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『超電子バイオマン』の主役男「ファンの思い」が闘病支える
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2018.05.31 08:00 最終更新日:2018.05.31 08:21
子供のころ、テレビで「スーパー戦隊シリーズ」を観ていた方も多いことだろう。1975年から始まったこのシリーズは、いまや若手俳優の登竜門となった感もあるが、坂元亮介さん(58)は、1984年から放映されたシリーズ8作めの『超電子バイオマン』の主役、レッドワン・郷史朗を演じていた。
「小林旭さん、浅丘ルリ子さん、松方弘樹さん、三大スターが競演する全国公演があり、共演させていただきました。織田信長役の小林旭さんの敵役といういい役。2013年から2年間、130公演を務めさせてもらいました。
それが終わると、しばらくしてから肺炎にかかり、入院しました。ついでにいろいろ検査してもらったところ、食道ガン、それもステージIIIという診断を受けました。リンパ節に転移していて、すぐ抗ガン剤治療と手術を受けないと、余命一年と宣告されました」
地元・神奈川県逗子市の病院から国立がん研究センター中央病院に転院し、治療が始まった。なによりきつかったのは抗ガン剤治療。胸焼けによる嘔吐、味覚障害など副作用がひどく、3回の治療を2回でやめ、手術した。
「余命一年と宣告されたときは、もうダメかなと思いました。最初は信じなかったのですが、だんだん信じるようになり……。9時間半の大手術でした。
胃と食道の半分を切ってつなげるのと、背中側からリンパ節に転移していたガンを切除する手術の両方をやりました。麻酔から覚めて、ここはどこだろうと思ったときに、妻の泣いている姿が目に入りました。ああ、生き返ったんだなと、実感しました」
34年前に『超電子バイオマン』でリーダーのレッドワンを1年間演じたことで、全国、海外のファンから励ましのメッセージをもらった。それがあって生きて帰ってこ られた。
「ヒーローもガンには負けてしまうのか? だけど勝った。僕だけの力ではなくて、目に見えない何かの力があって、そのおかげで今がある。手術から1年半たちましたが、今は元気で、芸能界への復活までできました」
ヒーローとファンの結びつきは想像以上に強い。じつは坂元さんは、かつて父が亡くなった後、芸能界を離れ、家業の印刷屋を継いだ兄を手伝った。好きなことをさせてくれた父への恩返しの思いがあった。数年後に芸能界へ戻ったが、そのきっかけを作ったのはファンからの電話だった。
「15、6年前のことですが、電話はあるフランス人のファンからでした。『超電子バイオマン』がフランスで大ヒットして、それをモチーフにして作られた『フランスファイブ』が大流行している。フランスで開かれる『ジャパンエキスポ』に出演してほしいという依頼でした。
それがきっかけとなって、『赤祭』というヒーローイベントを仲間と始めて、徐々に芸能界の仕事を再開するようになりました」
ところでガンからの芸能界復活は、歌手としての再デビューでもある。4月にCD『生きてゆく〜こんな乱れた時代を〜』が発売された。
男性デュオ「狩人」の高道が松方弘樹のために書いた作品で、遺作となった映画の中で松方が歌ったものだ。
「不思議な縁を感じました。同時期に病気になった。松方さんは『遠山の金さん』の全国公演をおこなう予定で、僕の出演も決まっていた。恩師の松方さんは亡くなられ、生き返った僕が歌わせていただいている」
坂元さんはこう続ける。
「戦隊シリーズは5人の力がひとつにならないと悪と戦えないのがテーマ。これがいまだに人気のあるゆえんです。僕にはリーダー・レッドワンとしての責任がある。欠けるわけにはいかない。僕が元気に仕事をすることで、応援してくださった方々への恩返し、また病気の皆さんの励みになればいいと思っています」
役は人をつくる。大きな声と強靱な精神に、レッドワン・郷史朗の姿が重なって見えた。
(週刊FLASH 2018年6月12日号)