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『新宿鮫』シリーズの大沢在昌氏が紫綬褒章を受章 本誌に語っていた「大親友」藤子不二雄Aさんへの思い
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.11.02 21:00 最終更新日:2022.11.02 21:00
政府は11月2日、「秋の褒章」の受章者717名と29団体を発表した。その中には、作家・大沢在昌氏の名前もあった。
大沢氏に贈られたのは、学術研究や芸術、スポーツなどの分野で活躍した人が対象の紫綬褒章。人気小説『新宿鮫』シリーズなどで知られる大沢氏は、受章の報せを受け、読売新聞の取材に「えっ、俺でいいの?」「これからも書きたいものを書く。同時代の人が2、3時間読み、浮世の憂さを忘れてくれれば十分」と、感想を語った。
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大沢氏の名前で思い出されるのが、2022年4月7日に亡くなった、漫画家・藤子不二雄A(本名・安孫子素雄)さんだ。藤子・F・不二雄(本名・藤本弘)さん(1996年に死去)とコンビを組み、『オバケのQ太郎』『怪物くん』『忍者ハットリくん』などのヒット作を世に送り出してきた“レジェンド漫画家”と大沢氏は、22歳も年が離れていたにもかかわらず「大親友」と呼べる関係だった。
大沢氏は4月、藤子不二雄Aさんが亡くなった際、本誌に思い出話を語ってくれていた。
「安孫子さんとは40年くらいのつき合い。最初は、ゴルフだったか麻雀だったか覚えてないけど、俺の父親代わりみたいな作家の生島治郎さんと、俳優の芦田伸介さんに紹介されて。
俺がまだ20代で、覚えているのは、ゴルフのスコアが初めてハーフで50を切ったとき、安孫子さんが一緒にまわってたんだ。『50を切るぞ、50を切るぞ』って呪文のように唱えてたら、安孫子さんから『うるさいね、君は』と言われてね。
そのとき、たぶん安孫子さんは50歳前くらいだと思う。ふだんは安孫子さんと呼ぶんだけど、仲よくなってからは『アビちゃん』、最後には『ジジイ』なんて憎まれ口をきいてたけど。
『大沢ちゃんも若いころはかわいかったけど、売れてからは私のことをさげすんで』とか言いながらも、誘ってきて」
幼いころ『怪物くん』を読んでいたという大沢氏。漫画界のレジェンドに、最初は緊張したが……。
「これが安孫子さんのすごいところなんだけど、漫画家として有名なのに、ちょっと話しているとその辺のおっさんみたいに思えてくるんだよね。絶対に威張らないし。その点では “人物” だった。
ただもう、性格は『大きな子供』という感じでね。一人称は『ボクちゃん』、口癖は『お金がない』。子供だから、お金を持たせると、あるだけ使っちゃうんだ。
一時期、ゴルフにハマって、お金があるだけゴルフ道具を買っちゃうということがあった。押入れを開けると、ゴルフボールがガラガラーッ、クラブがガチャガチャーッて落っこちてきたらしい。どれだけ買って、死蔵してるんだと。それで、奥さんとか、マネージャーをされてた亡くなったお姉さんから、一日2万円しかお金をもらえないようになった。
お金は持ってないのに、きれいな女のコがいるクラブが大好き。だから、つねにおごってくれる人を探していた。俺が六本木のクラブなんか連れて行くと『きれいだなー、ボクちゃん、こんな竜宮城みたいなお店、初めて来たよ』とか言うんだよ。そうすると店のウエイターが『先生、昨日も同じ席で同じことおっしゃってましたよ』って(笑)」
「おごり、おごられ」どころか「おごり、おごり」の関係だったという2人。それでも大沢氏は、Aさんとのつき合いをやめなかった。
「あの人とつき合ったほとんどの人が、おごったことはあってもおごられたことはないんじゃないかな。クレジットカードも持っていなかったし。
でも3年くらい前、クレジットカードを作って、見せびらかしてたことがあった。それで俺が『クレジットカード持ったの? じゃあ銀座に連れて行くから飲もうよ』って誘って。
いざ会計の段になって、安孫子さんが『ボクちゃん、払うよ!』ってカードを出そうとしたら『あ!カード、ゴルフ場に忘れてきた!』だって。『ふざけんなよ、オヤジ!』って(笑)。どつきそうになったよ。『結局、俺が払うんじゃねえか!』って。
そんなだけど、嫌われないというか憎めないというか。本当にピュアな人なんだよ。『ピュアだけど図々しい』、これがいちばんぴったりくる表現かな。
ほら、子供ってピュアだから何事も『なんで?』って聞いてくるじゃない。大人には当たり前のことに『不思議だ』『なぜだ』と疑問を感じて、それを作品につなげていたんだと思う。だから、いくつになっても漫画家を続けられたんだ。
それに、子供って図々しい生き物だから。ご飯を食べたら、お金は誰かが払ってくれると思ってるし(笑)。安孫子さんはそういう、大きな子供みたいな人だから、誰かを怒らせることもなければ、自分が怒ることもなかった」
藤子不二雄Aさんが存命だったら、今回のニュースに大喜びしつつも、「お祝いにおごってよ!」と、大沢氏に声をかけてきたに違いない。
( SmartFLASH )