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野村克也「岩隈久志を見習うな」発言の深~い理由
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2017.01.30 20:00 最終更新日:2017.01.30 20:00
「いまの球界にはリーダーがいないんだけど、一人注目している人物がいる。教え子でもある宮本慎也だね。彼は野球を深く考えることができるから。ただ心配なのは、俺と似て媚を売れない。いまの時代は能力より処世術が先にきて、口のうまい人が監督になる。寂しい時代になったよ」
こう語るのは野村克也(81)だ。野村氏は、どの球団で監督になっても選手に語りかけた言葉がある。
「プロに入ると多くの選手が、その時点で夢を達成した思いに浸り、終着点だと思ってしまう。
こうして、ダメな方向に進んでしまうんだよね。だから入団は出発点に過ぎない、と言う。プロで活躍する、次はレギュラー、主軸、一流を目指すところに終わりはない。
ただ、いちばん困るのが数字は一流で、取り組みが二流の選手。楽天時代に岩隈久志がいた。彼は成績で見ればエースだけど、よく登板回避を申し出てきた。ちょっとのことは我慢してチームのために投げる、といった気概がなかった。
そういった選手は、監督として一流と認めるわけにいかない。だから若手には、『岩隈を見習うな』と言っていた。Ⅴ9時代のONのように、一流はチームの鑑(かがみ)でなくては」
今年はペナントの前にWBCが開幕するなど、今年以上にプロ野球が注目されることが予想される。
「だからこそ言いたいこと? いやいや、最近は死を考えるようになったし、俺の人生は『もう終わった』というのが実感だね。眠るように逝きたい、というのが本音。本当だよ(笑)。ただ、野球は本当におもしろい。まだまだ、やり残したことが多くあると実感しているね。
野球とは? とよく聞かれて、『頭のスポーツ』と答えている。なぜなら、一球一球の間にこれだけ考える時間のあるスポーツはほかにないから。現役時代は、ずっと考えていて、一試合で頭がヘトヘトになっていたもの。
ただ、そうは答えても、なんか違う、そんな簡単なものじゃない、とも思う。いまでも答えが出ないし、深く考えれば考えるほど、追い求めるものがどんどん出てくる。
だからこそ生まれ変わっても野球、捕手をやると思うな。そうすれば、『野球とは?』の答えに近づくんじゃないかと思っているよ」
御年81歳。
「最近は足腰が弱くなって……」と弱気な姿も見せるが、その舌鋒鋭い意見は、まだまだプロ野球界に必要である。
(週刊FLASH 2017年1月3日号)