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若者に拒否されるロックバンドの“楽器破壊”…有名ベーシストも炎上、シーンにおける歴史を専門家に聞く

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.07.13 14:00 最終更新日:2024.07.13 14:51

若者に拒否されるロックバンドの“楽器破壊”…有名ベーシストも炎上、シーンにおける歴史を専門家に聞く

ギター破壊の“元祖”ジミ・ヘンドリックス(写真・時事通信)

 

《あーあ、ベース叩きつけてぶっ壊しちゃった笑笑。お疲れ様でしたー!#SADS》

 

 清春率いるロックバンド「SADS」のベーシストYUTAROが、7月7日に都内で開催されたライブで、ベースをステージに叩きつけ、壊してしまったことを自身のXで報告。

 

《こちらにもアップしときます!笑笑》

 

 と、その際の動画もアップしたが、これが思わぬ炎上を引き起こしてしまった。

 

「ライブ中に機材のトラブルが起きたようで、途中でひとりだけ演奏をやめたYUTAROは、数秒間、自身のベースをチェックしたのち、おもむろにベースを頭上に掲げると、そのままステージに叩きつけました。苛立ちを隠しきれないYUTAROは、その後、マイクスタンドを蹴り飛ばしたのです」(芸能ライター)

 

 

 見ようによっては、楽器への「八つ当たり」のようにも見えるYUTAROの行為には、

 

《今時楽器破壊はロックでもなんでもないだろ》

 

《プロのステージでコレ見せられたら嫌だわ》

 

 など、快く思わなかった人からの批判が殺到。7月9日にこの一件が報道されると、YUTAROは記事を引用して《こんなことになるなんて》と、泣き笑いの顔文字付きで投稿した。

 

 批判が集まる一方で、「残酷な天使のテーゼ」などの作詞で知られる作詞家の及川眠子氏は、この騒動に

 

《自分のものを自分の機嫌で壊せば責められる時代。自分で稼いだ金を自分の都合で男に使うと(私やw)バカと呼ばれる時代。みんな他人の行動や感情に干渉しすぎ。YUTAROくん、お疲れさま。笑》

 

 と、YUTAROの行動を擁護。YUTAROは及川の投稿を引用リポストしつつ、別の投稿では

 

《関係各所の方々へ業務連絡。今ネットで集団リンチにあってまして〆切が多少遅れる可能性がありますがご安心ください》

 

 と、またも泣き笑いの顔文字付きで投稿。これにも、

 

《ダサすぎる》

 

《集団リンチって受け取り方も残念……あれ自分から見せといて「かっこええ」って言われるとでも思った??》

 

 など批判が集まってしまった。

 

 しかし、海外のロックシーンを振り返ってみれば、楽器破壊はパフォーマンスとしておこなわれてきた歴史がある。音楽誌「ヤング・ギター」等で執筆する音楽ライター・尾谷幸憲氏が語る。

 

「楽器破壊のルーツをたどると、1960年代に遡ります。1967年、米国で開催されたモントレー(モンタレー)・ポップ・フェスティバルでは、イギリスのロックバンド『ザ・フー』と、ジミ・ヘンドリックスが出番をめぐって衝突。結果、ザ・フーが先に出て楽器を破壊。ジミ・ヘンは対抗してギターに火を付けるパフォーマンスをおこなったのです。この件以降、ロックシーンにおいて楽器破壊は定番のパフォーマンスとなっていきました。

 

 有名なのが、1974年の米国『カリフォルニア・ジャム』での出来事。ヘッドライナーとして出演したディープ・パープルのリッチー・ブラックモアは、テレビカメラに向かってギターを投げつけ、後にギターアンプを爆破。その火炎と爆風のすごさにリッチーが逃げ出すシーンは伝説になっています」

 

 ギターやベースを破壊するというパフォーマンスは、ジェフ・ベック、ディープ・パープル、レインボーなどに受け継がれ、その後も、ザ・クラッシュ、KISS、イングヴェイ・マルムスティーン、モトリー・クルー、カート・コバーン(ニルヴァーナ)など、様々なアーティストによって繰り返されてきた。

 

「日本では、1985年に『NHK紅白歌合戦』に初出場した吉川晃司が、歌唱後に火をつけたギターを床に叩きつけて破壊。この件以後、吉川は紅白に加え、NHK自体も10年以上、出入り禁止になったとされています。

 

 また、2010年には、世界初の“破壊専用”ギター『SMASH』(5000円)がK’s JAPAN社から発売されました。一方で、2019年にはスウェーデンのエンジニアリンググループSandvik(サンドビック)が、チタン製のボディを3Dプリンターで製作した『絶対に壊れないギター』を制作。100本以上のギターを破壊してきたイングヴェイ・マルムスティーンによる耐久テストをおこなったこともあります」(尾谷氏)

 

 このように、これまでロックの世界では「パフォーマンスの一環」として成立してきた楽器破壊。しかし、YUTAROのケースのように近年はファンの受け取り方が変わってきた。

 

「2024年5月には、アップル社がiPadのCMでピアノやギターなどの楽器やカメラを破壊し、批判が殺到。後にCMは取り下げられています。エコロジーの影響、サスティナブルな現代の考え方などから、今の若者たちは楽器破壊を嫌う傾向が強い。とはいえ、破壊という名のパフォーマンスはロックの伝統芸でもある。それを是とするか否とするかは個々のアーティストの考え方、感じ方次第かと思います」(同前)

 

 現在46歳のYUTAROも、過去の歴史に多分に影響を受けた世代と思われるが、今の時代には受け入れられなかったようだ。

( SmartFLASH )

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