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社会学者が解説 にこるん、みちょぱ…ギャルは閉塞の時代に
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.10.11 11:00 最終更新日:2020.10.11 11:00
バラエティ番組で、なくてはならない存在となったギャル系タレント。藤田ニコル(にこるん)、池田美優(みちょぱ)、木村有希(ゆきぽよ)がその代表格だろう。社会学者(テレビ論)でメディアと文化を研究する太田省一氏に話を聞いた。
「ギャルブームは、社会が閉塞感に包まれたときにやってきています」。太田氏は、そう説明する。
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「安室奈美恵をまねたファッションをする『アムラー』がブームになったのが、1990年代半ば。現在のギャルの原型はそこだと思います。学校や家庭といった、伝統的な場所に反発し、渋谷などのストリートに出てたむろする。“自由になりたい”という気持ちが、ギャルのベースにあると思います。当時の日本には、圧倒的な閉塞感が漂っていました。平成になりバブルが崩壊し、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件など、大きな災害や事件が立て続けに起こった時期です。世の中のみんなが『いまのままではだめだ、何か違う生き方をしなきゃいけない』と感じ取り始めていた。つまり、親や学校の先生の言うことを聞いて、それなりに就職して、という昭和な生き方を変えなきゃいけないと。そこに出てきたのが、新しいスタイルで生きる“ギャル”で、少女たちから共感を得たというわけです」
平成から令和に変わったいまも、社会は相変わらず閉塞感に覆われている。
「令和という新しい時代になったが、画期的に何かが変わるはずもなく、コロナ禍でますます出口が見えない状況になってしまった。ギャルっていつでも前向きで自由なイメージじゃないですか。『元カレが少年院に行った』(みちょぱ)とか、一般的にはマイナスに受け止められることを普通に言っちゃう。自分の人生の出来事として受け入れている。そういった元気な部分が、いまでも支持されている理由のひとつじゃないでしょうか」
“イマドキの若いコ”の彼女たちが、幅広い年代から愛されている。
「メイクやファッションは、上の年代からは敬遠されそうですよね。ただギャルには、“家族や地元を大切にする”という保守的な部分もあると思います。にこるん、みちょぱ、ゆきぽよたちの、母親との仲の良さは、しばしばテレビでも紹介されますよね」
ギャル特有の自由な部分に、保守的な部分を併せ持ったことで、令和のギャルタレントはいままでのギャルタレントよりバージョンアップしている。
「にこるんやみちょぱって、仕切りもできるんです。コメントもうまいですし、場の空気を読んで絶妙にコントロールしてますよね。そういった活躍もあり、ギャルタレントが、脱イロモノとして、定着していった。異端だったものが、メインストリームになったんです」
プロフィール
おおたしょういち 1960年生まれ 富山県出身 社会学者・文筆家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本の関係が研究および著述のメインテーマ。それを踏まえ、現在はテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、ネット動画などメディアと文化に関わる諸事象について執筆活動を続けている。