
生前の本田美奈子.さんの写真をバックに撮影
時代を彩ったトップアイドル、松本伊代、早見優と、 “演歌の女王” 坂本冬美を結ぶのは……歌に命を捧げた太陽の子、本田美奈子.さん(享年38)だ。昭和の音楽シーンを振り返りながらの女子トークをお届け!
ーー松本さんが『センチメンタル・ジャーニー』で、歌手デビューしたのは1981年。キャッチフレーズは……。
松本「みんなの妹」です。
坂本 えっ!? そうなんですか。わたしは「トシちゃんの妹」だと思っていました。
早見 私も、そのイメージが強いけど。
松本 確かに「トシちゃんの妹」としてデビューしたんですが、キャッチフレーズは「みんなの妹」だったような。
ーーキャッチフレーズが2つあったみたいです。ひとつは「田原俊彦の妹」で、もうひとつは “みんなの” ではなく、「瞳そらすな僕の妹」です。
松本 恥ずかしい〜〜(笑)。
坂本 でも、事務所が違うのに、なんで「トシちゃんの妹」だったんですか。
松本 『たのきん全力投球!』(TBS系)というバラエティ番組のなかに、ドラマコーナーがあって。トシちゃんの妹役のオーディションに合格して、 “妹” としてデビューさせていただいたんです。
ーー早見さんのキャッチフレーズは、「少しだけオトナなんだ」でした。
早見 そうそう。今はもう、だいぶオトナになっちゃいましたけどね(笑)。
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■美奈子コールの次に多いのが冬美コール
ーーそれで、本田美奈子.さんが「あなたと初めて♪」で、坂本さんが「もぎたて演歌」です。
早見 “フレッシュ” じゃなく “もぎたて” って?
坂本 アイドルではなく、演歌なので(苦笑)。
松本 でも “フレッシュ” より、 “もぎたて” のほうが素敵だと思う。絶対いい!
坂本 伊代さんは1981年10月デビューで、優さんは1982年4月デビューですけど、賞レース上は同期で、 “花の’82年組” と呼ばれるほど、たくさんのスターが誕生した年のデビューなんですよね。
早見 (堀)ちえみちゃん、(石川)秀美ちゃん、(中森)明菜ちゃんがいて……。
松本 小泉(今日子)ちゃんもそうだし、男のコはシブがき隊。
坂本 すごい! みなさん、わたしの青春時代を彩ってくれたスターばかりです。
松本 ふふふふふ。
早見 また、また(笑)。
坂本 本当ですって。見た目はわたしのほうが上ですけど(苦笑)、デビューが1987年3月なので、いちばんのぺぇぺぇです(笑)。
松本 大御所の冬美ちゃんが、何をおっしゃいますか。
坂本 やめてくださいよ、もう。美奈子ちゃんが残してくれた『LIVE FOR LIFE 音楽彩』で、初めてお2人にお会いしたときも、青春時代のトップアイドルにお会いできるということで、ドキドキしていたんですから。
松本 ジャンルが違うと、お会いする機会はほとんどないですもんね。
坂本 そうなんです。これも美奈子ちゃんがつないでくれたご縁なので、美奈子ちゃんに感謝です。
早見 私は冬美ちゃんの歌が大好きだったので、私も美奈ちゃんに感謝です。
松本 初めましてのときも、すごく気さくにお話ししてくださったしね。
坂本 何度も言いますが、お2人は青春時代のトップアイドルで、大先輩なんですから。
早見 いや、でも『LIVE FOR LIFE 音楽彩』で、美奈子ちゃんコールの次に多いのが冬美ちゃんコールですから。
松本 当時はジーンズにTシャツ姿だった親衛隊のみなさんが、今はスーツ姿で駆けつけてくださって。なんだか、当時に戻ったような気持ちになるんですよね。
坂本 出演させていただいたときは、美奈子ちゃんの歌も歌わせていただくんですけど、美奈子ちゃんの歌って難しい曲が多いんですよね。
早見 『LIVE FOR LIFE 音楽彩』のオープニングで、美奈ちゃんが病室で録音したアカペラの歌に合わせて、平原誠之さんがピアノを弾いてくださるんですけど、普通アカペラで歌うと、後半、半音くらいずれるじゃないですか。でも、美奈ちゃんは最後まで変わらないんですよね。
松本 美奈子は、絶対音感があったのかな?
