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北川景子『リコカツ』ハッピーエンドの“ルート”が限られていたからこその“正解”

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.06.19 19:00 最終更新日:2021.06.19 19:07

北川景子『リコカツ』ハッピーエンドの“ルート”が限られていたからこその“正解”

 

 サプライズはなかった。でも、それでいいと思った。6月18日(金)に最終回を迎えた『リコカツ』(TBS系)のことだ。

 

 北川景子演じる出版社勤務の編集者・水口咲と、永山瑛太演じる堅物で家訓を重んじる航空自衛隊員・緒原紘一の “交際ゼロ日婚” 夫婦。だが、結婚早々に相性が合わないことが発覚し、“離婚に向けた活動” を続けていた2人は、6話で離婚が成立した。

 

 

 そんな咲と紘一、最終回1話前の第9話のラストでお互いに想いを伝えて復縁したが、咲に3年間のパリ研修話が持ち上がった。そのため、もう一度結婚して幸せを掴むのか否か――という最終回だった。

 

■衝撃展開もサプライズもなしで予想どおりのラスト

 

 結論を言うと、よくも悪くもサプライズはなく、安定のハッピーエンドだった。

 

 紘一は咲のために自衛隊をやめ、一緒にパリについて行く決意をしたが、結局、紘一は自衛官を続け、咲はパリに行くことに。3年間の遠距離恋愛の末、咲がパリから帰国し、笑顔で再会してエンディング。

 

 さて、難癖をつけるわけではないが、この展開・結末は読めていた。

 

 それは筆者の勘が鋭いとかそういうことではなく、ご時世柄、そうなるしか “ルート” は残されていなかった。

 

 恋愛ドラマの金字塔『東京ラブストーリー』(1991年/フジテレビ系)のように、2人が破局して結末を迎える恋愛ドラマもあるため、もちろん『リコカツ』でもその可能性がゼロではなかった。

 

 けれど、前述したように、本作では第6話でもうすでに、“離婚” という恋愛ドラマにおける最大の破局イベントを使ってしまっている。

 

 仮に最終話で再び2人の別れを描くとしても、第6話のインパクトは越えられないだろう。となると、脚本家や制作側の立場で考えてみれば、バッドエンドのルートは消える。

 

 とは言え、ハッピーエンドへのルートもいろいろあったはずだ。

 

 たとえば、紘一が自衛官をやめてパリについていくというルート、咲がパリ行きをあきらめるというルート。

 

 実際、紘一は一度辞表を提出してしまったし、咲も一度はパリへ行かないと口にしていた。

 

 だが、男女平等の理念が浸透し、女性の社会進出も進み、価値観の多様性が重んじられる昨今、どちらかが仕事や夢をあきらめるルートは、ありえないのだ。

 

“ありえない” は言い過ぎかもしれないが、もしそのどちらかのルートでエンディングを迎えていたら、SNSなどで大炎上しかねない。

 

 1990年代頃までは、どちらかの自己犠牲によって2人が一緒にいられる結末を、美談として受け止められたかもしれないが、今は2021年だ。もうそれは、ハッピーエンドとして成立しない。

 

 咲がパリへ発つ前、2人は「緒原紘一 水口咲 ルール」なるものを取り決め、そこには「一、嘘はつかないこと(サプライズ可)」というルールも。

 

 3年後、咲はパリからの帰国日に、「帰れなくなった」と連絡をする。実はそれは嘘で、咲はすでに紘一が待つ部屋の玄関前まで帰ってきていて、サプライズで再会したのである。

 

 そんな咲のサプライズは多くの視聴者からすればサプライズでもなんでもなく、予想どおりのハッピーエンドだったろう。でも、それでいいのだ。

 

 とかく衝撃的なラストや過剰に盛り上げたエンディングで視聴率を稼いでいた1990年代頃とは違い、いまのドラマはそうやって強引に視聴者の興味を惹くような演出は求められていないように感じるからだ。

 

 実際、『リコカツ』全話におけるクライマックスは第9話(最終回1話前)で、離婚した2人が復縁するシーンだったのではないか。でも、それでいいのだ。

 

 物語を丁寧かつ誠実に作ろうとすれば、必ずしも最終回に最高潮の盛り上がりを持ってこれるとは限らない。だから『リコカツ』の最終回は予定調和だったし、それほど盛り上がりもしなかったが、だからこそ、これが “正解” だったのだと思うのだ。

 

●堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

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