「一人暮らしを始めて1年たちますが、練習であまりに疲れすぎた日には料理ができず、外食することもあります。でも、なるべく自炊するように頑張っています」
17歳男子の一人暮らしって、いったいどんな食生活なのでしょう。
練習はとにかくハード。必死で食べないと、57キロの体重をキープすることもままならないといいますが、質の高い食事と栄養バランスを、アスリートならば真剣に考えなければなりません。
「野菜の切り方から学んで、1年たって、切るスピードは上がりました(笑)。レパートリーはカレー。具材が一緒なので、シチューも作れるようになりました。『マーボーの素』なども日本から持っていき、トロントで何とか材料を調達して作っています」
頑張って作っているのは、卵を巻いて作る卵焼きとステーキだそうです。「ステーキは、これまでいつも焼きすぎて硬くなっていたけど、先日、いい感じでミディアムレアに焼けて、『やった!』と思いました」と屈託がありません。
■英語のインタビューで、頭が真っ白に!
トロントでの生活も3年。言葉の上で日常生活には何の心配もなくなったそうですが、「先生とがっつり技術的なことを話し合おうとすると、単語のレパートリーが少なくて、まだまだです」と謙虚に語る西山選手です。
国際舞台に立つことが増えて、ジュニアグランプリシリーズでは、突然呼ばれて英語でインタビューを受けることもありました。
「インタビューは日本語でも答えるのに気を使いますが、そのときは頭が真っ白になってしまって! 後で見返してみたら、その方がすごく簡単なことを言っているのに、なぜこんなことが答えられなかったのだろうって。回数を繰り返して、学んでいきます」
私が驚いたことは、スケート選手が、想像以上に過酷なスケジュールをこなしている点でした。11月、試合と練習のための移動はこんな感じでした。
トロント→東京→軽井沢→東京→岡山→滋賀→岡山→滋賀→東京→岡山→長野・野辺山→新横浜→トロント
1カ月の半分はホテル生活で、東京の実家にもほとんどいられなかったそうです。
「中学生になって本格的に競技をやるようになってからは、ずっと練習場所を求めて移動の毎日でした。だから、普段トロントにいるのは楽です。国内で東京とどこかのリンクの移動にかかる数時間が、日本とカナダ間で13時間になったというくらいの感じかなぁ」
それもこれも、「人の心を打つ演技」を求めてのこと。今後も、活躍に期待しましょう。
●取材・文/横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)