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井上真央『100万回 言えばよかった』いまなぜ “最強にズルい設定” を使うのか、制作陣のチャレンジに期待

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.01.20 11:00 最終更新日:2023.01.20 11:00

井上真央『100万回 言えばよかった』いまなぜ “最強にズルい設定” を使うのか、制作陣のチャレンジに期待

 

 たぶん、泣けるとは思う。だがこのズルい設定を使うのであれば、かなりの感動のうえで大号泣させてくれないと、割に合わないとも感じた。

 

 先週金曜に第1話が放送された井上真央主演の『100万回 言えばよかった』(TBS系)。プロポーズ直前に亡くなってしまった彼氏が幽霊になって現れるというファンタジーラブストーリーである。

 

 

 中学時代の幼馴染みだったものの、長年、離れ離れだった相馬悠依(井上)と鳥野直木(佐藤健)は、2年前に偶然再会して恋人同士に。しかし、直木は不可解な事件に巻き込まれて亡くなってしまう。

 

 普通の人には幽霊となった直木の姿は見えないのだが、代々霊が見える家系の寺に生まれた刑事・魚住譲(松山ケンイチ)だけは、彼が見えて会話をすることもできた。そこで直木は譲に頼んで、自分がここにいることを悠依に伝えてもらおうとする――というのが第1話のあらすじ。

 

 譲が追っている女性殺害事件に、どうやら直木も関係していたようなのだが、直木は自身が失踪して亡くなるまでの記憶を失っているらしく、謎が深まっていくというサスペンスミステリーの要素もある。

 

 井上、佐藤、松山という演技力に定評のある大人俳優3人を起用しているあたり、TBSの気合いの入れようがうかがえるが……。

 

■映画『ゴースト ニューヨークの幻』に設定が酷似

 

 公式サイトによると、《“当たり前のことは、決して当たり前ではない”というメッセージを伝えると共に、“その当たり前がどんなに愛おしくかけがえのないものか”を改めて訴えかけるオリジナルストーリー。》という本作。

 

 ただ、あらすじを読んで、1990年に大ヒットしたアメリカ映画『ゴースト ニューヨークの幻』を連想した方も多いのではないだろうか。『100万回 言えばよかった』がパクッているとまでは言わないが、彼氏が急死して幽霊の姿で恋人の前に現れるという土台は同じで、ぶっちゃけ、設定はかなり酷似している。

 

 まあファンタジーラブストーリーというジャンルでは定番なので、酷似しているからダメだと言うつもりはない。けれど、忌憚なく意見させてもらうなら、恋人が亡くなるという設定が悲しくて泣けるのは当たり前だし、その死んだ恋人が想いを伝えに現れる設定も切なくて感動するのは当たり前。

 

 この土台だけで考えると、言ってしまえば素人でも思いつくような安直な設定だし、この物語であれば泣けて感動できるのは当然だ。

 

 そう、この定番設定が悪いわけではないのだが、ハードルが非常に高まってしまうのである。

 

 この “最強にズルい” 設定を使うのであれば、ちょっと感動したりちょっと泣けたりするぐらいでは割に合わない。視聴者の想定を大きく上回るレベルで大感動&大号泣させてくれないと、今あえてこの定番設定を用いる意義がない気がするのだ。

 

 そういう意味で、本作の制作陣や脚本家は勇気のあるチャレンジをしているとは思う。

 

■初回の涙腺刺激のグリップ力では『silent』が上

 

 今夜放送の第2話の予告映像に、幽霊である直木に謎の男(インパルス・板倉俊之)が「生き返る方法、教えようか」と話しかけるシーンが挿入されていた。死んだ人間が生き返ってハッピーエンドなんて安易なラストにはしないだろうから、おそらくこの謎の男の発言はミスリードだろう。

 

 だがこの暗いご時世なら、一周まわってそれぐらいの超ご都合主義もアリな気もする。あくまで個人的な意見だが、幽霊になった恋人が最後に別れを告げて消えていくという、悲しいラストなら泣いてしまうだろうが、そんなつらい涙なら流したくない。

 

 ――第1話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は7.4%。今は視聴率がドラマのよし悪しを決める絶対的指標ではないものの、合格ラインを越えたとは言いづらい微妙な数字だろう。

 

 余談だが、前クールで大ヒットした恋愛ドラマ『silent』(フジテレビ系)は第1話から大号泣した筆者だったが、『100万回 言えばよかった』の第1話では、涙腺はあまり刺激されなかった。初回だけで雌雄を決することはないが、あえて比較するなら恋愛ドラマとしてのグリップ力は『silent』第1話のほうが上だと感じた。

 

 今夜、第2話が放送される『100万回 言えばよかった』。全10話前後の作品になるのだろうから、これから二転三転していくなかで、想定を超えたグリップ力のあるストーリーになっていくことを期待したい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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