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坂本冬美×早見優×松本伊代“伝説の歌姫”が亡くなって20年「夜の宿では恋バナを」親友3人が本田美奈子.さんを語り尽くす!

本田美奈子.さんの思い出トークで盛り上がる3人(写真・福田ヨシツグ)
「おはよう、美奈子ちゃん。今日もがんばって来るね!」
いまも毎日、自宅の部屋の棚に飾られている本田美奈子.さん(享年38)の写真に向かって手を合わせているという、坂本冬美のモゴモゴSPECIAL第9弾は――。
本田美奈子.さんとは事務所の先輩後輩という松本伊代と、ミュージカル共演者の早見優の2人。生き方そのものがメッセージであり、ドラマだった本田美奈子.さんを偲び、その魅力を語り尽くす。
坂本 美奈子ちゃんが急性骨髄性白血病で亡くなって、もう20年なんですよね。
松本 頭ではわかっているんですけど、まだ信じられない、信じたくない思いが気持ちのどこかにあって。「美奈子!」って呼んだら、返事をしてくれそうな気がするんですよね。
早見 いつもの、あの最高にかわいい笑顔でね。
坂本 伊代さんと美奈子ちゃんは、事務所の先輩後輩だったんですよね。
松本 そうです。私が1981年10月デビューで、美奈子が1985年4月だから、私が4年先輩になるのかな。
坂本 この世界も、いまはだいぶんゆるくなりましたけど、当時は上下関係がものすごく厳しくて、4年といえば天と地ほどの差がありましたよね。
早見 昭和ルールじゃないですけど、私は1982年4月のデビューだから、伊代ちゃんの半年後。それでも当時は、伊代ちゃんじゃなくて伊代さんとお呼びしていましたから(笑)。
坂本 ということは、美奈子ちゃんも?
松本 私のことは、伊代さんでしたね。
早見 伊代ちゃんは?
松本 事務所の先輩たちと同じように、美奈子って呼んでいました。
坂本 伊代さんは、初めて美奈子ちゃんと会ったときのことを覚えていますか。
松本 まだ、美奈子がデビューする前に、事務所で顔を合わせて。みんなが知っている美奈子より、ちょっとだけふくよかだったかな。
坂本 ふくよか!? 美奈子ちゃんが?
松本 ちょっとだけですけどね(笑)。お仕事を始めてから、どんどんシャープになっていって。でも、「伊代さ~~~~~ん」と両手を振りながら小走りで駆け寄って来るところは、ずっと変わらなかったですね。
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■新人のころの目標の歌手は和田アキ子さん
早見 冬美ちゃんは、どこで美奈ちゃんと?
坂本 レコード会社の宣伝担当の人が一緒で、「美奈子と冬美は絶対、合うと思うから」と、食事の場をセッティングしてくれたのが始まりでした。
松本 わかるような気がする。最初から気が合ったでしょう?
坂本 最初から「冬美ちゃん」「美奈子ちゃん」でした。同じステージに立つことはなかったし、会って話をするのも年に一度か二度くらいでしたけど、馬が合ったというか、息が合ったというか……。
早見 バイブスが合った?
坂本 そう、それです(笑)。
早見 お仕事で一緒になったことはない?
坂本 ドラマと旅のロケ番組で一度ずつ、『関口宏の東京フレンドパークII』(TBS系)で一度。その三度だけです。
松本 『フレンドパーク』? 冬美ちゃんと美奈子が!?
