エンタメ・アイドル
生島ヒロシ、元所属タレントが「セクハラ被害」決意の実名告発…エスカレートする “親愛の情”、突然の電話で「気持ちいいか?」

1月31日、自宅からタクシーに乗り込む生島ヒロシ
「会長のことがすごく嫌いで、絶対に許せないというわけではありません。事務所にもお世話になっていましたし、書籍の出版もさせてもらったりと感謝の気持ちは大きいです。ただ、それと会長がやったこととは話が別。やはり、私に伝えられることがあれば、話す意味はあると思っています」
女性はまっすぐ前を向き、決意を語った。彼女の名はナガセサエコさん(54)。現在の肩書きは “ビューティデザイナー” で、美容に効果的なストレッチやエクササイズなどを指導し、都内でサロン経営や健康関連の事業もおこなっている。
かつては永瀬冴子・長瀬サエコの名義で知られ、10代の終わりからモデル業を開始し、CMや女性誌などで活躍。1990年代後期以降は、ミュージシャンとしての活動も続けている。
過去に彼女は、フリーアナウンサーの生島ヒロシ(74)が会長を務めていた生島企画室に所属していたことがある。生島は1月27日、コンプライアンス違反を理由に、TBSラジオでのレギュラー2番組を突然降板。同時に無期限の活動自粛を発表し、世間に衝撃をもたらした。
【関連記事:“無期限自粛”生島ヒロシ、元事務所の所属ミュージシャンが語る「ジャイアンそのもの」パワハラ・セクハラの中身】
その生島から、ナガセさんは同社所属時代にセクハラの被害を受けていたというのだ。今回、その衝撃的な事実を明るみに出すため、本誌に口を開いた。
「私が生島企画室に籍を置いたのは2011年から2017年9月のこと。それまで所属していた事務所が社長の体調不良により存続が難しくなったため、急遽、移籍先を見つけなければならなくなりました。自ら履歴書を書き、売り込みをかけたうちの1社が生島企画室でした。他社に先駆けて連絡をくれたのが同社です。
ナガセさんが生島と同じ法政大学出身というよしみもあって、生島から熱心に口説かれ、「他社には俺から断わりを入れるよ」とまで言われたという。
生島の強い推薦もあり所属が決まったナガセさん。生島にとってとくにお気に入りの存在だったのだろうか。やがて生島のナガセさんに対する言動には、“公私混同” ぶりが目立つようになった。
「生島企画室に入ってから間もなくのことです。会長と家が近所だったので、よく電話がかかってくるようになりました。『サエコ、今は家にいるの? だったら来ない?』と、お気に入りのファミレスに呼び出されることがたびたびありました。
『なんでも好きなものをお食べ』と言ってくれるのですが、たまたま私は食事のタイミングではなく、コーヒーだけのときが多かったですね。
そのうち、会長が通うフィットネスジムに呼ばれ、『一緒にトレーニングしないか?』と言われたりもしました。私はやんわりと断わって、見学だけしていたこともあります」
彼女は、生島が体を鍛える様子をかたわらで黙って見ていたという。
「会長はライザップのCMに出ていたので、その間は(同社の)恵比寿のジムに通っていて、『サエコも一緒に来い、応援してくれ』と言われたことがあります。
ウエイトリフティングのマン・ツー・マン指導を受ける会長を、真横で励ましながら眺めていました。冷静に考えれば、奇妙な構図ですよね。
会長はナルシストだと思います。要望を拒めば機嫌が悪くなりかねないし、会長の意見には絶対服従という空気があって、断わりづらかったんです。
行きつけのジムにはプールもあり、『お前も泳ぐか?』と言われると『さすがにそれは……』と咄嗟にかわし、会長が泳ぐ姿をじっと見守るということもありましたね。
当時はどこまでが仕事なのか、判断が難しかったので、できるだけ断わらないようにはしていましたが……」
そして、2016年の春から夏にかけて決定的な事件が起きた。
「仕事で一緒になると、会長と帰る方向が同じなのでハイヤーで送ってもらっていました。その車中で、会長は私の手を握ってくるようになったのです。運転手もいますから、ちょっとおかしいなとは思っていました。
ただ、初めは何気ない感じで、会話の内容も普通だったので、そこまでの抵抗感はありませんでした。会長は人前でハグするようなフランクな人ですし、挨拶の一環かなと思うようにしていました」
生島は拒絶されないのは受け入れられていることだと思ったのか、ナガセさんへの親愛の情を示す行為はさらにエスカレートしていった。
「手を握る行為が、いつしか私の手を会長の股間に持っていくようになりました。そのとき、『サエコはいい女だね』などと言われました。
でも、『それは会長、さすがにちょっと……』といなしましたが、会長は懲りてない様子で、その後も何度か同じ行為をされました」
さらに、車中での “セクハラ行為” を受けて帰宅したある日、生島からいたく興奮した様子で電話がかかってきたという。
「『気持ちよくなってきちゃった。サエコもやってくれ』と……。会長は自分で自慰行為をしているみたいで、私にも同じことを求めてきたのです。何が起きているのかと驚きました。
でも、一方的に電話を切ったり、『やめてください』と言ったら、後々の仕事に影響が出そうな気がして、淡々と受け流すしかなかったんです。
『気持ちいいか?』と言われ、『ええ、はい』と適当に受け答えをしました。交際相手でもないですし、さすがに感じる振りなんてできません。だからって、黙っているだけでは会長が興醒めしてしまい、その後に何を言われるか、されるかわからない。突然の事故に遭ったみたいな感じでした」
ナガセさんは自分が我慢すればいいと、このことを公にすることはなかった。生島もさすがにやりすぎたと思ったのか、卑猥な電話はこの一度きりだった。
