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名曲散歩/郷ひろみ『お嫁サンバ』 拒絶した歌が大ヒット
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.12.27 16:00 最終更新日:2020.12.27 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは郷ひろみの『お嫁サンバ』。耳に残るフレーズとノリノリのメロディー、結婚披露宴の定番!
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マスター:1981年のリリースで、『ザ・ベストテン』では最高3位をマークした。ただ、この楽曲を受け取ったとき、郷ひろみは拒絶したそうだよ。
お客さん:なんでまた?
マスター:最初に聞かされたのがメロディーで、さあ、どんな歌詞がくるかと期待していたところに届いたのが「1・2・3バ 2・2・3バ」だった。「それはないでしょ~!!」とずっこけたそうだよ。
お客さん:当時はキワモノに感じたのかもしれないね。
マスター:プロデューサーの酒井政利氏に「これはないでしょう! 意味がわからない!」と文句を言ったら、「この曲を明るく歌えるのは、あなたしかいない。これはのちのち歌い継がれていく歌になります」と説得されて、しぶしぶレコーディングしたという。
お客さん:郷ひろみを、そこまで拒絶させたこの詞を書いたのは……。
マスター:『青い珊瑚礁』(松田聖子)や『モニカ』(吉川晃司)などを手がけたヒットメイカーの三浦徳子(ヨシコ)ね。あるとき、酒井氏から『お嫁サンバ』ってどう思う? と聞かれて「すごくいい!」と即答し、そのタイトルに合う詞を書いたんだって。
お客さん:これ以上ないくらい、タイトルと歌詞がピッタリだもんね。
マスター:三浦氏は「意味よりも音を重視」するタイプ。そして悩まないのが信条。『お嫁サンバ』の歌詞はものの1時間で完成したそうだ。
お客さん:確かに意味はない! とはいえ、何よりもすごいのは、酒井さんの言うとおり40年近くたった今も、ちゃんと歌い継がれていることだね。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:NHKBSプレミアム『今聞きたい郷ひろみ 究極のベストソング』(2020年9月19日)/酒井政利『誰も書かなかった昭和スターの素顔』(宝島社)/NHKラジオ『ラジオ深夜便』(2019年12月29日)