坂本 はい。色違いのジャージと、おそろいの根性鉢巻で(笑)。
早見 見てみたかったなぁ、2人の根性鉢巻姿(笑)。
松本 かわいかったろうな。いいなぁ、うらやましい(笑)。
坂本 でも、わたしのほうが2年後にデビューしたので、アイドル時代の美奈子ちゃんの生の歌は聴いたことがないんです。
早見 美奈ちゃんは、最初から歌がうまかったよね。
松本 顔はかわいいのに歌がものすごくうまくて、そのギャップがすごかった。
早見 声にも深みがあって、もともと演歌志向だったというのを聞いて、あぁそうかと思ったのを覚えています。
坂本 演歌は美奈子ちゃんのお母さまの影響だったみたいですね。
早見 美奈ちゃんは、和田アキ子さんも好きだったんですよね。
坂本 えっ、和田アキ子さんって……あの和田アキ子さんですか? それは初めて聞きました。
早見 新人のころって「好きな歌手は?」とか、「目標とする歌手は?」とか聞かれるじゃないですか。で、ほかのコたちが「松田聖子さんです!」「山口百恵さんです!!」と答えるなか、ひとりだけ「和田アキ子さんです!」と言ったのが、すごく印象に残っているんですよね。
坂本 美奈子ちゃんが……新人のころに……そうですか……それは……衝撃です。
松本 でも、美奈子ならそうかもねと、ある意味、納得できる感じもしますよね。
坂本 アイドルとしてデビューしたけれど、いつか骨太の歌手になりたい、それを目指すという強い思いがあったんでしょうね。
早見 それがあったから、ロックバンドMINAKO with WILD CATSを結成したときも、ミュージカルに進んだときも、クラシックアルバム『AVE MARIA』をリリースしたときも、“美奈ちゃんなら、そうだよね”という感じはありましたよね。
坂本 優さんと美奈子ちゃんが仲よくなったのはいつからですか。
早見 1997年です。ミュージカルの仕事で一緒になって3年間、楽屋が隣同士だったので、そこでアイドルの先輩後輩から、“優ちゃん”“美奈ちゃん”の関係になりました。
松本 私もそっちがよかったなぁ(笑)。
早見 きっかけは覚えていないんだけど、きっと私が「優ちゃんでいいよ」って言ったんでしょうね。そこからは「優ちゃん」とか「優ちん」とか、そんな感じで呼ばれていましたね。
松本 そうか。私が「伊代ちゃんでいいよ」って言えばよかったんだよね(笑)。
坂本 1997年のミュージカルって、美奈子ちゃんがエポニーヌを、優さんがコゼットを演じられた『レ・ミゼラブル』ですよね。わたしその舞台、拝見しています!
早見 え~~~っ!? ホントですか!?
坂本 はい。レコード会社の宣伝担当の人と一緒に、観に行かせていただきました。
早見 いや……あの……なんて言っていいのか……。下手くそコゼットですみません(苦笑)。
坂本 とんでもないです。清楚で素敵なコゼットさんでした。
松本 真っ白な衣装がすごく印象的で、優ちゃんにとっても似合っていたよね。
坂本 そうです、そうです。忘れっぽいわたしでも、鮮明に覚えているくらい素敵なコゼットさんでした。
早見 いや、いや。それはちょっと褒めすぎです(笑)。
■練習する姿を他人にいっさい見せない
松本 美奈子のエポニーヌもよかったよねぇ。
早見 エポニーヌは最後、好きな人に抱きかかえられながら、その腕のなかで亡くなっていくんですけど、美奈ちゃんが歌うピアニッシモの声がすごくきれいで。どうやったらあんな姿勢で、あんなにきれいな声が出せるんだろうと、毎回感心していました。
坂本 相当きついトレーニングで、腹筋と背筋を鍛えていたんでしょうね。
早見 だと思うんですけど、美奈ちゃんって、トレーニングしている姿をほかの人にはいっさい見せなかったので、どんなトレーニングをしていたのかは謎なんです。
坂本 わたしは、美奈子ちゃんのロングトーンがとっても印象に残っていて。あのほっそい体で、どうして最後まであんなにきれいな声が出せるのか。よっぽど過酷なトレーニングをしているんだろうなと思っていたんですけど、そこは絶対に見せないんですよね。
松本 たしかに、トレーニングしている美奈子を見た記憶はないですよね。
早見 でしょう? 『レミゼ』の稽古でも、朝にみんなで発声練習やストレッチをするんだけど、美奈ちゃんは一度も来たことがなくて。「なんで来ないの?」って聞いたら「朝、弱いんだよねぇ」と、ヘヘっと笑っていて(笑)。
松本 それなのに、本番であんなに声が出せる美奈子は、本当にすごいと思う。
坂本 楽屋で声を出していたとかは?
早見 隣だったから、発声練習をしていたら聞こえるはずなんですけど、一度も聞いたことがないんですよねぇ。
松本 すごいな、美奈子。
坂本 声が深くて情があって、ロングトーンはまだなの? まだ続くの? と、聴いているこっちが驚くくらい何十小節も伸びて。声がかれるとか、苦しそうに聞こえるということがいっさいなく、最後の最後まできれいなまままったくブレないのに、本番前に発声練習をしていないとしたらすごすぎますよね。
早見 喉を大切にしたいからと、楽屋ではいつもタオルを首に巻いているのに、発声練習らしきものはクラシックで学んだという「ん~~~」と、長く声を出すやつだけでしたね。
松本 美奈子がいつもやっていたやつだ。
坂本 美奈子ちゃんは本番が終わった後もやっていましたよ。
松本 えっ!? 本番前だけじゃなくて?
