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福原愛を勝たせたトレーナー「勝利の秘密は自己効力感」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2017.01.20 17:00 最終更新日:2021.03.08 18:15
写真:AFLO
青学大の駅伝チームから卓球の福原愛、テニスの伊達公子までを勝利に導いてきたフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一が言う。
「ダイエットをしたいと考える人は、そのためにやらなければいけないことも、やってはいけないことも、おおよそ分かっているはずです。専門的な知識を持っていなくても、深夜に高カロリーなものを食べたら身体に良くないと考えるでしょうし、ランニングの頻度が落ちればマズいなと思うはずです。
『こうすれば痩せる』という処方箋を提示されても、1カ月、3カ月、6カ月と持続するのは簡単ではありません。
だとすれば、運動や食事制限を義務的にとらえるのではなく、自分からやろうと思える動機付け=モチベーションを持たなければ、処方箋は持続性を帯びていきません」
読書が好きな人は、どんなに忙しくても本を開く。10分でも読もうと思う。日々の運動だって同じようにできるはずだ。とは言っても、モチベーションをピンと張り詰めた状態で過ごすのは、なかなか大変なものだ。
「人間がモチベーションを持続するには、成功体験だけでは不十分です。成功体験に加えて、達成感が必要です。
100パーセントできる見込みのトレーニングでは、達成感は『ふう、終わった』という程度でしょう。それを達成感と言っていいのかどうかも疑わしい。最初からできると分かっているトレーニングの強度なので、感情はプラスにも、マイナスにも揺れません。達成感が湧き上がるのは、それまでできなかったことができたときです」
腕立て伏せを1日20回できる人が、1日20回やる。
腕立て伏せを1日20回できる人が、1日30回やってみる。
達成感を得られるのはどちらか。
「自分の能力から考えて無理なくできる回数ではなく、『難しそうだけど頑張ればできる』という数字のほうが、モチベーションの維持には有効です。頑張ったぞ、できたぞ、という達成感が、『自分にはできる』という『自己効力感』につながっていくのです。
市民ランナーが走る距離を延ばしていく過程では、この自己効力感が支えになっていると言えるでしょう。
自己効力感を生み出す要因としては、成功体験、代理体験、想像体験などがあります。成功体験は自分自身が達成したもので、代理体験は誰かの成功に触れることです。青学駅伝チームの1年生たちは、先輩たちを見ることによる代理体験によって、自己効力感を作り出していると言えます。想像体験は、自分や他者の成功をイメージすることです。
いずれのケースでも、自己効力感がモチベーションにつながり、成功体験を獲得し、さらに高い自己効力感を得られる、という連鎖が生まれていきます」
――以上、中野ジェームズ修一、 戸塚啓氏の近刊『結果を出し続ける~フィジカルトレーナーの仕事~ 』(光文社新書)より引用しました。
卓球の福原愛選手の五輪二大会連続メダルに貢献し、青山学院大学駅伝チームの2連覇の影の立役者となったフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一。
その中野が、2016年リオデジャネイロ五輪の総括から、常勝軍団・青山学院大学駅伝チームとの秘話、自身の仕事術や哲学までを、スポーツライター戸塚啓を聞き手に徹底的に語り尽くします。
●『結果を出し続ける』詳細はこちら