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ドンキの男性下着が「ニッチ攻め」で大ヒット「もっこり」「残尿感」「ポジション問題」を解決…開発者が明かした「失敗作」の納得理由とは
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.10.14 11:00 最終更新日:2023.10.14 23:44
8月24日に渋谷道玄坂の大型複合施設「道玄坂通 dogenzaka-dori」にオープンしたドン・キホーテの新業態「ドミセ渋谷道玄坂通ドードー店」が話題になっている。
この店舗はドン・キホーテを経営する株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスのPB(プライベートブランド)やOEM(相手先ブランドによる生産)といったオリジナル商品のみを揃えているのが特徴だ(※10月中は、PBやOEM以外にハロウィン関連商品も販売中)。
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同社のPB「情熱価格」の商品は、アパレルや食品など7部門にわかれた企画開発部門で、日々、意見を交わし新しい商品が生み出されていく。そんななか、発売から約1年半で累計販売数が23万枚以上を売り上げているヒット商品が「ドンキ・テクノロジー」シリーズと称する男性用の下着だ。
「『ドンキ・テクノロジー』とは、自分たちが自信を持って世の中に発信していく革新的な男性用下着のシリーズです。男性特有の細かい悩みや不安に対応する下着を開発し、まずは2022年3月に6種類を発売しました」
そう話すのは、同社4MDファッション&ブランドPB企画開発・サブマネージャーの向剛史さんだ。価格は1枚税込みで1098円と、少々高めである。
「販売の主軸になっていたボクサーパンツが3枚で税込み1098円なので、1枚と3枚の値段が同じになってしまうことには、社内でも賛否両論があり、不安ではありました。
ただ、しっかり機能性にこだわって開発を重ねてきた商品なので、お客さまにご満足して使っていただけるだろうと、自信を持ってその値段設定にさせていただきました」(向さん、以下同)
開発にあたっては、何を強みに攻めるべきか、頭を悩ませたという。
「結果的に、男性の悩みや不安は何かと考えて6種類を開発したんですが、そんなにたくさん種類がいるの? と、社内でも問答になりました。
でも、こればかりはいろいろ提案してみて、それに対してお客さまがどんな答えを出してくるか、やってみないとわからないので商品化しました」
それぞれの商品は、極上のはき心地を追求し、裏面に滑るポリエチレン素材を使用した「さらテック」、“裸族” にも納得してもらえるよう軽量化をはかり、徹底的に薄くして着用感を軽減した「かるック」、どんな体型にもぴったりフィットする「のびック」、あみあみの蒸れないメッシュ素材を使用し、湿気や汗を逃がす「むれナック」、大事な部分がズレないように立体的な構造で位置をキープする「ポジテック」、失禁ではなくちょっとした漏れをカバーし、染みない構造にした「もれナック」の6種類だ。
「『ドンキ・テクノロジー』なので、『テック』縛りでネーミングしようと考えました。重視したのは、お客さまが名前を見たときに、自分が求めている機能はこれだと、わかりやすくすること。
しかし、生地がさらさらしているから『さらテック』はいいんですが、『もれテック』だと、逆に漏れてるみたいに聞こえないかと(笑)。そこで『もれナック』として、すべてに『テック』をつけるという考えはなしにしました。
『もれナック』に関しては、高齢者の失禁以外に、若い世代にも残尿感やキレが悪いという悩みはあるんですね。失禁の漏れ防止を前面に出してしまうと『俺は違う』となってしまうと思うんですが、みなさんがイメージしやすい “モレ” を名前に入れたことで、気づいてもらいやすくなったと思っています。『もれナック』は想像していたよりも多くの若い世代の方に響いたようです」
6種類のラインナップでスタートしたが、すべてが好評だったわけではなかった。向さんが「2大巨頭」と話すように、「さらテック」と「かるック」は好評な売れ行きで、「もれナック」がそれに続いた。だが「のびック」「むれナック」「ポジテック」は思っていた以上の実績にはつながらなかったという。
「『のびック』はデザインがちょっと斬新的すぎたのと、着用感をうまく伝えきれなかった。『フィットする』と謳ったことが、きついと感じてしまったようです。
『ポジテック』に関しては “ポジションキープ” という機能をユニークに直接的に表してみたんですが、大事な部分を立体的なポケットに格納しないといけないので手間がかかる(笑)。
