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「動く実物大ガンダム」を造った男たち…秘密は内臓モーター30個の同時制御

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.12.19 06:00 最終更新日:2020.12.19 06:00

 

「動く実物大ガンダム」を造った男たち…秘密は内臓モーター30個の同時制御

“動くガンダム”を造った男たち(写真左から吉崎氏、石井氏、川原氏、関氏(C)創通・サンライズ

 

 前出の川原氏も、この「動くためのデザイン」をこう語る。

 

「動かせること、ガンダムらしいアクションができることが目標で、『2本足で自立して歩くこと』は目指していませんでした。そこで、背中をバーで支えるデザインとなった。これで本体の安全性が担保され、自由な動きができるようになりました」

 

 ボディのバランスも、動かすためにデザイン変更されている部分がある。

 

「膝のホイール型のパーツの位置が、アニメやプラモデル、お台場に立っていたいちばん最初の実物大ガンダム立像と比較して、今回のRXー78F00では、かなり低い位置にあります。これは、股関節と膝、足首の距離を1対1とするためです。脚を実際に曲げるためには、これが最も合理的なデザインなんです」(川原氏)

 

 また、ボディを軽くするためにも、「デザイン上の工夫が必要だった」と川原氏。

 

「腕を少しでも軽くするために、前腕にも、えぐるように段差を入れました。手首もお台場のガンダムより10%小さくなっています。モーターがあるので、重量を抑えるために、若干小さくしているんです」(同前)

 

 同時に動く30個ものモーターをフレームに内蔵し、FRP製の外装に包まれた“動くガンダム”。この機体の動作を考えたのが、システムディレクターの吉崎航氏だ。

 

 吉崎氏は、日本のロボット研究の第一人者。ロボット制御ソフトウエア「V-Sido OS」の開発者で、これまでも四輪走行する巨大ロボット「クラタス」などの開発に携わってきた。ガンダム公式YouTubeチャンネル『ガンダムチャンネル』でも、「ガンプラを実際に動かす」動画などを公開している。

 

「これまでも私は、ロボット開発に従事してきました。今回のプロジェクトでは、ガンダムの動きを考え、モーションCGを制作し、実際に動かすための回路のシステム構成を担当しました」

 

 エキスパートたちが、クリエイトしたガンダム。各部品を実際に建造したのが、制作管理担当の関忠三氏。関氏は現在お台場に立つユニコーンガンダム立像でも、建造を担当した。

 

「外側の装甲にあたるFRPと、骨格になるフレームがあるのですが、組み立てではそれを現場で実際に繋げていく必要がありました。3D図面を見ながら、最適の方法を考えて設計業務をしていきました。実際の組み立ては、クレーンを使用して3カ月かかりましたね。

 

 いちばん大変だったのは、建造時のバランス調整です。フレームに動かすためのモーターがついているので、組み立て時に重量を検討しつつ建造する必要があり、難しかったですね」

 

 こうして完成した、横浜の“動くガンダム”。ロボットの未来を、吉崎氏はこう語る。

 

「動かそうと思うと、じつは4mくらいまでが現実的で、今回の18mのガンダムは、非常に難易度の高いプロジェクトでした。今回のガンダムを経て、『10年以内には、複雑な形状の大きなロボットが、街中に溢れているという時代が来る』と確信しています」

 

 宮河氏は、“動くガンダム” について、こう断言する。

 

「技術者は、18mの物を動かそうとは、絶対に考えません。それは、必要がないからです。自分たちのようなエンタメの人間が、役に立たないもの=“動くガンダム”を考え、技術者がそれに応えようと技術を進歩させ、実現させる。これは、すごい化学反応で、エンタメ的な思考が技術を発展させるのだと、確信しましたね」

 

 一般公開される“動くガンダム”は、稼働シーンを見るだけではなく、格納されたガンダムを、地上18m以上の高さのガンダムドックタワーのデッキ上から、目の前で見ることもできる。宮河氏は「ぜひ、肉眼で見てほしい」と強調した。

 

「ガンダムの動きだけでなく、デッキ格納時の存在感や空気感も含め、実際に会場で堪能してほしいですね」

 

 生誕40周年に実現した動く実物大ガンダム。宮河氏は今後の『ガンダム』というコンテンツのあり方にも、「今回の“動くガンダム”が影響を与える」と予言する。

 

「“動くガンダム”が現実となったことで、今後は、『ガンダム』というコンテンツ自体が、より現実に近くなってくると思います。とくに関節の可動部分は、アニメの作画表現やプラモデルのデザインにも、大きな影響を与えるのではないでしょうか。

 

 今回、“動くガンダム”を造ったことで、『実際のロボットの関節は、こういうデザインでないと動かない』など、初めてわかったこともたくさんありますから」

 

【GUNDAM FACTORY YOKOHAMA】
・開催日程/12月19日~2022年3月31日
・営業時間/10:00-21:00
※入場の際は有料チケットが必要です。詳しくは公式ウェブサイトにて

 

(C)創通・サンライズ

 

(週刊FLASH 2020年12月29日号)

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