演歌、ポップス、ロック……ジャンルにかかわらず、コンサートやイベントで、歌いながら客席に下りていくことがあります。
ぶっちゃけていってしまうと、これも演出のひとつで、何曲めに客席に下りるのかというのはもちろん、あのあたりに行って、そこで回れ右をすれば、ぴったり曲の終わりにはステージに帰ってこられるわね……という計算を頭の中でしています。
ところがです。中村あゆみ姐さんは、そんなことはお構いなし。ずんずん進んで行って、曲が終わって、それでもまだ、ずんずん進む。来てくださったお客さん全員に幸せを届けるまで、ずんずん、ずんずん突き進みます。
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こんなエネルギーの塊のようなあゆみ姐さんと初めてお会いしたのは、2007年8月4日、加山雄三さん主催の「第5回湯沢フィールド音楽祭」でした。
第一印象は……とにかくパワフル。何かひとつのことを話すにも、その熱量がとにかく半端なくて。負けじと、わたしの熱量もどんどん上がっていきます。で、はっと気がついたときには、もうすっかり、あゆみ姐さんが放つオーラの虜になっていました。
どういうわけか、わたしのまわりには、 “ザ・男前” という女の方がたくさんいますが、そのなかでも、あゆみ姐さんは群を抜いています。
共通の趣味はゴルフ。ということで、一緒にコースを回らせていただいたことがありますが、あゆみ姐さんのゴルフは豪快そのものです。
わたしも、女性にしては力があるほうなので、硬めのシャフトを使っていますが、あゆみ姐さんのクラブはメンズ用。しかもドライバーで、ズゴーンと力いっぱいかっ飛ばした次の瞬間、もうスタスタと歩きだしています。
「冬美ちゃん、疲れてない?」
わたしの体調を心配してくださるのは、あゆみ姐さんの優しさです。
「いい病院があるのよ。予約しておいたからね」
「えっ!? いつ? どこの病院ですか?」
「大丈夫! わたしも一緒に行くから」
わたしの戸惑いを吹き飛ばす勢いで、豪快に笑い飛ばします。
もしかすると、お一人のときは悩んだり、クヨクヨしたりしているのかもしれませんが(ちょっと想像できませんが…)、そういう姿は絶対に見せずに、いつもテンション高めで、元気モリモリ。あゆみ姐さんと一緒にいるだけで、わたしも元気になっちゃうんです。
あれは、 “日本一の旅館” と呼ばれる石川県が誇る和倉温泉・加賀屋さんで演らせていただいたディナーショーのときのことです。
特別ゲストとして登場したあゆみ姐さんは、出てくるなりもうノリノリです。ステージを駆け下りると、おじいちゃん、おばあちゃんの輪の中に、ガンガンに分け入っていきます。
ーーお客さんもびっくり?
そう、思いますよね。でも、あゆみ姐さんの元気とパワーをもらった、おじいちゃんもおばあちゃんもノリノリで。あの大盛り上がりは、100年の歴史を誇る加賀屋さん始まって以来とのことで、もしかすると、最初で最後かもしれません。
ステージを下りた後は「美味いねぇ」と言いながら、あっという間に食事を平らげると(あー見えて、あゆみ姐さんはお酒を飲みません)、ソッコーお風呂に入って「じゃ、おやすみ」と、お部屋に帰っていかれて……。すべてが、さすがあゆみ姐さんでした。
あゆみ姐さん、今度また、ゴルフ誘ってくださいね。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