第1話を観た段階では、主人公が内気な優等生タイプでキャラが薄すぎるのではと懸念したが、先週放送の第2話を観て、その薄さこそが最大の個性なのだと気づいた。
先週水曜に第2話が放送された門脇麦主演の『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)は、上質な音楽エンターテインメントドラマだ。
元・天才ヴァイオリニストでありながら、10年前のある出来事がきっかけで表舞台から去り、現在は超地味な市役所職員として静かに暮らしていた谷岡初音(門脇)。
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第1話では、毒舌マエストロの常葉朝陽(田中圭)が地元のポンコツオーケストラ「児玉交響楽団」、通称「玉響」を立て直すために、初音をコンマス(コンサートマスター)として強引に引き込むまでが描かれた。コンマスとは、“第2の指揮者” とも呼ばれるオーケストラの要となる奏者のことだ。
■第1話はキャラの薄さが心配になったが…
初音は、幼少期よりヴァイオリニストとして数々のコンクールで優勝し、若くして名門オーケストラとの共演を果たしていたギフテッドだが、高飛車だったり傲慢だったりということは一切ない温厚でやさしい主人公。ふだんは口数が多いほうでもないが、人に気遣いができるし極端にコミュ障というわけでもない。
初音は謙虚で低姿勢の “人がいい優等生” なのだが、クセのあるキャラでもないため、エンタメ作品の主人公として考えると個性が薄いと感じていた。
こういう天才型の主人公は偏屈だったり自己中だったりするのが定番。そういった人間性のダメさこそが物語の主役としての魅力となり、物語を大胆に動かしていく “装置” となることが多いが、初音にはそういった要素がないように思えた。
そして、前述したように第1話は初音が「玉響」に加わるまでが描かれていたので、当たり前だが初音中心にストーリーが進み、団員たちのキャラクターとしての長所はほとんど描かれていなかった。
クセのある面々が揃っているといった程度の認識はできたが、団員たちのいまいちやる気がない姿がフィーチャーされていたため、この薄いキャラが主人公で大丈夫か? と心配になってしまうほどだった。
しかし、第2話を観てそれが杞憂だったことがわかる。初音のキャラの薄さはむしろ正解だったのだ。
■“味の濃い” 団員たちを引き立てる主人公
第2話は、生活苦で練習に身が入らない若手フルート奏者が「玉響」をやめずにすむように、初音や団員たちが協力して救うというエピソード。第1話ではほぼ描かれなかったが、第2話では個性豊かな団員たちの長所が描かれている。
たとえば、前野朋哉演じるヴァイオリン奏者は、早口で知識をまくし立てるも人と目を合わせるのが苦手なクラシックオタク。瀧内公美演じるチェロ奏者は、行動力のある気が強い性格で、常に誰かに恋していたい恋愛至上主義者。
第1話の段階では仲間同士で群れるのが嫌いなタイプなのかと思いきや、そんな彼らが第2話ではなんだかんだと若手フルート奏者のために協力してくれる。クセのあるキャラたちが、仲間のピンチに団結してくれるという胸アツ展開だったのである。
ほかにも濱田マリ演じる底抜けに明るくお人好しなヴィオラ奏者や、平田満演じる「玉響」の精神的支柱とも言える温和なオーボエ奏者など、いい味を出している団員も。とにかくそれぞれバラエティに富んだ性格で、みんな気のいいヤツらなのである。
そんな “味の濃い” 団員たちの見応え抜群の掛け合いを引き立てるために、主人公である初音の性格はあえて薄味にしてあるのではないか。楽器を奏でる団員たちを初音がコンマスとしてまとめるように、団員たちが奏でるにぎやかな物語を初音が主人公として上手にまとめていくというわけだ。
また、よくよく考えれば、天才キャラが偏屈で自己中というのはありがちすぎるので、天才なのに謙虚で低姿勢という初音は、そのテンプレを見事に裏切った主人公像となっていて、それ自体が “超” 個性的とも言える。
――本作の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は第1話が6.8%、第2話が6.6%。視聴率だけで見ればヒットとは言いがたいが、第1話から第2話は微減した程度なので、視聴者が離れていないことがわかる。
良質なエンタメ作品だと思うので、今夜放送の第3話でも固定ファンをガッツリ掴んでいってほしい。
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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