「後日会ったときは、何事もなかったかのように接してきたので、私も内心ホッとしました。記憶って、忘れようとすれば忘れられるんです。
事務所を辞めたのは、この一件が理由ではありません。自分の希望に沿う仕事があまり得られなくなったのと、ちょうどハワイでの仕事も決まったのでリセットすることにしました。挨拶に出向いたときは、会長に『俺のラジオは向こうでも流れてるから聴いてくれよ』と言われました」
なぜ、このタイミングで告発に踏み切ったのか。ナガセさんはこう語る。
「セクハラ行為があった後は、会うたびに繰り返されるのかと悩みましたし、心に刻まれてずっと引っかかっていました。ただ、スタッフやマネージャーに相談することはためらいました。私のマネージャーは会長の弟さんでしたから。
でも、フジテレビの騒動などをきっかけに、やはり『あったことはあった』と声を上げなければ変わらない、これから芸能界を目指すコたちのためにも、私が経験したことを明らかにしなければいけないという気持ちになりました。許されないことは1回でもやってはならない。それは、会長本人が真摯に受け止めるべきです。
私がされたような行為でトラウマを抱えたり、相手に応えないと仕事がもらえないのではと不安に思ったりするコはいるはず。体をさわられることで嫌悪を感じたり、言葉だけで傷つく場合もあります。たしかに、その線引きは主観的かもしれません。でも、だからこそ、この問題は見過ごされがちなんです」
■弁護士の見解は
一般的に、性暴力は立証が難しいとされる。性犯罪被害に詳しい川本瑞紀弁護士は、「被害者の言葉を伝える通訳」を自認し、問題に取り組んでいる。ナガセさんの一件について問うと、まず「民事訴訟として賠償請求が成り立つ事例」との見解を示す。
「刑法の性犯罪に関する部分が改正され、2023年7月13日に施行されました。ナガセさんの件は、改正前の刑法ですから強制わいせつ罪にあたるかどうかを検討することになります。
当時、強制わいせつ罪の時効は7年ですから、現在はすでに刑事事件としては時効にかかっています。時効が完成する前だったとしても、ナガセさん自身は自慰行為をさせられるまでに至っていないので、検察官は不起訴相当と判断する可能性が高いです。
民事のセクハラであれば、生島さんの電話の内容からしてナガセさんが行為に応じなくても不法行為が成立しますが、こちらも3年で時効を迎えています。ただ、時効が完成する前だった場合、被害者供述が立証の軸になるので、被害者の証人尋問が勝負になります。実際、証言を軸に勝訴している被害者は少なくありません。
性犯罪や性暴力の被害者は、被害に遭ったことすら言えないという問題がある。被害の立証には被害者の精神的負担が大きく、容易でもない。相手が有名人であれば、裁判自体がマスコミで騒がれ、彼女自身の活動の支障になるでしょう。ナガセさんもどこかでそう諦観し、これまで黙っていたのかもしれません」
セクハラ加害の大半は「権力を持つ者が嫌がる相手に無理強いする」と川本弁護士。
「セクハラは『嫌がる相手が断わることができないほど偉くなった自分』に酔っているパターンが多いです。しかし、生島さんはジムでのトレーニングを見てもらったり、車内で手を握るなどして、徐々にナガセさんとの距離を詰めているのが特徴です。
生島さんは恋愛気分だったのだと思います。でも、恋人同士だって、そう容易にテレフォンセックスに持ち込めるものじゃないですよね。生島さんも、自分より立場が上の人をジムに呼びつけたり、手を握ったりしないでしょうから、ナガセさんが断われない立場であることは理解していると思います」
■“上納” に近い場面に遭遇したことも
ナガセさんは、芸能界の一部に存在する悪習についても警鐘を鳴らす。デビュー当初、いわゆる “上納” に近い場面に遭遇したことが何度かあるという。
「かつて、ある大手事務所に所属していたころのことです。クライアントを交えた食事会があると、私は一次会で帰らされていたのですが、交代でやって来る女のコたちがいました。マネージャーが言葉たくみに所属をちらつかせて集めた、カラオケなどの二次会や三次会につき合うための芸能人志望のコたちです。そういった様子を間近で見て、いっそう注意深くなりました」
2月21日、本誌は所属していた生島企画室にセクハラの事実を問い合わせた。同日、同社からは生島の退所と、社名を「FIRST AGENT」に変更することが発表された。本誌にも同社よりその旨の連絡があり、生島の代理人弁護士から「ご照会のありました不適切な行動につきましては、依頼人においていずれも思い当たることがありません。しかしながら、依頼人としては、過去に知己のあった方から苦言を呈されるということは、わが身の至らなさゆえのことと深く内省しております」との回答があった。
すべてを告白した後、ナガセさんは過去を振り返りながらこう思いを吐露した。
「子供のころからバレエを習い、表現をすることで人を感動させたいと思っていました。ドラマや映画を観るうちに芸能界への想いが募りました。当時の私のように、芸能界に夢を持っている若い人たちをこれ以上、失望させたくないんです。だから、ずっと人には話せずにいましたし、心の中にしまっていたこの件を表に出しました。
今回、話せてよかったと思います。胸につかえていたわだかまりも解けました。もし同様の被害を受けて悩んだりしている人がいたら、思い切って周囲に打ち明けるのも選択肢のひとつだと思います。今は時代が変わったので、耳を傾けてくれる人はきっといるはずです」
はたして、旧態依然とした日本の芸能界は改善に向かうのか。ナガセさんが望むようなバージョンアップはなされるのか。今まさに、ターニングポイントが訪れている。