エンタメ・アイドル
『坂本冬美のモゴモゴ紅白』第12回/白を基調に、桜の花びらをイメージした振り袖で『夜桜お七』を初熱唱

坂本冬美
放送時間が30分繰り下げられ、20時スタートとなった『第45回NHK紅白歌合戦』でオープニングを飾ったのは、紅組trfさんの大ヒットナンバー『BOY MEETS GIRL』です。
ーーえっ!? 小文字のtrfじゃなくて、大文字でTRFだったはずでは?
そう思われた方もいらっしゃると思いますが、当時は小文字。大文字に改称したのは、1996年6月です。
関連記事:【早見優×坂本冬美×松本伊代】謎のキャッチフレーズから本田美奈子.の存在感まで…「昭和の音楽シーン」語り尽くす
第1部の紅組でトリを務められたのは、わたしと誕生日が一緒(3月30日)の大先輩、島倉千代子さんで、楽曲は『人生いろいろ』でした。
若手と言っていいかどうか、ものすごくビミョー(苦笑)、夏ちゃん(伍代夏子)、あやちゃん(藤あや子)、(香西)かおりちゃんもいたと思います。応援隊として参加させていただき、島倉さんのバックで「い・ろ・い・ろ!」と、みんなで合いの手を入れたことを思い出します。
5分のニュースを挟んで、21時30分に始まった第2部のオープニングを飾ったのは、紅組が松田聖子さんで、白組が吉田拓郎さん。大物すぎるお2人の意外すぎる組み合わせ……これも『紅白』だから実現できたことです。
時計の針はどんどん進み、わたしがステージに上がったのは、郷ひろみさんの『言えないよ』、森高千里さんの『素敵な誕生日』、西城秀樹さんの『YOUNG MAN(Y.M.C.A)』、細川たかしさんの『夢酔い人(びと)』の次です。
歌わせていただいたのは、三木たかし先生が曲を、林あまり先生が詞を書いてくださり、この年の9月7日に発売した新曲『夜桜お七』です。
発売前は「これは演歌じゃない」とか、「坂本冬美を潰す気か」と喧々囂々(けんけんごうごう)。逆風の嵐に晒され、発売中止寸前まで追い込まれたこの歌が、まさかわたしの代表曲になるなんて、三木先生お一人をのぞいて……いや、もしかすると「30万枚売れなかったら、頭を丸めて責任を取ります」と啖呵(たんか)を切った三木先生も、ここまでのことは予想していなかったかもしれません。
9月に発売し、翌年の春、桜の季節にかけて多くの方々に愛していただけることになったのは、発売したばかりの新曲を『紅白』のステージで歌わせていただいたことがきっかけです。
“紅白の役割は終わった”時代に合わない”などなど……喧(かまびす)しい言葉も耳にしますが、昨年、B,zさんの初出場が、SNSでも盛り上がり、ファンクラブ数が急増。「いいものはいい」とあらためて証明してくださったように、『紅白』の影響力は、いつの時代も国民的人気コンテンツであることは間違いありません。
衣装は白を基調に、桜の花びらをイメージした振り袖。袖はこんな感じで、桜色は明るめの蛍光色がいいと、デザインから色まで初めて自分で考え自分で作ったお着物です。
衣装は、事務所やレコード会社で作ってくださると思ってる方もいらっしゃると思いますが、それは間違いです。大いなる勘違いです。
一度だけ、レコード大賞新人賞をいただいたときに、レコード会社の社長さんが白の着流しを作ってくださったとき以外は、新しく作るお着物は、すべてすべて、何から何まですべて自前です(かなり根に持っている!? 苦笑)。
この第45回を皮切りに、これまで『夜桜お七』を歌わせていただいたのは9回。目指すのは、石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』(13回)、『天城越え』(13回)です。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、最新シングル『浪花魂』が好評発売中!
写真・中村 功、産経新聞
取材&文・工藤 晋