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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『夜叉海峡』のころは、いつも藤あや子・伍代夏子とガールズトーク

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.09.04 06:00 最終更新日:2021.09.04 06:00

【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『夜叉海峡』のころは、いつも藤あや子・伍代夏子とガールズトーク

左から藤あや子、伍代夏子、坂本冬美

 

 人知れず、こっそりと歌の世界から身を引こうと決めたXデーまであと2年に迫った2000年。振り返ると、この時期がいちばん中途半端だったような気がします。

 

 この一年をなんとか乗り切っても、まだもう一年残っていて。ゴールを設定したものの、その肝心のゴールがまるで見えないことに哀しみがこぼれ落ち、今にも心が哭き出しそうになっていました。

 

 

 そんな毎日ですから、新曲にも気持ちがついていきません。初めて荒木とよひさ先生が詞を書いてくださったこの『夜叉海峡』(2000年発売)も、当時の記憶はおぼろげで。

 

 東京・神楽坂でヒット祈願をしたのですが、心ここにあらずで……荒木先生、すみません。

 

 年齢的にも、キャリア的にも、今のわたしにピッタリのように思いますので、当時のわたしには、ちょっと早かったのかもしれませんね。

 

 そんな不安定なわたしを見かねたのでしょう。ミレニアムで沸いたこの年、親友の夏ちゃん(伍代夏子)、あやちゃん(藤あや子)と一緒のお仕事をたくさんいただきました。

 

 偶然が重なっただけ? いいえ、きっと、なんとかしてもう一度、わたしにやる気を取り戻させようという社長の深慮遠謀の為せる業だと思います。すみません! 全部、無駄に終わっちゃいましたけどね(苦笑)。

 

■私たちには歌があるでしょう?

 

 さぁ、ここからは、その夏ちゃんとあやちゃんのお話です。

 

――2人とは、なんでも話せる仲よし3人組?

 

 はい。わたしはそう思っています。いや、思っていました。あるときまでは……。

 

 あっ、誤解しないでくださいね。もちろん今だって、3人でご飯を食べるし、遊びにも行きます。おバカな話で盛り上がれるし、チクチクいじったり、いじられたりもします。

 

 でも、だけど、しかし――。たったひとつだけ、わたしは2人に文句があります。これだけは、声を大にして言わせていただきます。

 

 あれは……わたしが、結婚願望に燃えていた20代後半のことでした。2人に好きな人ができたと報告すると、夏ちゃんが目を吊り上げて言いました。「あなた、何を言ってるの?」と。

 

 すかさず、あやちゃんが同調します。「恋とか結婚なんて、いっときのものよ」と。最後は、きれいなハーモニーです。
「私たちには歌があるでしょう?」

 

 ……。

 

 2人はわたしより6つも……もう一度言いますね。6つもお姐さんです。ふふっ。「そうでしょう?」と、ズンズン迫ってくる2人のお顔には、ミョーな迫力があります。

 

 そ、そうかもしれない……。そうだよね、わたしたちには、歌があるもんね。そこには、納得してしまったわたしがいました。なのに。なぜ? どうして? WHY?

 

 それからわずか数年後に、夏ちゃんは杉さま(杉良太郎)と結婚。あやちゃんからも、「結婚しようと思うんだ」という報告がありました。

 

 まったく、どの口がそれを言うんでしょう。「私たちには歌があるでしょう?」と言ったのは、どこの誰なの!?

 

「疲れて家に帰ってきたときに、あの人が待ってくれていると思うと、幸せよ」

「そうそう、やっぱり結婚しなきゃ」

「結婚はいいわよぉ〜」

 

 耳元で囁く2人の顔は、もう幸せで緩みっぱなしです。あぁ、そうですか。幸せなのね。よかったわねぇ〜。もう、こうなったらわたしも意地です。絶対に、結婚なんかしてやるもんか!!

 

さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。最新シングル『ブッダのように私は死んだ』を含む、35周年記念ベスト『坂本冬美35th』が発売中

 

写真・中村功 
構成・工藤晋

 

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