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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』森 進一さんーー「歌はね、本能のままに魂で歌うんだよ」という “金言” で目指すべき道が見えた
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.03.16 06:00 最終更新日:2024.03.16 06:00
「森進一さんとは、兄妹弟子にあたるんですよね?」
これまで何度も質問されてきたことで、今でもそう思っている方がいらっしゃるようですが、森さんが師事していらしたのは、音楽プロデューサーのチャーリー石黒さんで、猪俣公章先生のところには、歌のお稽古に通っていらしていたという関係なので、兄妹弟子とはちょっと違います。
猪俣先生と森さんは、デビュー曲『女のためいき』から始まり、『東京みれん』『港町ブルース』『さらば友よ』、そして、大ヒット曲『おふくろさん』……。日本の音楽史にその名を刻んだ名コンビであり、ともに時代を走り続けた盟友です。
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猪俣先生の歌を生かせるのは、森さんをおいてほかにいらっしゃらないし、森さんのお声を生かせる作曲家は、猪俣先生なんだと思います。
ーーえっ!? わたしですか?
そう言ってほしいという気持ちはありますが、残念ながら、そうではありません。わたしじゃ無理なんです。
猪俣先生が、わたしのために作ってくださった歌は、本来の猪俣メロディからわたしに寄せて書いてくださった歌で、猪俣先生がいちばん書きたかった歌を歌えるのは、猪俣メロディを体現できたのは、やはり森さんが一番と思います。
猪俣先生の弟子ということで、わたしのことも気にかけてくださっていたのだと思います。楽屋で先輩やまわりの方に挨拶するときは、形式的に頭を下げるんじゃなくて、丁寧に気持ちを込めて挨拶をしなさいとか、懇切丁寧にいろいろなことを教えていただきました。
その森さんから初めて褒めていただいたのは、デビュー6年めに出させていただいた星野哲郎先生作詞、猪俣先生作曲の『男惚れ』です。
ご挨拶に伺うと、「いいねぇ」とひと言。続けて「今までで、いちばん合ってるね」と頷き、最後にもう一度、「いいよ」というお褒めの言葉をいただきました。
それから28年……2度めは、2020年11月11日にリリースした、憧れの人、桑田佳祐さんに作っていただいた『ブッダのように私は死んだ』です。
このときは、わたしの顔を見るなり、ひと言ひと言間を取りながら「い・い・ね・ぇ」と笑みを浮かべ、「これまでのように勢いで歌うんじゃなくて、ちょっと鼻にかけて甘えた感じで歌うといいよ」とアドバイスをくださいました。
これまでたくさんの先輩方から、本当に多くのことを学ばせていただいてきました。そのひとつひとつに心震わせ、「よし! わたしも頑張らなきゃ!!」というエネルギーになってきました。
森さんから教えていただいたことも、両手の指では足りないほどありますが、その最高峰が「歌はね、本能のままに魂で歌うんだよ」という言葉です。
スキルは必要で、テクニックも大切です。でもしかし、それを超えたところにあるのが、魂なんだと。魂で歌う歌が本物なんだとおっしゃった言葉です。
その言葉を聞いた瞬間、ストンと胸に落ちてくるものがありました。
そうか、だから森さんが歌う『おふくろさん』は、心が震えるんだ。だから、森さんの歌はすごいんだと感動し、目指すべき道が見えたような気がしました。
裏表がなく、いつでもどこでも真っ正直。言葉によってはドキッとすることもありますが、それは森さんが本音で話してくださるからこそです。
次、森さんに褒めていただけるのがいつになるかわかりませんが、また「いいねぇ」と言っていただけるように、精進あるのみ。有言実行。初志貫徹。
ーー坂本冬美、頑張ります!
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『ほろ酔い満月』が好評発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