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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『風鈴』イベントで描いた絵は、もう最悪で悲惨で
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.12.18 06:00 最終更新日:2021.12.18 06:00
誰にでも、苦手なものというのはあります。
ニンジン、球技、経費の精算、掃除、スピーチ、人の話をちゃんと聞く……人それぞれですが、できることなら一生、近づかずに暮らせればそれに越したことはないというのが、ひとつや2つ……3つ、4つ……とあるはずです。
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自慢するわけじゃありませんがわたしにも、片手では数え切れないほどあります。そのなかのひとつが――。
「絵を描くこと」
これは駄目です。もう、最悪です。悲惨です。
だいぶん前の話になりますが、クイズ番組でなぜか馬を描くことになって。冷や汗を流しながら描き上げた絵は……もしかして、これは……ワニ!? という謎の生き物でした(苦笑)。
その後、二度と人前で絵は描かないぞと、心に固く誓ったのは言うまでもありません。
ところが、です。2000年に発売した『風鈴』の発売イベントとして、ファンと一緒に風鈴を作ろう! とスタッフは大盛り上がり。
つられてわたしも、風に揺れ、ちりりんと涼しげに鳴る音を聞けば、恋心も揺れちゃう!? うん、それはいいかも、と思ったのが間違いでした。
そう。風鈴には絵づけという難行苦行が待ち受けていたのです。
しまった……気がついたときには、時すでに遅しです。冷や汗がたらり。しくしくと胃が痛みます。
人生最大(ちょっと大袈裟でしたね)ともいえるあの難局をどうやって乗り切ったのか!? 描いたふり? それとも、自力で乗り越えた? そこだけ記憶がすっぽりと抜け落ちているので、真相は……モゴモゴモゴ、闇の中です(笑)。
■さくらななの名前で発表したのは4曲だけ
カップリングの『おとうさんへ』の作詞&作曲は、さくらなな。漢字にすると「桜」と「七」。そうです! 『夜桜お七』から「夜」と「お」を取って平仮名にすれば……あら不思議。さくらななに大変身です。
父を亡くし、ポッカリとあいてしまった心の穴を埋めるように詞を書き、曲を作っていたあのころ……母のために、家族のためだけに作ったのが、この『おとうさんへ』でした。
お父ちゃんって、こんな人だったよね。お父ちゃん、こんなこと言ってたよね……。父を偲んで。ありったけの思いをこめて――。
本当はそんなことしちゃいけないんだろうけど、地元・和歌山のコンサートで、母を前に一度だけ歌わせてもらったことがあります。
「次のシングル『風鈴』は、お母さんを思った曲だから、カップリングにどうかな?」
ディレクターからお話をいただいたとき、わたしが何を思ったのか、よく思い出せませんが、きっと心の整理がついていたんでしょう。「お願いします」と、お返事をしていました。
当時は詞を書き溜め、頭に浮かんだメロディをカセットに録音したりして、何十曲も作りましたが、さくらななの名前で発表したのは4曲だけ……。この『おとうさんへ』が最後です。
きっと、もうこれでやり尽くした……というか、やっぱり、わたしには無理だと諦めがついたんだと思います。もったいない? いえ、いえ、そう言っていただけるだけで十分です。詞を書こうとしても言葉は浮かんでこないし、曲を作ろうとしても音は降ってきません。
わたしは歌うことに専心します。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。桑田佳祐から届けられた『ブッダのように私は死んだ』のリリースによって生まれた「情念POPS」をセレクトして制作された最新コンセプトアルバム『Love Emotion』が好評発売中!
写真・中村功
構成・工藤晋