2014年の楽天が初で、ソフトバンクは2016年から。その能力をトラックマンジャパンの倉持学氏と篠塚佳昭氏が解説する。
「トラックマンは、投球でいえばスピード、回転数、リリースポイント、ボールの回転軸などを正確に計測できます。打撃に関しては打球速度、角度、飛距離など。また、リリースポイントを正確に数値化することで、たとえば連投で疲れているとき、肘の位置がふだんより高い、低いなどもわかる。となれば、コーチも『いつものフォームと違っている』と進言できるので、怪我の防止にも役立ちます」(倉持氏)
データは試合後、米国本社に送られ、アナリストが分析し、翌日の試合前には数値化されて送り返されてくる。さらにソフトバンクは、そのデータを人工知能を駆使して解析するという。
「データは、球団のアナリストが独自に解析して選手に伝えます。そのデータをどう使うかは球団次第。相手のデータも取れますからね。ソフトバンクには、専門のアナリストが3人ほどいると聞いています」(篠塚氏)
気になるお値段だが、ゴルフの携帯用が250万円ほど。野球の場合、「トラックマン」自体はリースの形を取り、分析されたデータを買い、一年間の使用で数百万円だという。
「ゴルフの松山英樹選手やイ・ボミ選手もオーナー(購入者)です」(篠塚氏)
これまで対戦相手の分析は、スコアラーといういわば職人芸に頼っていたが、これからはデータ化されたものがタブレットに届き、それを見てマウンドに立ったり、打席に入るという光景が日常的になっていくかもしれない。
「孫正義オーナーは、巨人を超える10連覇が目標と語っているが、真の目標は世界一。その証拠に、2015年日本シリーズを連覇した直後、メジャーを制したロイヤルズのオーナー、D・グラス氏に『世界一決定戦をやろう』と電話している。実現しなかったが、本気で世界一を狙っている」(担当記者)
“人工知能兵器”が援護射撃。最強軍団に抜かりはない。
(週刊FLASH 2016年6月7日号)