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『M-1』本日決勝!総合演出に聞く見どころは…「展開読めぬ “グルーブ感” でとんでもない化学反応が」

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.12.19 11:00 最終更新日:2021.12.19 11:00

『M-1』本日決勝!総合演出に聞く見どころは…「展開読めぬ “グルーブ感” でとんでもない化学反応が」

2021年のファイナリスト9組/(c)M-1グランプリ事務局

 

 漫才日本一を決める「M-1グランプリ」の決勝が、本日(12月19日)18:34から生放送で開催される。

 

 昨年、いわゆる王道ではない異色の漫才を見せた「マヂカルラブリー」が優勝したことによって「これは漫才か? 漫才じゃないか?」論争が巻き起こり、それについて後日、審査員の松本人志が「あえて定義を設けて、破ることが漫才だ」と自らの考えを発した。

 

 

 はたして今年のM-1はどう決着がつくのか。そしてテレビ番組として、一大コンテンツとしてのM-1グランプリは何を見せてくれるのか。総合演出として全体の演出をつかさどる、朝日放送(ABCテレビ)の白石和也氏に、その思いや見どころを聞いた。

 

――まずは、白石さんのM-1グランプリへの携わり方を教えてください。

 

 昨年から総合演出を担当しています。2008年に入社し、朝日放送に入ったからにはM-1を担当したいという思いはずっと抱いていましたが、縁がないまま一度M-1が終了してしまって、初めて携われたのは復活2年目の2016年です。

 

 関西出身ですが、大阪ではなく兵庫県姫路市育ちなので、劇場が近くにある環境ではなく、テレビで漫才や新喜劇を楽しむ程度でした。それが2001年のM-1初回、中川家さんの漫才を見て「こんな人がいるんや!」「こんなに真剣に漫才をする、すごい番組があるんや!」と衝撃を受けて、そこから毎年見ていました。『ダウンタウンのごっつええ感じ』などで、いわゆるテレビの裏側が映っているのをよく見ていて「そっち側に行きたい!」と思ってテレビ局に入社しましたし、M-1でも初代総合演出の辻(史彦)の姿が映ったのを鮮明に覚えています。それを自分がいまやっていることが信じられないですし、光栄です。

 

 2018~19年はフロアディレクターとして、司会の今田耕司さん、上戸彩さんの前でカンペ出しをしていました。今田さんは、これが初の大舞台というような芸人さんがどんなコメントをしようと全部拾ってくれますし、審査員のみなさんが厳しいコメントをしても、それを受け止めて中和してくれるすごい司会者。その横で輝く上戸さんの笑顔。あの笑顔だけですべてが正解になりますよね。

 

 2019年には、2番手に登場したかまいたちさんのネタ終わりで感動してしまい、泣きながらCM中の打ち合わせをするという失態を起こしました(笑)。M-1は2018年で終わりと宣言していたお2人が、それを撤回してラストイヤーに挑んでくれて、2番手という難しい出順ながら気迫のこもったすごい漫才で大きな笑いが起きて。面白いことに感動して涙したのは、あれが初めてかもしれません。今田さんはそんな事態でも「M-1スタッフは泣きながら仕事する(笑)」とうまく笑いにしてくれて、すごいな今田さんと改めて思いました。

 

 僕自身が(2016年に)初めて担当したのは、冒頭に流れるVTR制作でした。よく話題にしていただく、VTRのシメの「俺たちが一番面白い」とナレーションが入る部分。最後の「面白い」のところをどの芸人さんにするかは毎年みんなで悩みます。ネームバリューやその年の注目度ももちろんありますが、どういう表情かが最重要。「一番いい顔をしている人を選ぼう」が判断基準なので、まさに「俺たちが一番面白い」と思っている顔をしている人を選びます。

 

 M-1は過去20年の膨大なテープや映像データがあるので、それを保管するためだけの倉庫を借りているんです。僕が担当した2016年の前年はトレンディエンジェルさんが王者だったので、過去にトレンディエンジェルさんが映っていた映像をその膨大なテープの中からみんなで掘り出しました。ほんとに無名時代の映像が残っている、というのもM-1のすごさ。まだ誰にも知られていないときにインタビューを撮っていたりするので。今年のマヂカルラブリーさんのVTRもぜひ楽しみにしていただきたいです。

 

――確かに冒頭のVTRはM-1の見どころのひとつです。VTRを流すのは個々のネタの前ではなく、番組冒頭に集中していると伺いました。

 

 ネタの前にはその人たちの声は聴かせない。「はいどーも」がそれぞれの第一声であるべき、というのがM-1に代々伝わる考えです。決勝進出発表のVTRなどで「おぉ~!」とか喜ぶ叫び声はありますが、しゃべり声は一切使わず、インタビューなども入れません。M-1は純粋培養の賞レースで「競技である」ことが一番なので、そこに変な感情を持たせてはいけないというポリシーがあります。

 

――2020年に総合演出に抜擢されて、「ここは変えよう」や「ここは継続しよう」と思った点はありますか?

