■コロナ禍で生き方に対する考えに変化が
素の自分に一度戻ったあとの彼女が現在取り組んでいるのが、鉄道オタク女子という、これまでにない役柄だ。
「私、オタクの人って好きなんですよね、基本的に。何かに詳しいとか、すごく興味があるって素敵じゃないですか。私が演じてる大兼久道子(おおがねくみちこ)は、家具メーカーでバリバリ働きながら、お休みの日には一人でローカル駅に行っちゃうという筋金入りの鉄オタ。私のなかに、そういうキャラクターを演じられる要素を見つけてくださったことに驚きながら感謝しています」
ドラマ『鉄オタ道子、2万キロ』(テレビ東京系)は、日本全国のローカル駅でロケをおこなうため、長時間の移動が必要不可欠。しかし、彼女はそれもインプットの時間に変えてしまう。
「私は鉄道に限らず、乗り物に乗っている時間が好きなんですよ。自宅から仕事場に向かう車の中や、新幹線や飛行機に乗っている時間に気持ちを切り替えたり、整理したりします。今回も、スタッフや共演者と撮影場所に行くプロセスを楽しんでいます」
物語の舞台になる駅に降り立ったら、その土地の空気を感じ、空を見上げる。晴れの日も雨の日も、ここでどう楽しんで伝えるかを考える。
休憩時間に風景を写真に撮っているスタッフを見ると、「ここに心惹かれるんだったら、こういうリアクションをしようかな」と、演技プランを練るという。
「現場では、とにかくなんでもやってみることを大切にしています」
限られた撮影時間のなかで、考え込んでる時間があったら、そのぶん前に進みたい。
監督から提案されたことに対して自分の考えを躊躇なく伝え、撮影の方向を早く決められるようにしたい。それが、やるべきことだと思うから。
「道子は鉄道での一人旅という趣味を10年続けている女性。私も、そのときどきで好きなことはあるけど『これが趣味です』と、胸を張って皆さんにお伝えできるものがなくて……。いちばん続いているものはなんだろうって考えたとき、このお仕事かなと」
撮影現場でカメラの前に立つことはもちろん、インタビューに答えることも、インプットする時間をどれだけ充実させられるかも、すべてひっくるめての女優という仕事。
「けっして仕事オタクってわけじゃないですけどね(笑)」
鉄オタ女子という、これまでにない役柄で幕を開けた2022年。
「すっきりする年になればと思っています。そうなってほしいという願いも込めて。仕事がすべて止まったわけじゃないし、私なりに充実しています。一人でインプットする時間が増えたことで、これからの生き方に対する考えに変化がありました」
どんなふうに?
「ひとつの目標に向かってがむしゃらに突き進んでいくのも大事だと思うけど、それよりも目の前にあるものや、身近な人を大切にする生き方ができたらいいな、と思うようになったんです」
玉城ティナ、24歳。彼女の進化はまだまだ止まらない。
たましろてぃな
1997年10月8日生まれ 沖縄県出身 2012年に「ミスiD(アイドル)2013」でグランプリを獲得。14歳で「ViVi」専属モデルになり、2014年にドラマ『ダークシステム恋の王座決定戦』で女優デビュー。2022年は4月29日公開の映画『ホリックxxxHOLiC』など多数の出演作が控える
写真・中村功
取材&文・工藤菊香
※ドラマ 25『鉄オタ道子、2万キロ』(テレビ東京系、毎週金曜日24時52分~25時23分) が放送中