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パルムドール受賞「是枝裕和監督」基本的に観察してしまう
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2018.06.01 20:00 最終更新日:2018.06.01 20:00
『万引き家族』で、第71回カンヌ映画祭のパルムドールを受賞した是枝裕和監督が、5月23日、都内で会見を行った。
日本人監督によるパルムドール受賞は、今村昌平監督の『うなぎ』(1997年)以来21年ぶり。テレビのドキュメンタリーディレクター出身の是枝は、1995年に『幻の光』で監督デビュー。『誰も知らない』(2004年)では、主演の柳楽優弥が14歳でカンヌ映画祭の最優秀主演男優賞を受賞し、話題となった。
会見で記者から「ドキュメンタリーからキャリアをスタートさせ、20年以上映画に関わってきているが、今回の受賞で何か変化があるか?」と聞かれると、こう答える。
「そんなに変わらないですね。基本的に観察してしまうので。テレビディレクターの性なもんですから。公式上映でスタンディングオベーションをもらっても、なんとなく、そろそろ終わらないと『なんだこいつ拍手がまだ欲しいのか?』って思っている人がいないかと探しちゃう。(喝采を)楽しめないところがある」
さらに「根っこは変わりませんし、それが僕の強みでもあれば、もしかすると弱点かもしれない。基本的にはいままでと同じスタンスで映画と、可能であればテレビに関わっていこうと思っています」と語った。
是枝は「日経ビジネスアソシエ」(2008年7月1日号)のインタビューで、テレビ業界に入って情報番組のADになったものの、自らドキュメンタリーを撮るようになった経緯をこう明かしている。
「会社になじめなかったんですよ。大学もそうだけれど、なじめないところからしか僕はスタートできない。それで、はみ出したところから何か考えるというのが続いているんです。寂しいことに(笑)」
入社1年目の新人で関わった番組が「一つも面白いと思えなかった」という是枝。仕事もうまくできず、加えて無口な性格だったため、周囲からどやされる日々が続いたという。
「現場では『おまえがいると、場が暗くなる』などと存在を否定するようなことを言われて、罵倒されることもしばしばでした。僕はとりあえず謝ってしまうみたいなことができなくて、周りと衝突を繰り返していました」
その後、自ら長野県の伊奈小学校へ行き、総合学習の時間で「子牛」を育てる生徒たちの姿を3年間追った。このほか生活保護、公害、在日朝鮮人、同和問題など、様々な社会問題に対して、カメラを通して向き合ったという。
「日経ビジネス アソシエ」のインタビューでは、「ドキュメンタリーをやっていなかったら、映画の撮影現場でもっと頭が固かったと思います」と述べていた是枝。
彼の原点は、たとえ世界最高峰の映画賞を取ったとしても、テレビディレクターであることに変わりないようだ。