 

 まさか前代未聞のコロナ禍での抜擢! と思いましたが、ライブショーとして進化させたいとは考えました。M-1は生放送で「漫才頂上決戦」をライブ中継している、という意識があります。根底にあるのは「芸人ファースト」。芸人さんが出てくるときにやりやすい舞台にするには、輝ける舞台にするには、という考え方が基本です。

 

 一番いいネタができるように、最高の舞台を作ってそのお膳立てをする。今年も、ファイナリストの登場の仕方、紹介のVTR、審査員の登場方法など楽しんでいただけるライブ演出がいろいろとあります。あと、大都会六本木で初めてドローンを飛ばして撮影した映像などもあるので、見逃さないでいただきたいです。

 

――先ほど「競技」というワードが出てきました。M-1は競技感が強すぎると感じている人もいるように思いますが、その点はいかがですか。

 

 M-1はただただネタを見て笑うのではなくて、知らぬ間に見ている側の気持ちがかなり乗っている番組だと思うんです。「がんばってくれ、ウケてくれ、その先の人生を変えてくれ」とアスリートを応援するような気持ちで見ているから、M-1が愛される。だから年々、競技感が増しているのだと思います。

 

 お笑いって、比べられるものではないし、面白いかどうかなんて人それぞれ。走ってタイムを競うものだったりとは違うので、競技感が強すぎる、競わせるのはどうなのという意見もよくわかります。ただ、M-1を競技化したからこそ、漫才がかっこいいと思えるし、演芸ではなく「目指すべき何か」になる。勝負があるから頑張れる。だから次々面白いことを生み出す。勝負があるから切磋琢磨するという面もあると思うんです。「競技をやめます」といった瞬間に面白くなくなるのではないかと。

 

 知られていない人が知られる。よく知られている芸人だけでなく、急に最高速度で走ってくる人が出てくるのは競技だからこそ。それがM-1のすばらしさだと考えています。

 

――いまやM-1は大きなコンテンツとなりましたが、なぜここまで大きくなったとお考えですか?

 

 ひとつは競技としてエンタメ化しているところ。切磋琢磨が生まれて、毎年のように面白い人が出てくる連鎖を作ったのがM-1のすごさだと思います。

 

 もうひとつはM-1に携わっているスタッフのスピリッツ。手前味噌ですが、日本一のチームだと思っています。美術さん、技術さん、ディレクターはもちろんですが、予選会場の受付の人まで全員が同じ方向を向いているすごさは、長年培っていたM-1魂です。全スタッフが、毎年何かM-1を進化させることはできないかと考えながら取り組んでいるからこそ、ここまで大きくなったし、これからもまだまだ大きくなっていくと思います。

 

――全員が同じ方向を向いているスピリッツは感じます。創業以来、継ぎ足し続けている秘伝のタレみたいな。それでいながら「同じ形で守り続けろ」ではなく、大事な「味」だけ押さえて進化を続けるというか。

 

 確かにそう思います。秘伝のタレを守りながら、どちらかというと「変えていこう」が至上命題。ここ2年はコロナ禍もあって大会運営自体が大変で、システムやルールなど大きな変化はできないので、あまり変わっていないと思われるかもしれませんが、細部にこだわった変化はつけています。今年もライブショーという部分で新しい試みはしているので、楽しみにしていただきたいです。

 

――今年のキャッチコピーが「人生、変えてくれ。」。確かに、M-1ってなぜ人生が変わるんでしょう?

 

 漫才師のみなさんが人生をかけて戦ってくれているから、でしょうか。純粋なんですよね、優勝が。めちゃくちゃドキュメンタリー。バラエティーというよりドキュメント。ネタが面白いからその人を好きになり、気づかないうちにその人自身を応援している。それがテレビマンにも伝播して、番組に出てほしいとオファーして仕事につながる。漫才は人柄が見えて感情移入しやすいし、それを世間に見せつけるからファンになりやすいんだと思います。

 

 だからこの「人生、変えてくれ。」は一般の方々の思いをキャッチコピーにしました。単純にネタを見ているだけではなく、誰かを応援しながら見ている、なぜか自分の夢を乗せてしまったりする。「人生、変えてくれ。」という、その叫びがキャッチコピー。これもまた、M-1 PRチームの今年の渾身の作品です。

 

――今年のファイナリスト選考は難航していたようですが、どんな決勝になりそうですか。

 

 確かに準決勝の結果はすごく僅差でした。審査員の意見がかなり飛び交いましたが、最終的には納得の9組になりました。

 

 今年は伝説と呼ばれる、すごい大会になりそうです。地下の小さな劇場で切磋琢磨してきて、手の内も知っている面々が揃っていて、とんでもない化学反応が起こりそうな予感はします。そんななかでも、3年連続決勝進出という経験値のあるオズワルドは気合い十分ですし、なにわの新星2組(ロングコートダディともも)がどうかき回してくれるだろうかという楽しみもあります。さらに敗者復活もものすごいメンバーのなかから勝ち上がってくるので、波乱がありそうです。

 

 準決勝終わりに錦鯉・渡辺隆さんが「ただただ面白い大会にしたい。最高の大会にしような」と言っていたんですが、その話し相手がランジャタイの2人だったのも面白いなと(笑)。どう展開するか読めないのが怖くもありますが、ずっと笑っていられる驚異の “グルーブ感” ある大会になると思います。

 

※『M-1グランプリ2021』は今年で10年連続となる今田耕司・上戸彩を司会に、12月19日(日)18:34からテレビ朝日・ABCテレビ系で生放送。審査員は4年連続で、松本人志、上沼恵美子、中川家礼二、サンドウィッチマン富澤たけし、立川志らく、ナイツ塙宜之、オール巨人の7人が務める。決勝の前には敗者復活戦が14:55~17:25で生放送され、視聴者投票で決勝へ進む1組が決定する。

 

取材&文・松田優子

 

( SmartFLASH )

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