早見 病室でアカペラで歌うというのもすごいし、最後まで音程が落ちないまま歌い上げるというのは、これはもう、ものすごいことですよね。
坂本 美奈子ちゃんもすごいけど、今も10代のころの声のままキーを変えずに歌っていらっしゃるんですから、お2人もすごいです。
松本 恋じゃなーい♪
早見 Yes!(笑)
坂本 それです! 若いころから発声練習とかボイトレとかやっていらしたんですか。
松本 ボイトレは好きだったので、やっていましたね。
早見 私は申し訳程度にしかやっていなかった。やる時間もなかったし。時々思うんです。若いころから今くらいきちんとやっていたら、もうちょっと違ったのかなぁって。
■夜中のスタジオにはお化けが出るという噂
坂本 あの時代、アイドルの方はほとんどお休みがなかったと伺いましたが……。
早見 眠るのも移動中ということが多かったし、お休みは、海外のCM撮影があって早く終わったときに一日だけもらえるくらいで……。それ以外でお休みをしたという記憶はないですね。
松本 私は最初に「2年間はお休みがないと思ってください」と言われていたので、お休みが欲しいとも思わなかったような気がします。
坂本 それが普通だった?
松本 まわりの先輩もそうでしたし、それが普通だと思っていたので、特別キツいとは感じなかった気がします。
早見 レコーディングも、夜中というのが多かったしね。
坂本 夜中に声を出すんですか? わたしには無理です。
松本 ですよね? でも、やっていたんですよね、それも当たり前のように。若さなんですかね(笑)。
早見 夜中のスタジオには、お化けが出るという噂があって(苦笑)。恐る恐るレコーディングしていたのを覚えています。
松本 あったあった! 岩崎宏美さんの『万華鏡(まんげきょう)』だったかな。ボーカルの後ろにうめくような男の人の声が入っているという。
早見 怖い、怖い、怖い!
坂本 演歌の先輩方もそうですけど、わたしの時代とは大変さのレベルが違っていて。それを乗り越えてこられた方々の気力と精神力、底力は本当にすごいなって思います。
松本 あそこで鍛えられたんですよね、きっと。
早見 しょっちゅう風邪をひいていたから、鼻声で歌っている曲もありますけどね。
松本 あるある! めっちゃ鼻声のがある(笑)。
坂本 突然ですが、お2人はこれから先の目標、未来予想図はありますか?
早見 私は、ずっといい形で歌っていけたらいいなぁと思っています。元気な歌が多いので(笑)。
松本 優ちゃんはそうだよね。私は……聴きに来てくださる方がいて、自分の声が出続ける限り、頑張りたいと思っています。
坂本 夏ちゃん(伍代夏子)のインスタグラムで知ったんですけど、昨年、丸の内のコットンクラブでスペシャルライブをされたんですよね。
松本 いつもは、森口博子ちゃんと3人で「キューティー☆モリモリ」というユニットを組んでライブをしているんですけど、あのときは優ちゃんと2人、『SWEET WINTER〜2人のパストライフ〜』でステージに立たせていただいて。
早見 伍代さんが観に来てくださったんですよね。
坂本 お2人のように、きっと美奈子ちゃんも、結婚したかっただろうし、子供が大好きだったので子育てもしたかったんだろうと思うんです。
松本 美奈子なら、きっとそうですね。
早見 ママになった美奈ちゃんも見てみたかったですね。
坂本 だからこそ、それをすべて経験されているお2人には、これからも美奈子ちゃんが歌えなかった歌を歌い続けていってほしいです。
早見 ですね。頑張ります。
坂本 わたしも、コットンクラブでのライブを観させていただきたいので、そのときは必ず教えてくださいね。
松本 ぜひぜひぜひ!
早見 というか、冬美ちゃんも出てくださいよ。一緒にやりましょう!
まつもといよ
1965年6月21日生まれ 東京都出身 1981年に『センチメンタル・ジャーニー』で歌手デビュー。日本レコード大賞新人賞をはじめ、多くの音楽新人賞を受賞。以降、歌手活動のほかにバラエティ番組などで活躍。10月4日、5日に、東京・大手町三井ホールにて、『松本伊代Live2025“Journey“〜and Sweet Sixty〜』を開催する
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など、幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『浪花魂』が好評発売中
はやみゆう
日本生まれ。幼少期をグアムとハワイで過ごす。1982年『急いで!初恋』でデビューし、『夏色のナンシー』『PASSION』などのヒット曲を持つ。2024年には自ら作詞を手がけた新曲『DISCO de DISCO』をリリース。近年はジャズにも挑戦し、新たな音楽の可能性を広げている
写真・福田ヨシツグ
取材&文・工藤 晋
スタイリスト・小泉美智子(坂本)
ヘアメイク・岡崎じゅん(坂本)、井原結衣(松本)、伊藤こうこ(早見)
衣装・スカート/ FURUMAU、サンダル/ASH(坂本)、
衣装・KEITAMARUYAMA(松本)