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【フジ・中居問題】「『港会』は残業扱い」「第三者委員は日枝氏が選定の可能性」元フジアナ・長谷川豊氏の指摘を局に直撃
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10時間を超えたフジテレビの再会見
中居正広の女性トラブルを把握しながら1年半も放置し、中居の出演番組の放送を継続してきたフジテレビ。問題の究明のため、第三者委員会による調査が進められているが、人権侵害との見方が大勢を占め、フジは激しい批判にさらされている。元フジアナウンサーの長谷川豊氏も、批判する急先鋒のひとりだ。
長谷川氏は、フジが「フルオープンかつ時間無制限」でおこなった10時間超えの再会見について「終わった」と一蹴。さらに、実業家の堀江貴文氏や弁護士の福永活也氏とYouTubeで対談し、同局に勤めていたころの自身の“被害体験”の告白までおこなった。
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同局の実情について、あらためて長谷川氏に聞いた。
■「港会」は勤務表にあった?
「週刊文春」によると、前社長の港浩一氏は、芸能事務所の経営者らを招き、定期的に「港会」と呼ばれる会合を開いていた。そこには、複数の女性アナウンサーが“接待要員”として集められたという。彼女らにとって「港会」への参加は業務の一環であり、それは勤務表にも記載されていたとされる。
この「港会」について、1月27日の再会見で問われた港氏は「接待という認識はなかった」と説明した。しかし、長谷川氏はこう語る。
「港氏が共同テレビに出向した後、復権を狙って少なくない頻度で会合を主催し、接待のために女性アナウンサーを動員していたと聞いています。フジは組織図に『アナウンス室』という記載がない、唯一のキー局であり、アナウンサーには上からの命令を断る権限がありません。勤務といわれれば、女性でも男性でも参加するしかないんです。
フジでは、私が所属した2013年当時、残業代が60時間まで支給されており、『港会』は残業として扱われていた可能性があります。後輩の話によると、大手芸能事務所の社長や経営者らが参加していたようです。『港会』は、共同テレビに飛ばされた港氏が、大手プロダクションに太鼓判を押してもらい、フジテレビに返り咲くための一手段だったのかもしれません」
フジに「『港会』への参加は勤務表に組み込まれていたか」と質問したところ、「勤務の詳細に関してはお答えしておりません」という回答だった。
さらに長谷川氏は、自身が勤務していた当時、上司から女性アナウンサーへのセクハラが公然とおこなわれていたとし、衝撃的な出来事を明かした。
「ある女性アナウンサーは、すでに他界した役員のひとりにトップスの下から手を入れられ、胸を触られるセクハラを受けました。その役員は、新幹線のなかでゲラゲラ笑いながらアナの胸を触り、『お前、胸ねえなぁ!』と暴言を吐いていました。私は日記をつけることを習慣にしていて、そのアナウンサーが『かわいそう』と明確に記しています」
筆者は再会見の質疑応答で、港氏らに「過去に、女性社員や女性アナウンサーに対するセクハラや、性加害を見聞きしているか」と尋ねた。するとフジ側は、「女性社員にはそのような例があり、(加害者を)処罰したこともあるが、女性アナウンサーに関しては聞いたことない」と答えた。しかし、長谷川氏の証言や週刊誌報道が続くなか、経営陣の言葉には疑念を禁じ得ない。
■被害者女性は“悪役”扱いされていた?
同じく再会見で、筆者は「中居氏が問題を起こし、犯罪者である可能性があるなら、ほかの女性社員やアナウンサーが被害にあわないように社内で情報共有・注意喚起をしたのか」と、幹部らを追及した。それへの返答は、「犯罪者とは決まっていないので、(上層部以外で情報共有は)とくにしなかった」というものだった。
しかし長谷川氏によれば、トラブルの話は事件直後に、一部の社員の間で広まっていたという。
「複数の後輩たちから聞きました。それに、中居氏はフジに『行為は合意の上だった。女性は精神的に不安定だったので、示談金を払って場を収めた』との内容を伝え、1月17日の1回めの会見まで多くの社員たちが『女性側に問題がある』と認識しているようでした」
これが事実であれば、フジは情報共有どころか、中居氏の問題行為を隠蔽し被害者に“悪役”を押し付けたことになる。
当初、社内で、被害者女性が精神的に不安定だったという認識があったのか。フジに質問すると、「当時の当社の対応については、現在、第三者委員会で調査中でありますので、回答は控えます」とのことだった。
また、被害者女性を中居氏に紹介したとして、編成幹部社員のA氏の存在が取りざたされている。長谷川氏は、A氏によって接待に誘い出された女性は、ほかにもいると指摘する。
「Aは、中居氏など芸能人との豊富な人脈を評価され、『次の次の社長になる』といわれていました。Aは被害女性以外にも、ほかの女性アナウンサーや他局の女性たちを、権力のある芸能人との食事会に誘い出していたと聞いています。報道を見ても、あまりに慣れたやり方をしているので、ほかにも被害者がいる可能性があります」
■日枝氏が「第三者委員会」メンバーを任命した?
