――想像を超えた
テレビなどで、たまに耳にする言葉です。普通に生活しているなかでも、これに近いことは、ままあります。
ところが、これが、
――想像の域を遥かに超えた
となると、めったにお目にかかれるものではありません。わたしの長~い人生のなかでも、両手の指で数えられるほどです。
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そのなかのひとつが、2005年に発売した『ふたりの大漁節/冬美のソーラン節』の発売イベントで起こった怪事件(?)でした。
発端は、プロモーションの打ち合わせです。
「元気で、威勢のいい曲なので、バックにイケメンを並べて、賑やかに盛り上げるというのはどうでしょう?」
爆弾を投げ込んだのは、ウチのSマネージャーです。破裂した弾が周囲を巻き込んで、あっという間に燃え広がります。
「う~~~ん、でも、強烈なインパクトが欲しいから、上半身裸になってもらうというのはどうだろう?」
「だったら、下はフンドシ一丁でしょう」
「それも、白フンじゃなくて赤フン!」
……女性ファンが喜ぶようにとかなんとか、もっともらしい理由をつけていますが、怪しいものです。
――もしかして、ただ、おもしろがっているだけじゃないの?
だいいち、そこまでやる必要がどこにあるんだ!? 抵抗してみたものの多勢に無勢です。
「これで決まりですからね。文句は言わせませんよ」
ものすごい勢いで迫られ、思わず「わかりました」と頷いたのが……悪夢の始まりでした。
■わたしの頭とRGさんの股間が接触!?
「レイザーラモンAHさんが、応援に駆けつけてくれました!」
当日、登場したのは、赤フンチルドレンを引き連れたレイザーラモンRGさん。AHは、赤フンの略です。
センターで、歌詞を間違えないようにと歌うわたし。真後ろには、赤フンのRGさんがノリノリで、相方HGさんの決めポーズ「フォー!」を連発しています。
……このあと、どういう展開になったのかは、説明するまでもありませんよね。
それでも、なんとかイベントは、無事(?)に終了。驚愕のニュースを知ったのは、翌日のことでした。
「やりました!!」
手渡されたのは、某新聞。一面には、赤フン一丁でポーズを決めるRGさんの前で、ご満悦の表情をしたわたしの写真が。記事を読むと「新曲を披露する坂本冬美の頭と、腰を振るRGの股間が何度か接触し……」と書いてあるじゃありませんか。
こ、こ、これは……。寝耳に水。青天の霹靂。オーマイガッ! です。
わたしが新聞の一面に載ったのは「坂本冬美死亡説」と、このときの2度だけ。喜んでいいのか悲しむべきなのか、悩むところです(苦笑)。
でも、ひとつだけ、わたしの名誉のために言っておきます。声を大にして叫びます。皆さんが想像しているようなことは、1mmも起こっていませんから。
えっ!? ムキになるところがかえって怪しい?
もう、誰なの? この新曲イベントを考えたのは。赤フン事件から16年……今さらだけど、あのときの責任はきちんと取ってもらいますからね。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。「情念POPS」をセレクトして制作された最新コンセプトアルバム『Love Emotion』が好評発売中!
写真・中村功
構成・工藤晋