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映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』杉咲花の起用理由は「前歯の大きさ」

エンタメ・アイドル 投稿日:2021.07.22 11:00FLASH編集部

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』杉咲花の起用理由は「前歯の大きさ」

(C)2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

 

 地方都市のショッピングモールを舞台に、高校生の男女のひと夏の青春模様を描いたアニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』が7月22日より劇場公開中。

 

 同作は、歌舞伎役者・市川染五郎と朝ドラ女優・杉咲花のふたりを主演声優に迎え、俳句、シティ・ポップなどを全編に散りばめた王道青春映画だ。

 

 

 本作の監督を務めたイシグロキョウヘイ氏に話を訊いた。

 

――本作はイシグロ監督の劇場デビュー作となります。どのような経緯で監督することになったのですか。

 

「2014年に僕が監督したテレビアニメ『四月は君の嘘』を観たプロデューサーが声を掛けてくださったんです。制作のフライングドッグが音楽制作会社なので、当初から『音楽モノのオリジナル作品』という企画でした。自分の得意とするリアルな現代劇でオリジナルの青春映画を作りたかったのです」

 

――音楽モノという要素をどのように本編に活かされたのでしょうか。

 

「アニメで音楽モノというと、バンドやアイドルがわかりやすいと思うのですが、自分の中でその線はありませんでした。劇中で曲がずっと流れている音楽モノというよりは、音楽の存在そのもの自体を大切に扱う映画にしたかったんです。

 

 本作は、テーマからガジェットまで、音楽に由来するもので全編構成されています。幻のレコードを巡る物語で、チェリーやスマイルといったキャラクター名も曲名ですし、ビジュアルの色使いは1980年代のシティポップのジャケット調です」

 

――懐かしい題材を扱いつつ、物語は現代を舞台にした王道の青春映画。そこで監督が描きたかったものは?

 

「恋愛でも、友人関係でもいいのですが、現代を舞台に彼らが自己を確立する物語を作りたかったんです。思春期の若者たちが、自己を確立していく過程を描くのが好きなんです」

 

――鈴木英人や永井博が描いたレコードジャケットのような色使いと線のビジュアルも非常に印象的でした。

 

「1980年代生まれの自分には、レコードジャケットなどで親しんだ馴染み深いビジュアルです。今の世代にこのビジュアルがどう受け入れられるのかも楽しみです。

 

 僕はキャラクターも含め、アニメーションでは、ディテールではなくシルエットを重視しています。テクノロジーの進歩でいくらでも画は細かく書き込めるので、ハイディテールな作画は誰でも可能です。でも、それはアニメの本質ではないと思っています。

 

 ディテールではなく、シルエットこそがアニメの本質だと思います。そこでパッと見てわかる。シティポップなどのレコードジャケットのような画に行きついたのです」

 

――映画タイトルが俳句で、主人公は俳句を詠む高校生という設定です。

 

「いとうせいこうさんがある書籍で『俳句は、日本のヒップホップの元祖。オールドスクール的な存在として扱える』と発言されていて、僕の中でも俳句は極めて音楽的なものだと思い、作品の中に取り入れています」

 

――地方都市のショッピングモールという、極めて現代的かつ限定的な場所が作品の舞台です。

 

「かつての若者のたまり場であった商店街やゲームセンターが今は消えました。それに該当するのが現代のショッピングモールだと捉え、青春群像劇の舞台として成立すると考えたんです」

 

――本作はイシグロ監督の奥様である愛敬由紀子氏がキャラクターデザインを担当されています。夫婦ゆえの制作上のメリットやエピソードなどがあったら、教えてください。

 

「互いの仕事に理解があるので、修正の指示などに関しても、より突っ込んでフランクにできる部分があると思います。夫婦間の作業にはメリットばかり感じていますね」

 

――主人公のチェリーを歌舞伎役者の市川染五郎が演じています。

 

「チェリーは作中でも『声がかわいい』と評される男の子。染五郎くんの歌舞伎の舞台を観ると、チェリーのイメージにぴったりでした。彼に手紙を書いて『チェリーを演じてほしい』と熱意を伝え演じていただきました。

 

 染五郎くんは歌舞伎以外のお仕事は初めてで、最初はマイクワークや声の出し方で慣れていない部分もありましたが、芝居の筋力がある方なので、一度コツをつかむと上達が早かったですね」

 

――ヒロインは朝ドラ女優の杉咲花が演じてます。

 

「杉咲さんはめちゃくちゃ上手かったです。テクニックはもちろんですが、声がいいんですよ。あそこまで滑舌もよく、キーもコントロールしながらキャラクターを作れる人は、正直な話、声優さんを含めて、なかなかいないと思います。

 

 あまりに上手すぎて、杉咲さんが演じているとクレジットしなければ、観客は誰も気が付かないかもしれません」

 

――どのような経緯で杉咲さんを起用されたのでしょうか。

 

「スマイルは出っ歯で歯の矯正をしているというキャラクターなのですが、杉咲さんも少し前歯が大きいんです。そこからイメージしていました。

 

 また、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』の杉咲さんの演技を見て、実写映画ですが声の芝居が上手と思っていたんです。彼女にも出演依頼の手紙を書きました」

 

――本作に限らず、昨今は主要キャストを声優以外の方が担当する作品が増えています。

 

「演出的には、求めている声がたまたま誰かという部分だけで、声優か俳優かはまったく関係ありません。その声が、描きたいキャラクターに合っているという部分だけが大事なんです。

 

 もちろん配給的には俳優を起用することで、PR活動をより広くおこなえる部分が今はあるかもしれません。ただ、個人的には、これからアニメ映画でのキャストの起用に関して、時代が変わってくる可能性があると思っています」

 

――最後に本作に関して、ひと言お願いします。

 

「いろいろとストレスが多く、歯車も上手く噛み合わない世の中ですが、この映画を観終わったときに、前向きでさわやかな気持ちになっていただけることだけは保証します。『オリジナルで希望に満ちた音楽映画を作る』ということは、ずっと意識していました。

 

 また『自分のコンプレックスは、他の人から見たらチャームポイントなのかもしれない』という感覚を、この映画を観たあとに得ていただけたら嬉しいですね」

 

いしぐろきょうへい
神奈川県出身。アニメ制作会社・サンライズに入社後、2009年『FAIRY TAIL』で演出家デビュー。フリーとなり、2014年『四月は君の嘘』で初監督を務める。『サイダーのように言葉が湧き上がる』で劇場監督デビュー

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