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マヂカルラブリー優勝…正統から外れた漫才が見せた「M-1」新潮流
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.12.21 22:37 最終更新日:2020.12.21 22:40
漫才日本一を決める『M-1グランプリ2020』決勝が、12月20日、ABCテレビ・テレビ朝日系で生放送され、2017年以来2回目の決勝に挑んだマヂカルラブリーが、前回の決勝最下位の雪辱を果たしてM-1チャンピオンの座を手に入れた。
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昨年は、無名だったミルクボーイが史上最高得点で優勝。審査員の松本人志がエンディングで「過去最高といってもいいのかもしれない」と称えたほどの熱戦で、以前から知名度のあった準優勝のかまいたちはもちろん、3位のぺこぱなど多くの芸人が世に出るきっかけとなり、「神回」と呼ばれた。
SmartFLASHでは毎年、決勝のスタジオ現場レポートを届けてきたが、今年はコロナ感染拡大対策のためにスタジオ取材が全面NG。記者陣は全員、テレビ朝日局内の大モニターで決勝の模様を見守ることとなった。
例年はステージ前とその奥のひな壇状の客席で数百人が観覧するが、今年の客席はステージ前のみ。それも間隔をあけての設置だったため、観客数はかなり絞られた。芸人にとって大事なファクターである「目の前の観客を笑わせること」を保つため、ギリギリの策だった。
また、人数削減のひとつとして、有名人ゲストもなし。芸人の控え所もスタジオ外で、くじで引かれて初めてスタジオに入るという徹底ぶりだ。
決勝数時間前、ファイナリストの中で目立ったのは「バリ健康なんやけど!嬉しっ!!」(ニューヨーク・屋敷のツイート)といった、無事にこの日を迎えられたことを喜ぶ声。
コロナに感染すれば、自分たちがこの1年かけてきた成果を見せられないだけでなく、大会自体の色合いも変えてしまう。決勝に挑む思いとともに、そのプレッシャーも少なからず抱えた半月間だっただろう。
18時34分に放送がスタート。菅田将暉が自身のラジオ番組で「M-1のVTRは、この世で一番かっこいい」と大絶賛するなど、毎年話題になるVTRが流れる。コロナ禍のなかでおこなわれた過酷な予選も垣間見せるドキュメント性の高いVTRを経て、いよいよネタが始まる。
例年はゲストが引いていた、ネタ順をその場で決める「笑御籤(えみくじ)」は、今年はMCを務める今田耕司と上戸彩がその役目を担う。今田が引いた1組目の籤を渡された上戸は、驚きの表情を見せた。なぜなら1組目から「敗者復活組」だったからだ。
敗者復活1位でネタを披露したのは、昨年はストレートで決勝に出場したインディアンス。「(屋外の敗者復活戦会場から)走ってきて、あれだけできませんて。感動した!」(上沼恵美子)と称えられた。
続く2組目は東京ホテイソン。今田が「新しいタイプの漫才」と評したそのネタは、高評価を得つつも点数は伸びなかった。
3組目はニューヨーク。初の決勝進出であった昨年、松本人志に「(笑いながらツッコむ)ツッコミの形が好きじゃない」と言われたことを逆手に取って、ネタ後に真顔を貫く屋敷。しかし松本に「ちょっと腹立つけど面白かった」と講評され、「1年越しのリベンジー!!」と快哉をあげた。
4組目の見取り図は、今大会唯一の3年連続決勝進出。貫禄さえ見えるネタ運びで、高得点を収めた。
続く5組目はおいでやすこが。ピン芸人としてそれぞれR-1ぐらんぷり決勝進出経験を持つ実力派が組んだユニットで、「叫んでいるけどうるさくない。衝撃を受けた」(立川志らく)と審査員も絶賛。この時点での1位に躍り出た。
6組目はマヂカルラブリー。初決勝進出となった2017年、審査員の上沼恵美子に「好みじゃない」「なんで決勝に上がってこれたの?」と酷評され、決勝最下位に沈んだ。それをバネに、また決勝に返り咲く決意を「えみちゃん、待っててねー!」と叫ぶネタにしてここまで来た。そして今年のネタを終えた後、上沼の一言は「あんたらアホやろ?」という最大限の賛辞。こちらも高得点をたたき出した。
7組目は2年連続決勝進出のオズワルド。「話芸が抜群に上手い」(ナイツ・塙宜之)と評されながらも、上位に食い込むことはできず。続く8組目のアキナは、出番順にも泣き、物足りない結果に。9組目の錦鯉は、インパクトは残したものの、惜しくも4位。ラスト10組目のウエストランドは、松本に「刺さる言葉がよかった」と評されながらも、点数は伸びなかった。
最終決戦に残ったのは、点数上からおいでやすこが、マヂカルラブリー、見取り図の3組。その審査方法は、ここまでのファーストラウンドとは異なり、審査員7人が一番面白かったと思う芸人1組に票を投じる。
最終得票結果は見取り図2票、おいでやすこが2票で、マヂカルラブリー3票。最終決戦は1組が断トツか、2組の接戦であることが多く、ここまで拮抗するのは初めて。
そして、3年前の決勝最下位からの雪辱を誓ったマヂカルラブリーが、悲願の優勝を果たした。
昨年が「神回」と称された要因のひとつに、マイクの前でしゃべりで笑わせるという、大多数の視聴者が「漫才」でイメージする、いわゆる王道が多かったこともあげられる。
しかし、今年はボケの野田クリスタルが動きまくり、ツッコミの村上がマイクの前で野田を諫め続けるという「“動”の漫才」を見せたマヂカルラブリーが優勝。
準優勝も歌ネタで勝負したおいでやすこがと、世間のイメージする「正統派の漫才」とはほど遠いコンビが好成績を収める結果となった。