そして、44歳で『ちびまる子ちゃん』のナレーションを務めることとなる。
「『ちびまる子』を始めてからは、ナレーション一本でいこうと仕事を絞ったんです。『ちびまる子』が大ヒットしたおかげで仕事も増えました。
ナレーションがツッコミを入れるっていうのは、それまで、ほとんどなかったと思うんです。それがおもしろかったんでしょうね。『後半へつづく』は、アドリブで入れたらウケちゃった(笑)。前半の終了直前、1秒半くらいの間にポロッと言ったら、原作者のさくらももこさんも喜んでくれてね」
現場はたいへん楽しく、あっという間に31年の月日が過ぎていったという。
「子供が3人いるんです。『ちびまる子』が始まったとき、いちばん上が高校生、下は中学生だったのが、今は孫6人(笑)。いちばん上の孫なんて、もう25歳ですよ」
キートンは、静岡県伊東市に居を構えて20年になる。
「暖かいところが好きで、海の近くに住みたいなって。40歳前までバイトしなければいけない状態だったのに、人生ってわかんないよねえ(笑)。やめなくてよかった。
でもね、10年くらい前から、“やめどき” は考えていたんです。上京したのが、前の東京五輪の1964年ごろ。今回、コロナで延期になっちゃったけど、『東京五輪がまたあるから、そこでやめよう』と。
それとね、まる子の祖父のさくら友蔵は、76歳なんですよ、設定上。2021年で僕も76歳だから、ここがゴールかなと。わがまま言って卒業を決めさせてもらったんですよ」
もちろん周囲は引き止めたというが、キートンは新たな生活に思いを馳せている。
「4月からは、野菜作りを本格的にやります。畑がお友達だね、これからは(笑)。先輩たちも、80歳過ぎくらいで逝ってますからね。
僕のこと “シュンちゃん” って呼ぶ先輩は、野沢雅子さんくらいしかいなくなったなあ。それ考えると、人生の後片づけもしないといけない。弱ってからじゃできない、ボケてからじゃ無理ですから」
3月28日放送分の『ちびまる子ちゃん』で、キートンは番組を卒業する。
「31年やり続けたことが終わるっていうのは、なかなか世の中にないですからね、幸せですよ。いろんな人、作品に出会ったから続けてこられたんだなあ。
あとは第三の人生を楽しんで、いかに美しく死ぬか(笑)。うまい日本酒飲んで、そのまま寝ちゃって、あれ、死んでるなあくらいが理想ですよ」
(週刊FLASH 2021年3月30・4月6日合併号)