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篠田麻里子『離婚しない男』ドロドロした醜さを内包したエンディングに納得…過激な不倫の果てのリアルな終着点【ネタバレあり】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.03.17 18:00 最終更新日:2024.03.17 18:00

篠田麻里子『離婚しない男』ドロドロした醜さを内包したエンディングに納得…過激な不倫の果てのリアルな終着点【ネタバレあり】

ぶっ飛んだ演技が話題の篠田麻里子

 

 さんざんハレンチな不倫を繰り返し、暴言を連発していた妻を許してのハッピーエンド。伊藤淳史主演『離婚しない男-サレ夫と悪嫁の騙し愛-』(テレビ朝日系)が、3月16日(土)深夜に最終話(第9話)を迎えた。

 

 あれだけ憎しみ合い、いがみ合っていた夫婦が復縁するなんてありえないと感じた視聴者も少なくなかっただろう。だが、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーを生業にしている筆者からすると、逆になんだか生々しいほどの心理の変化が働いた復縁劇に思え、“美しい夫婦愛の復活” の皮をかぶった人間のドロドロした醜さを内包したエンディングに見えた。

 

 

TVerなどの見逃し配信で爆発的ヒット

 

 放送作家・脚本家として30年以上トップランナーとして走り続けて来た鈴木おさむ氏が、引退前の最後の地上波ドラマとして脚本を手掛けた本作。物語は、妻・綾香(元AKB48篠田麻里子)の不倫に気づいた夫・渉(伊藤)が、幼い娘の親権獲得にできるだけ有利な状態で離婚するために、妻の浮気に気づかぬフリをしながら証拠を収集していくというブラックコメディだ。

 

 もっとも話題になっていたのは、篠田演じる妻と、小池徹平演じる不倫相手・マサトによる激しすぎる濡れ場。2人のラブシーンはとにかく濃厚なのだが、それだけでなく「1兆万倍いい~!」「スロウ? or クイック?」といった、ぶっ飛んだセリフの数々がSNSでバズりまくった。

 

 また、TVerなどの見逃し配信でも大ヒットと呼べる記録を樹立。第1話の見逃し配信再生数が、テレ朝の歴代全番組で最速となる54日間で760万再生を突破しており、第1話から第8話の累計は2700万再生を超えている。

 

■【ネタバレあり】なんと復縁エンド!

 

 ここで最終話のストーリーと結末をネタバレありで解説しておこう。

 

 綾香はマサトの子を妊娠しており、渉と離婚してマサトとの再婚を切望していた。しかし、マサトが彼女に近づいて口説き落としたのは、高校時代の同級生だった渉への復讐のためなので、「私との結婚は!?」とすがりつく綾香を突き飛ばして、「するわけねぇだろ、お前なんかと! B・A・K・A、バカ!!」と吐き捨てて去っていく。

 

 その後、マサトは娘を誘拐し、渉が助けにきたところで娘を爆弾で殺す計画を企てるものの失敗。娘は無事に救出される一方、マサトは嫉妬に狂った部下の女性に刃物で刺され、絶命する。

 

 綾香の不倫の決定的証拠を掴んでいる渉は、親権を獲得できる可能性が非常に高い状態で離婚裁判当日が近づく。そんななか綾香は渉の前で瞳を潤ませながら、「裏切ってごめんなさい。苦しい想いさせてごめんなさい。私はバカでした」と謝罪し、殊勝な態度を見せる。

 

 そして、渉が娘に、父と母のどちらと一緒にいたいか尋ねると、娘は「ママとパパと、両方といたい」と答え、号泣しながら3人で抱き合うという展開。

 

 けっきょく渉と綾香は離婚せず、1年ほど時が流れる。綾香のお腹にいたマサトとの子も産まれ、4人家族として幸せにリスタートする姿が描かれて終幕した。

 

 さて、あれだけ不倫の肉体関係に溺れ狂い、罵詈雑言を浴びせてきていた妻を主人公が許してハッピーエンドという結末に、「きれいごとすぎる」「ありえない」と感じた視聴者がいるのも理解できる。ただ、筆者からするとこの結末は、きれいごとではなくむしろおぞましく感じたし、現実的にありえる着地点だとも感じた。

 

■一周回ってなかなかリアルな結末だった

 

 渉側の心理の理解はそう難しくないだろう。綾香の浮気を知りながら、まだ彼女を愛している自分に気づいて苦しむという描写がたびたびあったので、涙ながらに謝る妻を許してしまう心理は、比較的わかりやすい。

 

 だが問題は綾香側。最終話の終盤では、彼女が自分の裏切りや過ちを心底後悔し、深く反省しているように描かれたが、それは綾香がマサトに捨てられてしまった後のこと。

 

 たとえば、マサトの綾香への愛が本物で、彼が部下の女性に殺されることもなければ、おそらく綾香は当初の予定どおりに渉を捨て、そのままマサトと再婚していただろう。綾香の後悔の念や謝罪の言葉は本心からのものだと思うが、それはマサトに捨てられ、マサトが亡くなったという背景ありきの本音なのである。

 

 マサトの言動や生死にかかわらず綾香が改心したのであれば、それは美談かもしれないし、逆に言えばそんな簡単に本音が変わるとも思えないので、ご都合主義のきれいごとに感じただろう。だが、綾香の改心は、マサトとの関係が破綻した後に起こっているのが最大のポイントなのだ。

 

 彼女のなかで “マサトと再婚” という選択肢が消え去った状態で、これまでの言動をすべて覆して心変わりしていることになるので、美談でもきれいごとでもなく、なかなか生々しい人間の業を感じさせる。綾香のなかに無意識で打算があったのかもしれないし、打算などなく純粋に改心したのかもしれないが、どっちにしても不倫相手に捨てられたから元サヤに戻っただけで、人間の醜さが垣間見える。

 

 ちなみに、綾香のように相手に捨てられた後に改心するという事例は、筆者のもとに寄せられた実際の不倫相談でも何度かあったパターン。要するに、あれだけ過激な不倫をしまくって、あれだけ憎しみ合っていたのに、復縁するという、一周回ってなかなかリアルな結末だったと感じたのだ。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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