坂本 「何やっているの?」って聞いたら、「いっぱい喉を使っちゃったから」と言って。美奈子ちゃんいわく、クールダウンの効果もあるそうです。
松本 美奈子は勉強熱心だったから、いろんなことを知っていたんですよね。
早見 太陽みたいに明るくてお酒も好きで、しかも素顔はかわいいんだから、これはもう立派に反則です(笑)。
松本 美奈子とは一緒にゴルフに行ったり、お泊まりしたりもしたんですけど、そういうときの美奈子がまた最高にかわいくて。
坂本 そういうときって、何を話すんですか?
松本 お互いまだ若かったし、独身だったので、恋バナとかもしていましたね(笑)。
早見 美奈ちゃんが恋バナ?
松本 恋バナに限らず、美奈子はなんでもストレートに聞いてくるし、「いま、これで悩んでいるんです」と、相談しに来るんですよ。そんなにしょっちゅう会っていたわけではないけど、そんな美奈子がかわいくて。
坂本 それは、相手が伊代さんだったからですよね。
松本 相談されても、うまい答えを返してあげられなかったんですけどね(苦笑)。
早見 ウソ、ウソ。私が何か相談すると、ちゃんといいアドバイスをしてくれますから、きっと美奈ちゃんも伊代ちゃんを信頼して相談していたはずです。
松本 ない、ない(笑)。
■11月3日は美奈ちゃんを近くに感じられる日
――お元気だったら、2025年がデビュー40周年で58歳です。
早見 美奈ちゃんが残してくれた音楽祭『LIVE FOR LIFE 音楽彩』で、毎年11月3日に美奈ちゃんのお母様にお会いしているので、生きていたらこんな感じなんだろうなというのは想像できますけど……でも、私のなかにいる美奈ちゃんと変わっていないと思います。
松本 きっとあのまんま、ですよ。目をキラキラさせて、ハキハキと元気で、美奈子は美奈子のままだと思う。
坂本 美奈子ちゃんとは同じ1967年生まれで、見た目も中身もぜんぜん違いますけど(笑)、こんな感じで歳を重ねているんだろうなと想像してもらえたらうれしいですね。
松本 私ね、ときどき考えるんですよ。もしも美奈子が元気でいてくれたら、一緒に何がしたいかなぁって。一緒に歌ってくれるかなぁとか(笑)。
早見 それ、私も考えます。で、考えだすと、美奈ちゃんと一緒にあれもやりたかった、これもやりたかったと、いろんなことが次々に浮かんでくるんですよね。
――先ほど話に出た本田美奈子.さんが残した音楽祭『LIVE FOR LIFE 音楽彩』が、2025年も11月3日に開催されます。
松本 毎年、11月3日が近づくと思いがどんどん強くなって、当日の朝は “美奈子に会える” という気持ちになってワクワクしちゃうんですよね。
早見 鏡のなかの自分は、 “あら?” という感じなのに、美奈ちゃんはあのころのままで。ん~~~~という気持ちもあるんですけど(苦笑)。11月3日は、美奈ちゃんを近くに感じられる大事な日です。
坂本 今年は仕事の都合で参加できないんですけど、わたしにとっても11月3日は特別な日です。
松本 いいんですよ。大事なのは、美奈子のことを思う気持ちですから。
坂本 そう言っていただくと、少しだけ気持ちが軽くなります。美奈子ちゃんの代わりにはなれないけど、同い年のわたしを見て、美奈子ちゃんのことを思い出していただければうれしいです。
まつもといよ
1965年6月21日生まれ 東京都出身 1981年に『センチメンタル・ジャーニー』で歌手デビュー。日本レコード大賞新人賞をはじめ、多くの音楽新人賞を受賞。以降、歌手活動のほかにバラエティ番組などで活躍。10月4日、5日に、東京・大手町三井ホールにて、『松本伊代Live2025“Journey“$301Cand Sweet Sixty$301C』を開催する
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など、幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『浪花魂』が好評発売中
はやみゆう
日本生まれ。幼少期をグアムとハワイで過ごす。1982年『急いで!初恋』でデビューし、『夏色のナンシー』『PASSION』などのヒット曲を持つ。2024年には自ら作詞を手がけた新曲『DISCO de DISCO』をリリース。近年はジャズにも挑戦し、新たな音楽の可能性を広げている
写真・福田ヨシツグ
取材&文・工藤 晋
スタイリスト・小泉美智子(坂本)
ヘアメイク・岡崎じゅん(坂本)、井原結衣(松本)、伊藤こうこ(早見)
衣装・スカート/ FURUMAU、サンダル/ASH(坂本)、衣装・KEITAMARUYAMA(松本)