■Dr.コトーは監督と一緒に作った作品
年を重ねて、与えられたことを楽しむ余裕が出てきたというが、根本的な性格は昔から変わらないとのこと。
「自分から『これをやりたい!』と言えないんですよ。それは昔からなのですが、どこか恥ずかしいと思っているというか。なので、イベントなどで深く考えずに全力で楽しめる人が羨ましくもあります。私は絶対にそういうタイプではないので」
一線を引いて、まわりを観察するのが好きだったという。
「花火大会に行っても、花火よりまわりの人が何を食べているか、どういう人と来ているのかを見たりして。それは今も変わっていないです。電車に乗ったら、この人はいくつぐらいだろうとか、どんな生活をしているのかを考えるのが楽しくて。
なんでもない普通の生活の、日々の積み重ねが女優としての仕事には生きていると思います。キャラクターというのは、その作品の日常に生きているわけなので。役をもらったら、その人の日常やバックボーンを考えるのが楽しい時間です」
それは朝加も出演している公開中の映画『Dr.コトー診療所』にも生きている。
2003年にフジテレビで連続ドラマとして放送されて人気を博した作品だが、今回の映画は16年ぶりになる。
「16年も経て愛してもらえる作品と出合えたのは本当に幸せです。撮影に入ってもあまり年月は感じなかったです。みんなが一緒に年を重ねたこともありますが、自分たちの役もこの島で16年間、変わらず暮らしていたんだなと自然と思えて。帰ってきたなという気持ちでいっぱいでした」
そこにある日常が描かれる本作で印象的だったのは、朝加演じる星野昌代が、夫である正一(小林薫)に白髪染めをしてもらっているシーンだ。
「監督と相談して、昌代さんは病気をしてハンデがあるけどきっと髪は染めていると思いますと伝えてできたシーンです。最初は娘(柴咲コウ)にしてもらっているかも? と話していたら、監督が正一さんにしてもらおうとおっしゃって。さすがだなと思いましたね。こういうなにげない、大きな出来事が起こらないシーンは描かなくてもいいのですが、それを映すことでよりキャラクターの姿が見えてくるんです。みんなでキャラクターのこと、作品のことを考えるすごく楽しい時間でした」
朝加はこれからも女優を続けていきたいという。
「きっとずっと女優をしていくのだと思います。16歳のころは一生の仕事になるとは考えていなかったのですが、おもしろいですね」
リアリティのある演技を常に見せる彼女の、新たな挑戦に期待したい。
あさかまゆみ
1955年9月6日生まれ 北海道出身 1971年に「ミス・セブンティーンコンテスト」に応募、芸能界入り。1973年に『ウルトラマンタロウ』(TBS)のヒロインで女優デビュー。また同年『虹色の夢』で歌手デビューするほか、『オールスター家族対抗歌合戦』(フジテレビ)では司会の萩本欽一のアシスタントとして出演し人気者に。1980年には映画初主演となった『純』で話題を呼び、女優として幅広いジャンルの作品に出演するように。近年は母親役などで名脇役として活躍。現在公開中の映画『Dr.コトー診療所』『ラーゲリより愛を込めて』など話題作に出演している
【ル・クープシュー】
住所/東京都千代田区飯田橋3-1-6 マリアナ飯田橋East 2F
営業時間/11:30~13:30(L.O.)、18:00~20:30(L.O.)
定休日/水曜
写真・伊東武志
ヘアメイク・青木千枝子
衣装協力・Kei Hayama Plus