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『愛の、がっこう。』ラウールと結ばれると「色恋営業」の助長に…ホストを美化せずハッピーエンドにするには

ラウール
普通の恋愛ドラマならば、社会問題などは意識せずにそのままカップル成立のハッピーエンドでもいいだろう。
しかし、この物語の性質上、よほどうまい落としどころを見つけない限り、安易にハッピーエンドにはできない。主人公の高校教師を木村文乃、恋の相手役のホストをSnow Man・ラウールが演じる純愛ドラマ『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)のことだ。
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■高校教師と売れっ子ホストの純愛物語
名門私立女子校の国語教師・小川愛実(木村)は、ホストにハマッている生徒を連れ戻すため、歌舞伎町のホストクラブへ出向き、生徒が貢いでいたカヲル(ラウール)と出会う。
カヲルは達者なトーク力を武器にNo.1ホストを目指しているが、実は育った家庭環境が悪く小中学校もまともに通っていなかったため、漢字の読み書きが苦手だった。
カヲルが周囲の仲間にも隠していたそのコンプレックスを知った愛実は、読み書きを教える秘密の個人授業を開始。次第に2人は恋愛的に惹かれあっていくというストーリーだ。
愛実の婚約者や両親にカヲルとの関係を知られたため、第6話で、もう会わないという約束をしたが、いくつかのトラブルが重ったことで、先週8月28日(木)放送の第8話で2人は再会している。
カヲルの店で、客がNo.1ホストを刺し殺そうとする傷害事件が起こったため、この第8話では勤め先のホストクラブが閉店する様子も描かれた。
■色恋営業のプロパガンダドラマに?
現実社会では、今年6月28日に風営法が改正され、ホストクラブへの規制が強化されている。
いくつか追加された内容があるのだが、特に注目を集めたのが「別れたくなければ高いお酒入れて」「シャンパンを入れてくれないと格下げになってしまう」といった、客の恋愛感情につけこむ営業行為が規制されたこと。要するに「色恋営業」を禁止した法改正だ。
ここで『愛の、がっこう。』の話に戻そう。結論から言うと、カヲルが純愛に目覚めて愛実と恋人になるという結末にすると、色恋営業を助長することになりかねない。現実社会でそのハッピーエンドを利用する悪質ホストが現れる可能性があるからだ。
このドラマに感動した女性やSnow Manファンの女性が、ホストクラブに興味を持って足を運ぶようになるかもしれない。そして、悪質ホストがカヲルのセリフや行動を模倣して、「君のことが本当に好きなんだ」といったセリフで、高額なシャンパンを注文させるリスクも出てきかねない。
劇中のカヲルが夜職であるホストから足を洗って、昼職になってから正式に交際開始する結末だとしても、懸念は解消されない。現実の悪質ホストが、本当は足を洗う気なんてさらさらないのに、「君と結婚するためにホストをやめる。でも、その前にNo.1になりたいから協力して?」と、偽りの甘言でお金を使わせることもありえるからだ。
つまり、安易に主人公がホストと結ばれるエンディングにすると、色恋営業のプロパガンダドラマになり下がってしまうのだ。
■色恋営業とは一線を画すハッピーエンド
第7話で愛実の親友(田中みな実)が、手厳しくこう指摘するシーンがあった。
「疑似恋愛だってやつらの仕事でしょ。ねぇ、まだわかんない? あんた、ホストにハマッてんだよ? もうホス狂い10秒前! 9、8、7、6……! で、ハマった女はみんな、『あの人だけは本当にいい人なんだ。私のことだけを本当に愛してるんだ』って信じ込んで、人生転落してくんだよ。愛実、シャレじゃなく、なにもかもなくすよ? いいの?」
親友のこのセリフは、劇中の主人公に向けての発言であると同時に、ホストに幻想を抱きそうになっている視聴者への警鐘なのだと思う。
けれど、第8話でも、カヲルへの好意を断ち切れずにいる愛実の心情が描かれた。
大事なポイントなので繰り返すが、“カヲルが真実の愛に目覚めてホストをやめればOK”――というわけではないのが難しいところ。その結末を、現実のホストが悪用する懸念があるかぎり、劇中の2人は結ばれてはいけないのだ。
とはいえ、個人的な気持ちを表明しておくと、筆者は愛実とカヲルの純愛にめちゃくちゃ引き込まれているので、2人が結ばれるハッピーエンドであってほしい。
そこで考えたのだが、たとえばカヲルがホストをやめてカタギの仕事に就くものの、2人は別れて会うことはなく、物語を一気に5年後ぐらいまでジャンプさせ、再会して結ばれる。
こうした結末なら、「5年もいっさい会っていない」という空白期間が、色恋営業と一線を画す純愛なのだという免罪符となり、ハッピーエンドにできるだろう。
今夜の放送は第9話。物語も終盤だ。うまい着地点を見つけて、“色恋営業のプロパガンダドラマ” なんてレッテルを貼られることなく、2人の愛が実る終幕を期待している。