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本当に段ボール?『進撃の巨人』『ハウルの動く城』『ガンダム・バルバトス』を完全再現したドイツ在住59歳を直撃!
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.12.23 15:15 最終更新日:2023.12.23 16:26
「最新作は、『進撃の巨人』に登場する『超大型巨人』です。人類が造りあげた壁を楽々と超える身長を持った巨人ですから、それが出現するときの恐怖感を立体造形で再現したいと思ったんです」
そう語るのは、ドイツ・ミュンヘンにある日本食料品店「美門」に勤務しながら、段ボールアートを製作している日本人男性・さいぞうさん(59)だ。
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さいぞうさんは、1964年釧路市生まれ。服飾専門学校を卒業し、カフェ経営を経て、六本木のソウル・ミュージックバーや札幌の広告制作会社に勤めた。その後、石垣島に移住し、Tシャツなどが全国区の人気を集めた「海人工房」のデザイン課に所属した経歴を持つ。
2016年にドイツに渡り、現在は勤務先で広告デザインや動画制作を担当するさいぞうさんだが、美術の専門家ではない。どうやって、段ボールで精巧なオブジェを作ることができるのか。
「段ボールなら、私が勤務している会社の倉庫にいくらでもあるので(笑)、紙の厚さや固さ、貼り合わせ方などを模索します。『超大型巨人』は、全身の皮膚が剥がれたような肢体を持つので、人体解剖図で筋肉の動きや、腕の腱の観察から始めました。ただし、作品の設計図はありません。すべては実際に製作しながら創意工夫をします」
そもそも、なぜ段ボールアートを作ろうと思ったのか。
「現在勤めている会社の同僚に、仕事の一環として、日本の城のオブジェを作ることを提案されたのです。しかし、ただジオラマのように日本の名城を作ったのではおもしろくない。あえて二次元アニメを立体化しようと思いつき、ジブリ映画の『ハウルの動く城』を再現してみようと思ったんです」
段ボールアートの第一作めである「ハウルの動く城」は、制作に8週間かかった。
「『ハウル』はカオスを体現したオブジェなので、段ボールで再現するには、ものすごく“感覚的”になる必要がありました。どこに何をくっつけたり、形状を変更したりしても不正解にはならないから、自分としての『ハウルの動く城』を見つけるまでけっこう悩みましたね」
一方、次作は「ガンダム・バルバトス」。「ハウル」のときの倍以上の時間がかかったという。
「ダイキャスト製のフィギュアやプラモデルなど、立体としての比較対象物があるので、正確に再現することを目指しました。きっちりと正確に、同じパーツを左右対称に2個ずつ作っていく作業は、『ハウル』とはまったく異なる製作工程でした」
そうして、3作めとして製作したのが、今回の「巨人」だった。
「『巨人』という生物の製作には、『ハウル』と『ガンダム』で覚えた技術を両方使うことになりました。2次元を立体化するというのは、画面の中にいる登場人物を外へ引っ張りだす行為なので、簡単ではありません」
現在は、SNSや勤務先のイベントでも作品を公開しているさいぞうさん。芸術大国・ドイツでも、その技術と表現力は注目を集めはじめている。
「ドイツ人のカップルに、私の作った『ハウルの動く城』を70万円で買いたいと言われたんです。もちろん、断わりましたよ! あくまで作品という意識ですね」
次作としては、大仏を作る予定だというさいぞうさん。設計図は作らないというが、脳裏にはすでに絢爛なフォルムのイメージが溢れているだろう。
取材/文・米倉悠史
( SmartFLASH )