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『M』脚本担当・鈴木おさむに聞いた「世間のザワつかせ方」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.07.25 16:00 最終更新日:2020.07.25 16:00
「原作が出たときに、世の中がザワついたじゃないですか。だからドラマをやるときは、別のザワつき方をさせたいなと思ったんです」
そう語るのは、放送作家の鈴木おさむ(48)。脚本を担当した『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系、現在はABEMAで配信中)は、おおいに世間をザワつかせた。
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「2017年に、テレビ朝日さんで『奪い愛、冬』というドロドロの恋愛ドラマの脚本を担当させていただきました。水野美紀さん演じる、蘭さんという猟奇的なキャラクターが濃かったこともあって、後半になるにつれて、ネットがすごく騒がしくなっていったんですよ。
そのときに、『こういうキャラは新鮮に見えて、ネットで盛り上がりながら観られるんだな』っていうのがわかって。
『M』の原作は、浜崎あゆみさんの人生をもとにしたラブストーリー。でも、ドラマでは、いろいろな見方ができる強烈なキャラクターを作りたかった。
『どこまで本当なの?』と思わずつぶやいたり、ツッコみたくなるようなものにすれば、リアルタイムで観られるんじゃないかと思ったんです」
鈴木の狙いどおり、田中みな実が演じた秘書・姫野礼香の不気味な眼帯や、「許さな~い」とアユ(安斉かれん)に迫る怪演ぶりが話題に。一度見たら忘れられないキャラクター作りは、かつて大ヒットを飛ばした「大映ドラマ」の影響もあるという。
「子供のころに『スチュワーデス物語』を観て、義手から手袋を外す片平なぎささんのものまねをして、遊んでいた思い出があります。
数年前、滝沢秀明さん主演の『せいせいするほど、愛してる』(2016年、TBS系)というドラマで、滝沢さんの奥さん役の木南晴夏さんが不倫相手に、『この泥棒猫!』って叫ぶシーンがあったんです。ドラマが放送されていたとき、公園の前を通ったら小学生が、その台詞のものまねをしていた(笑)。
いつの時代も、子供は背伸びをして、まねをしたがる。そんな感じになればいいと思ったんです」
そんな子供たちへの鈴木の思いが、漫画の原作にも表われている。小中学生向けの少女漫画雑誌『なかよし』(講談社)で2020年7月号まで連載をしていた『秘密のチャイハロ』は、鈴木が原作を担当。まさにドロドロの少女漫画なのだ。
「『奪い愛、冬』を観た担当者が、僕に依頼をしてくださった。子供の格差やスクールカーストをテーマにできないか、という話になって。
それで、本当に貧しい選ばれた子供しか働けない “チャイルドハローワーク” ということで『チャイハロ』というタイトルになりました。子供たちから応援のハガキが届くのは、嬉しいですね(笑)」
ドラマの脚本に、少女漫画の原作。鈴木に肩書をたずねると、「放送作家です」と、すぐに答えが返ってきた。
「放送作家って、何をやってもいいんですよ。番組によっては企画を考えたり、脚本を全部書いたり、プロデューサー的な役割もする。
(権威のある肩書の)作家に “放送” がついてる怪しさが、僕は好きなんです。親にもいまだに『何をやってるの?』って言われますけどね(笑)」
“何でも屋” だから、舞台もできる。脚本と演出を担当した2018年の舞台『八王子ゾンビーズ』は、大評判となり映画化。鈴木は、脚本・監督を務めた。
「何でも屋といっても、僕は常にテレビの人間。ふだんはバラエティで、リアルタイムで見せる難しさを、すごく感じながらやっています。このコロナ禍で、“テレビという機械” にふれた人が、めちゃくちゃ増えたと思うんです。
YouTubeを、スマホではなくテレビで観たり、Netflixの契約をしたり。そうなるとテレビのなかが、本格的な “奪い合い” になってくる。強いライバルも現われましたが、同時に『テレビがおもしろい』と思った人も、たくさんいたと思うんです。
でも、その時期に撮影ができず、バラエティをお見せすることができなかったのが、すごく歯痒くてね。こういう思いを経て、何をお届けできるのか。テレビ人として、今が勝負どころだと思います」
すずきおさむ
1972年生まれ 千葉県出身 大学在学中の19歳で放送作家デビューし、以来人気番組を多数担当。妻は森三中の大島美幸
(週刊FLASH 2020年7月28日・8月4日号)