社会やステークホルダーから厳しい目が向けられるなか、フジは第三者委員会を設置した。しかし、そのメンバーについて長谷川氏は異論を唱える。
「今回の第三者委員会の委員は、日枝氏が選出した可能性があります。第三者委員会の設置は1月23日の臨時取締役会で決まったようで、その場に日枝氏が同席していることが確認されています。フジテレビの取締役は日枝氏のイエスマンばかりですから」
フジによると、委員は日弁連のガイドラインに従って、3名の弁護士を選任したという。
同ガイドラインは委員について、公正性や中立性の確保のため、企業と利害関係がない、適切な専門知識を備えた人物を選ぶことを求めている。ここでフジの委員を見ると、なぜ全員、弁護士なのかという疑問が生じる。被害女性が心身の療養のために入院したのであれば、医師やカウンセラー、ジャーナリストなども有識者として加わっていてもおかしくない。
日弁連に問い合わせると、「ガイドラインはあくまで指針であり、守らなければならないという規定ではない」とのことだった。もちろん、ガイドラインに沿っていないからといって罰則が科されるわけではない。
しかし、北村・松谷・きさらぎ法律事務所(東京都)の福本悟弁護士は、フジの第三者委員会に違和感を覚えるという。
「第三者委員会を設置したという点は評価できます。しかし、医師やジャーナリストなど、さまざまな分野の専門家が参加し、意見を出す形のほうが適切でしょう」
第三者委員会の調査では、過去に中居氏の事件に類似した事件がなかったかを尋ねる、社員アンケートがおこなわれる(退職した社員は含まれない)。ただ長谷川氏によると、「アンケートは匿名ではなく、原則的に加害者の名前を含め、実名記載が必要」という。そもそも、性被害はきわめてデリケートな問題であり、すべてを明かして答えたい、という被害者はごく少数のはずだ。
「委員は日枝氏が選んだ」「アンケートは実名回答」――長谷川氏が主張するこの2点について、フジに取材した。まず、前者についての回答から。
「この第三者委員会は、日本弁護士連合会が策定した企業等不祥事における第三者委員会ガイドラインに準拠しており、利害関係を持たない弁護士のみで構成されております。各委員の方々はフジ・メディア・ホールディングス及び当社との間に利害関係を有しておりません。かつ、過去に不正調査や調査委員会の経験が豊富で、社外役員を歴任して内部統制・ガバナンスを監督する経験も有しており、専門性を備えております。
また、第三者委員会はフジ・メディア・ホールディングスと当社の『取締役会』における決議で設置されており、任命したのは『取締役会』になります。竹内氏(※委員長を務める竹内朗弁護士)は、その取締役会の席上で、日枝氏と一度だけ同席しておりますが、それ以外に委員3名が日枝氏と会ったことはございません」
ジャーナリストや女性の人権保護団体など、識者が入っていないことについても尋ねたが、これに対する回答はなかった。
なお、第三者委員会は2月10日、外部からも通報が可能な「社外関係者向けホットライン」を設置。これに関しては匿名で回答ができるようだ。
次に、アンケートの実名回答については「(1月30日に)『第三者員会の調査における調査対象者保護』についてお知らせしています」との返答だった。その文書を見ると、調査協力者に対し「不利益な取扱いをしない」「不利益な取扱いをした場合、取締役会会議に違反する重大な不適切行為と認める」と記されている。しかしこれでは、どんな行為が「不利益な取扱い」になるのかわからず、そもそも「実名回答」か否かの答えになっていない。
果たして長谷川氏が指摘した問題の数々は、調査結果で明らかになるのか。3月末の第三者委員会の報告がまたれる。
取材・文/深月ユリア
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