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光宗薫 部屋に引きこもって描いた日々が「画家」としての出発点「贅沢しなければ絵だけで生活できます」

光宗薫。自作を背景に(写真・保坂駱駝)
テレビや映画に活躍の場を持ちながら、異業界に進出した人気者たち。光宗薫(31)は「元AKB48」という肩書きさえ不要なほど、画家として実績を確立しつつある。才能査定バラエティ『プレバト!!』(TBS系)でも折紙付きのその画力は、まったくの独学で身につけたという。
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「美大卒の母が、彫刻や立体美術をやっていました。振り返ると、その影響は大きかったですね。子供のころは、教育方針でテレビゲームは与えられず、ぬいぐるみやたくさんの絵本に囲まれて育ちました。母と一緒に絵を描くことは、遊びだった気がします。ゲームがない代わりに、2歳上の姉を相手に、紙に絵を描いてはストーリーを展開させる、その真似事をしてました」
学校でも、「授業中は落書きばかり」だったと語る。
「小学校低学年ではウサギの『ペトちゃん』、中学生では丸坊主の『ハゲタン』というキャラクターを作って、絵のなかで動かしていました。2018年以降は怪物の『ガズラー』、がずちゃんですね(笑)。どのキャラにも自身を投影させていると思います」
さらさらと、その場でキャラを描いてみせる光宗。繊密で妖気的なボールペン画で画境を開いたが、心豊かに育ったゆえの童心が、キャラには垣間見える。
「20歳を迎えるころに摂食障害になり、実家の自室に1年ほど引きこもってました。芸能活動でいつも自分を見られ、評価されているという重圧があり、心身のバランスを崩してしまったんです。そんな自身から逃れるため、感情の整理が必要でした。といっても、ストレスの発散の仕方がわからず、何をする気も起きないなか、絵だけは描けたんです。ボールペン画を選んだのは、たまたま無印良品のペンが家にたくさんあったのと、ものすごく時間がかかる細かい作業だったから。絵に没頭している時間は、我を忘れていられましたから。絵には、自分の嫌なところや欠点など、性格が出てしまうと思うんです。私は執着心が強く、何ごとにも集中しすぎてしまう傾向があります。しかし、絵を描いてそれを褒めてもらえたことで、徐々に芸能活動にも復帰できました」
女優の仕事としては、『闇金ウシジマくん Season 3』(2016年・テレビ東京系)を想い出深い作品に挙げた。
「それまでのシリーズを映画やドラマで観ていましたから、すごく嬉しかった。山田孝之さんや中村倫也さんら、すごいキャストの方々に囲まれ、勉強になりましたし、クランクアップではつい泣き出してしまったほどです。2018年からのおもな収入源は、絵の販売です。2カ月かけた作品が、1カ月分の食費にもならない……なんてこともありましたけど(笑)。そのころは貯金をすっかり切り崩してしまいました。今は贅沢さえしなければ、絵だけで生活できています。最近は油画や水彩画で、よくセミをモチーフに描いています。なぜセミが好きかというと、単純に見た目が強そうでカッコいいから(笑)」
表現者としての強い自覚と、時折見せるひょうきんな面が矛盾なく一体化しているのは、光宗自身も描く絵と同じである。
みつむねかおる
2011年にAKB48に加入し、翌年まで在籍。2011年ごろからボールペン画を独学で描き始め、これまでに5度、個展を開催している
取材/文・鈴木隆祐