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名曲散歩/畑中葉子『後から前から』空回りの2年を経て劇的な転身

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.17 16:00 最終更新日:2021.01.17 16:00

名曲散歩/畑中葉子『後から前から』空回りの2年を経て劇的な転身

 

 東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。

 

お客さん:お、このイントロは畑中葉子の『後から前から』。意味深な歌詞にドキドキしたよなあ。

 

 

マスター:畑中葉子は1978年の『カナダからの手紙』で、平尾昌晃とのデュエットでデビュー。そして1980年には『後から前から』でセクシー歌手へ劇的な転身を果たした。

 

お客さん:その2年間に、何があったんだろう?

 

マスター:一番大きかったのは、デュエットではなく、本当はソロデビューしたかったことだという。実は『カナダからの手紙』のあと、『エーゲ海の旅』『サンフランシスコ行き』『ヨーロッパでさよなら』と1年で4曲、平尾昌晃とデュエット曲を出し続けた。

 

お客さん:『カナダからの手紙』以降、ヒットしてないね。

 

マスター:そして翌年、『ロミオ&ジュリエット'79』という曲で念願のソロデビューを果たすもヒットせず、周囲の風も急に冷たくなった。また、この年、結婚したんだけど、数カ月後に破局するなど私生活もおかしくなる。

 

お客さん:空回りしている感じだね。

 

マスター:その頃、『週刊プレイボーイ』からオファーがあり、悩んだ末にセミヌードを披露。その後、日活ロマンポルノ『愛の白昼夢』に出演し、ついにヌードになった。脱ぐときにはやっぱり泣いたそうだ。

 

お客さん:そりゃそうだろうね。

 

マスター:ただ、泣きながらグズグズしていたとき、一人の救世主が現れた。それが共演者の風祭ゆき。

 

お客さん:日活ロマンポルノの後期を支えたセクシー女優だ!

 

マスター:そう、彼女は一切ためらうことなく、ぱっと脱ぎ、さっと絡みのシーンを撮影して「じゃ、おつかれ!」と去っていった。そこにプロの女優魂を見たという。

 

お客さん:確かにかっこいい!

 

マスター:畑中葉子が『後から前から』をリリースしたのはこの後のこと。そして、同名タイトルのポルノ映画『後から前から』にも主演し、公開された。

 

お客さん:覚悟を決めた女性は強いね!

 

マスター:その後、畑中葉子は31歳で会社員と結婚し、家庭に入り、子育てがひと段落した2010年に仕事を再開。61歳になった今も芸能界で元気に頑張っている。

 

お客さん:清純派からセクシー路線への転身が劇的すぎたからこそ、いまだに僕らの記憶に刻み込まれているんだよね。

 

 おっ、次の曲は……。

 

文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中

 

参考:『昭和40年男Vol.41』(クレタパブリッシング)/朝日新聞(2017年6月17日)

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