■カップリングの曲は阿久悠先生が作詞
前置きがずいぶん長くなってしまいましたが、『さよなら小町』は、1995年にNHK総合テレビでスタートした『コメディーお江戸でござる』の番組ソングとして作っていただいた曲です。
作曲は、猪俣先生のお弟子さんで、わたしの兄弟子にあたる四方章人先生。詞を書いてくださったのは『夜桜お七』以来、2度めとなる歌人の林あまりさんです。
あまりさんがお作りになる短歌は、エロティシズムの匂いがしていて。それも、ぷんぷんと匂うくらいかなり多めに(笑)。『さよなら小町』は、そこをグッと抑え、小股の切れ上がった、チャキチャキの江戸っ子娘をイメージした詞に仕上がっています。
カップリングの『雨ふり小夜曲』は、作詞が阿久悠先生、作曲が三木たかし先生。2カ月後に発売したアルバム……阿久先生がわたしのために10篇の詞を書いてくださった、その名も『冬美十艶』に入っているなかの一曲です。
阿久先生といえば、誰もが知る大、大、大作詞家。ピンク・レディーの『UFO』『サウスポー』『モンスター』……。沢田研二さんの『勝手にしやがれ』『憎みきれないろくでなし』『時の過ぎゆくままに』。ささきいさおさんの『宇宙戦艦ヤマト』。都はるみ先輩の『北の宿から』。そして、歌手を目指すきっかけとなった石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』も、阿久先生の作詞です。
ヒット曲だけを数えても、わたしの両手、両足の指どころか、スタッフ全員の指の数を足しても、まだ全然足りません。
もっともっと、阿久先生のことをお話ししたいのですが……今回は、ここまで。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。最新シングル『ブッダのように私は死んだ』を含む、35周年記念ベスト『坂本冬美35th』が発売中
写真・中村功
構成・工藤晋
(週刊FLASH 2021年10月19日号)