また、一日中固定されているので、ストレスもかかる。最初は愛用していた社員も、『格納するのが面倒だから』と離脱してました。『むれナック』は全体をメッシュにしたので、スケスケすぎて単純に見た目が恥ずかしかったようです(笑)。
機能に特化しすぎるのもダメで、一日中穿いているものだからこそ、心地よく穿けるものが求められているんだということを再認識しました」
こうした失敗や反省点から、販売から約半年後の2023年4月に、一部の商品をリニューアル。向さんがまず最初に着手したのが「ポジテック」だった。
「ポジションキープができる安定感を担保しながら、固定されるのは嫌だというお客様の視点で考えました。そこで生まれたのが『りらック』。ブリーフパンツのなかにもうひとつのブリーフパンツがあるような感覚で、フロント部分がハンモック構造になっていて、しっかり包み込んで安定させてくれるんです。
これなら格納する手間もかからず、機能は果たしています。しかも、ハンモック部分はメッシュ素材で浮いているので、べたつかず、蒸れない。うまくいかなかった『むれナック』と『ポジテック』の “いいとこ取り” で進化したのが『りらック』なんです」
ポジションキープという機能は果たしながらも、“リラックス感” をうたった「りらック」は好評を呼んだ。いまや、「さらテック」「かるック」に次ぐ3位の売上となっているという。
向さんにはこんな失敗もある。それが新しいパンツの開発に生きていると話す。
「以前、自分が服を着ていると気疲れするなと思ったことがあり、軽さを追求した服を開発したいなと思って。とにかく軽量にこだわって『着ているのを忘れるほど軽い』というシリーズを作って、春夏シーズンにデビューさせたんです。
たしかに着ているのを忘れるぐらい軽かったんですが、あまりに薄すぎて、破れないかと心もとなかったようで、とてつもなく売れませんでした(笑)。
こういうニーズがあるだろうと意識して作ったんですが、それが本当にお客さまの観点にあっているか。それは、発売してお客さまの声が入って、初めてわかるんです。失敗を恐れないで、最終的にみんながハッピーになれる商品を作ることができればいいなと思いますね」
そんな失敗を生かしながら向さんのチャレンジは続き、10月からは2つの新商品が発売される。そのひとつが「しみナック」。これは向さん自身の経験から生まれた、今までありそうでなかったパンツである。
「僕がご飯を食べた後にお腹が緩くなりやすくて……括約筋が弱いんです。朝の出勤時に、急にもよおしてしまって、駅のトイレに駆け込むこともあって。
あきらかに『この人も僕と同じだよな』って思う人も何人かいるんですよね。痔や、お腹の疾患を持っていらっしゃる人もいるはず。間に合わなくて少し染みてしまった場合でも、ズボンに響かない機能を持ったパンツが作れないかと考えたんです」
新しい「しみナック」は、前の部分だけでなく、後ろの部分も吸水4層構造になっているので、漏れても染み出しにくい。もうひとつが、いかにもドンキらしいネーミングの「もこらナック」である。
「このパンツのターゲットは2つあります。大事な部分を大きく見せたいという男性の願望がある一方、大きいことを気にして隠したい、目立たないようにしたいという方もいると思うんです。女性のブラジャーにも大きい胸を目立たないように抑える商品がありますよね。それと同じ発想です。
もうひとつの理由は “男性あるある” で、思春期のころは何も意識していないのに、勝手に大きくなってしまうという現象が起きます。それが周囲から、しかも女性にわかると非常に恥ずかしい(笑)。これなら、ピタッとしたスキニーズボンをはいても、まったくわからず涼しい顔で歩けます。
今までのチャレンジよりもニッチなところを攻めています。でも、メーカーさんが自分のところでは発売しづらい商品も、ドンキのPBなら『またふざけたことをやってる』で、許される一種の特性があると思うんです。そこを攻めていける土俵にいるので、チャレンジしていきたいと思いますね」
こうした機能を生かし、「さらテック」のロングボクサータイプや「かるック」のビキニブリーフを提案するなど、派生商品も次々と生まれている。また、「かるック」はゴム部分を同じ素材にすることでゴム感をなくし、より穿いている感覚を減らすように進化させた。
「こういった機能に特化したパンツは、どこに行けば買えるのかわからないお客さまって多いと思うんです。でも、『ドンキ・テクノロジー』のラインナップなら、何か見つかるかもしれない。そんな期待を持ってお客様がご来店してくれたらいいなと。このシリーズがそういう存在になってくれたらいいなと思います。とにかく機能にこだわって開発してきたので、パンツには自信があります」
“日本一パンツに詳しい男” のパンツにかける情熱は今日も止まらない。これからも男性が求めていた機能を持ったパンツを彼の手で生み出されていくだろう。
( SmartFLASH )