先週放送された日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』(TBS系)第1話の放送中から、Twitterでは映画『シン・ゴジラ』(2016年)に関するつぶやきが急増。その多くが『日本沈没』への落胆や批判の声だった。
今年の日曜劇場は『天国と地獄~サイコな2人~』(1月期)、『ドラゴン桜(第2シリーズ)』(4月期)、『TOKYO MER ~走る緊急救命室~』(7月期)と全作高視聴率でヒット連発。
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そんな日曜劇場の今年ラストを飾るのが小栗旬主演の『日本沈没』で、その看板枠の名に恥じぬ世帯平均視聴率15.8%、個人全体視聴率9.7%という数字でスタートした。
(※視聴率はビデオリサーチ調べ/関東地区)
これまでにもドラマ化、映画化、アニメ化されてきた小松左京の小説『日本沈没』(1973年)を原作にしつつ、舞台を2023年の東京に変えストーリーを大幅にアレンジした本作。
第1話では、各庁の官僚たちが招集された「日本未来推進会議」に参加する環境省の天海啓示(小栗)が、ネットなどで話題になっていた地震学者・田所雄介(香川照之)の関東沈没説を問題視し、事態収束のために田所と対面。
天海は田所に説の撤回を求めたが、田所の「近い将来、伊豆沖で島が沈没する。その島の沈没は、私が恐れてきた関東沈没の前兆になる」との予言どおり、伊豆沖の日之島が沈んでしまい――というストーリーだった。
■「次回予告」ではなく「今後の展開」を放送した意味
地殻変動により日本が沈没してしまうという未曽有の危機に直面し、国民を守るために奔走する官僚・天海を中心にした群像劇。第1話では官僚らの侃々諤々の会議シーンが多かったため、興行収入80億円超えの大ヒット作『シン・ゴジラ』を連想する視聴者が多かったようだ。
『シン・ゴジラ』は突如日本に襲来した未知なる巨大危険生物・ゴジラに対して、「巨大不明生物特設災害対策本部」を立ち上げ、被害を食い止めるため政府や官僚たちが奮闘する姿を描いていた。
日本沈没と巨大生物襲来。
どちらも現実離れした “大災害” をテーマにしつつ、リアリティを追求した脚本・演出で魅せていく構造で、確かに似ていると感じた。
そして『シン・ゴジラ』を想起した視聴者から批判の声が多かったのも納得できる。というのも、『シン・ゴジラ』は非常にテンポのいいスピーディーな展開で、極上のエンターテインメントに昇華させていたからだ。
対して『日本沈没』は、好意的に解釈すればトンデモ設定に説得力を持たせるように丁寧にじっくり描いていたが、悪く言えばスローな展開でテンポがいいとは思えなかった。
あの難解な物語を2時間できれいに終わらせた『シン・ゴジラ』と比べられては、テンポが悪い劣化版のような印象を持たれてしまっても不思議はない。
とはいえ、1本で完結して高評価を得ている映画と、全10話前後になるドラマの第1話だけを比べるのもナンセンス。最終話を終えた時点でも『シン・ゴジラ』の劣化版と揶揄されてしまうのか、それとも『シン・ゴジラ』を超えたと評されるのか、注目だろう。
ちなみに、第1話のラストに流れたのは次回予告ではなく、約100秒の尺を使って異例の「今後の展開」を放送。混乱しながらバスや船で避難を始める国民や、実際に東京が水没している衝撃のシーンがダイジェスト的に映し出されたのである。おそらく物語中盤か終盤のシーンを放送したのだと思う。
実は本作の撮影は今春に終了していたそうで、最終話まで撮り終わっているからこそできた奇策だろう。見どころとなる東京沈没の映像や壊滅した街並みなどを前倒ししてネタバレするという、とてもチャレンジングな試みだ。
しかし、第1話の最後に何話も先になる見どころを “先出し” したことで、こんな穿った見方ができてしまう。第2話、第3話ぐらいは同じようなスロー展開が続き、日本が沈没していくダイナミックなシーンはまだまだ先のため、制作陣は視聴者が途中離脱してしまうことを危惧している……と。
――次回予告の代わりに「今後の展開」という離れ業で公式ネタバレしたことが、視聴者離れを食い止める英断となっているのだろうか。ストーリーとともに第2話の視聴率にも期待したい。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中