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山田裕貴『ペンディングトレイン』大災害回避を思わせるシーン挿入で主人公たちの生き様が滑稽に【ネタバレあり】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.24 15:30 最終更新日:2023.06.24 15:31

山田裕貴『ペンディングトレイン』大災害回避を思わせるシーン挿入で主人公たちの生き様が滑稽に【ネタバレあり】

 

 正直、小惑星衝突が回避できたように思わせるシーンは、蛇足だったのではないか。

 

 6月23日に最終話(第10話)が放送された山田裕貴主演のサバイバル系SFドラマペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』のことだ。

 

 

 ある朝、都心へと向かう電車の車両が、激しい衝撃とともに突如として荒廃した2060年の未来世界にワープしてしまい、たまたま乗り合わせた乗客たちのサバイバル生活を描く物語。メインキャラクターはカリスマ美容師の主人公・直哉(山田)、体育教師のヒロイン・紗枝(上白石萌歌)、熱血消防士の優斗(赤楚衛二)の3人。

 

 第8話ラストで、レギュラーキャラの大半は無事現代に帰還。第9話と最終話は、小惑星が落下して地球環境が激変する大災害が起こってしまうのかどうか――という現代編が描かれた。

 

■【ネタバレあり】2021年のレオ様の映画と比較

 

 結論から言うと、小惑星激突が予想されていたXデーの前に物語は終了。あえて物語をXデーまで進めず、視聴者の想像にゆだねるという手法なのはわかるが、やはりきっちりその当日まで見せてほしかった。

 

 個人的には、映画『ディープ・インパクト』(1998年)や『ドント・ルック・アップ』(2021年)のように、小惑星落下を阻止できず大災害が起こってしまい、死の間際の究極の人間愛を描いてほしかった。

 

『ドント・ルック・アップ』は、小惑星が着々と地球に迫るなかでの人類を描いたブラックコメディなのだが、主人公を演じたレオナルド・ディカプリオたちの最期のシーンが至上の美しさで、これぞ人間ドラマの真骨頂だと感動したものだ。

 

『ペンディングトレイン』は同様の設定を用いた作品のため、『ドント・ルック・アップ』に肉薄する感動レベルを期待していたが、遠く及んでいないという印象。

 

 ちなみに、予算の潤沢さが圧倒的に違う日本のドラマとアメリカの映画を比較して、日本のドラマを批判するのはフェアではないという意見もあるだろう。

 

 だが、『ドント・ルック・アップ』でもっとも心が揺さぶられるのはダイナミックなCGシーンではなく、主人公が家族や仲間と集まって食卓を囲む素朴なシーンなのだ。予算うんぬんは言い訳にできない。

 

■主要キャラの決意や行動がぼやけてしまった

 

『ペンディングトレイン』では、小惑星衝突が予想されるXデーの数日前までしか描かれなかった。

 

 未来世界をサバイブして強い絆で結ばれていた紗枝をはじめとした元乗客たちは、仲間のひとりが防衛インフラの整ったスイスの施設に避難する手配をつけてくれたため、スイスに向かうことに。

 

 だが、現代の人々の対応や反応にすっかり心が折れてすさんでいた優斗は、スイスには行かず、日本に残る決断をしていた。優斗はなかば生きることをあきらめていたのだろうが、そんな彼の前に直哉が現れ、自分は何度も優斗に心を救ってもらったと熱弁。2人は「生きよう」「やれるだけやってみよう」と声を掛けあい、キラキラした友情シーンでラストを締めくくった。

 

 一方、日本政府は小惑星の軌道を逸らすためのロケット発射計画を秘密裏に進めていた。ロケット発射後、大災害回避のために奔走していた物理学教授のもとに電話があり、その通話で安堵したようなリアクションをしていたので、おそらく計画は無事成功したのだろう。明言されていないため作戦失敗の可能性もあるが、筆者と同じように作戦成功と解釈した視聴者は多いはず。

 

 さて、蛇足だったと感じたのは、まさにこの物理学教授のシーンである。

 

 紗枝たちが生き延びる決意をしてスイスへ向かっていたところで幕は閉じたわけだが、小惑星の軌道を逸らせたのであれば避難する必要はなくなる。スイスに行ったとしてもとんぼ返りで日本に帰ってくるのではないだろうか。

 

 視聴者に主要キャラたちがのこのこと日本に戻って来る姿を想像させる意味って……とモヤモヤしてしまったのだ。

 

 直哉と優斗も「生きよう」「やれるだけやってみよう」と声を掛けあっていたわけだが、小惑星が衝突しないのであれば、のほほんとしていても普通に生きられるし、やれるだけやらなくちゃいけないような困難も降りかからないだろう。

 

 どうせXデーまで描かずに視聴者の想像にゆだねるラストにしたのであれば、ロケット計画の成否には一切触れないほうがよかったのではないか。

 

 中途半端に大災害が回避できたかのようなフラグを立てて終わったせいで、主要キャラたちの決意の意味が薄れ、彼らの生き様がどこか滑稽に見えてしまった。

 

 本作は「予測不能のヒューマンエンターテインメント」を謳っていた。そのため、あくまでテーマは人間ドラマであり、未来に飛ばされたSF設定や小惑星衝突というカタストロフィ設定は、その主題を描くための土台のようなものとして扱っているのだろう。

 

 だからこそ、主要キャラたちの決意や行動がぼやけるようなシーンは、蛇足だったと思えてならなかった。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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