「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません。」
こう横断幕が掲げられた、10月31日の渋谷。最近は“渋ハロ”と呼ばれる、仮装した若者たちのバカ騒ぎが問題視されていたが……。2022年の韓国・梨泰院(イテウォン)ハロウィンでの群衆転倒事故や、逮捕者まで出た渋谷のトラブルを受け、渋谷区長が異例の声明を出したのだ。
社会デザイン研究者で、若者文化や都市論に詳しい三浦展氏は、渋谷の“締め出し”をこう批判する。
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「ハロウィンを禁じるのは行政の自由ですが、鬱積した不満のはけ口がどこに向かうかは考えないといけない。内閣府の『国民生活に関する世論調査』を見ると、生活満足度は、2018~2019年の74%から2021~202年は52~55%に激減している。コロナにより、格差が拡大した面もある。若者たちは、鬱屈した不満を、これからもどこかにぶつけることになるでしょう」
“締め出し”を受けても、あきらめない人たちがいる。本誌は渋谷と、新宿区・歌舞伎町に集まった女性たちを追った。
渋谷に立ち寄った女性は「昨年も来ましたが、体感で3割ほど人出が減りました。海外からの観光客ばかりが目立って“渋ハロ”じゃないみたい」と語った。一方、新宿で飲食店を営む男性は「こんなに仮装した人でごった返すのは初めて。皆ぴったりした服を着て、DJ SODAみたいですね」と笑った。
この「渋谷→歌舞伎町現象」を、都市論に詳しい作家の泉麻人氏は、こう分析する。
「昨今のハロウィン騒ぎには、若者の幼児化を感じます。オンラインでの結びつきが主流になって、直接、人がふれ合うイベントが貴重なものになったぶん、若者が騒げる場所を探し求めているような気がしますね。歌舞伎町のような、ある程度、猥雑な街は、これからもハロウィンの“会場”に選ばれていくでしょう」
街が拒んでも、若者たちは“騒げる街”を探し続けるのだ。
写真・久保貴弘、越野 遥