そして今回、敬愛する中田監督からのオファーで、大好きなホラー要素と、ポルノ要素がかけ合わさった『殺人鬼を飼う女』に、ふたたび主演として迎えられた。同作は、ホラー小説の大家である大石圭氏の同名小説の実写版だ。
「今回の映画は多重人格の話で、『私』を4人の役者で演じています。自分が担当しているときの『私』と、別の方が演じるキャラクターが出てきて、そのあと見ためだけ自分に戻った『私』にギャップを出すところが大変でした。
現場に入って実際にお芝居をするときには、性的虐待のトラウマがあって、男性に怯えながら生きている役なので、心が死んでるような状態になって。目が生きてないというか、汚い内面も出てるんじゃないかなと思ってます。だからわたしの目の演技は、ひとつのポイントですね。
中田監督には、『「ホワイトリリー」のときよりも、お芝居が好きになってるね』と言っていただきました。ただ、監督からは直接的に褒めていただくことは、あまりません。演技がいいときは、監督のカットのかけ方が変わるんです。
一番それを感じたのは、ひとりの男性との関係を巡って母役の根岸季衣さんに殴られるシーンです。地面にバンと倒れて、その勢いでもみくちゃにされるシーンで、現場もすごく張り詰めた雰囲気でした。
実際に根岸さんの手も当たって、多少痛くはあったんですが、もちろん倒れ込むほどではありません。軽い力加減で、仕上がりにあんな憎悪の迫力が出せるなんて、『さすがプロだな』と、叩かれながら感動していました。
ふだんお芝居でやらせていただいている殺陣なんかでは、通常時のお芝居と違う、特殊な状況と見栄えになるんですけど、今回は現実に近い状況で。実際に殴られている人は見たことがないのですが、演じていて『こんな感じなんだろうな』という思いが沸いてきました。
気持ち的に追い詰められていたシーンでもあって、すごくリアルで。辛いし、心が痛かった。このシーンは後半にあるのですが、ぜひ見ていただきたいですね」
ホラーも激情も「自分ごと」として演じる飛鳥には、役作りにも独特の感覚と方法論がある。
「もともと物語がとても好きで、物語の世界に没頭するときの状態がそのまま、お芝居の状態なんです。自分の存在は現実にあるのに、空想の世界にいるような感覚といいますか。憑依型なのかもしれません。
だから、感情の起伏が激しい役をやったときは、ふだんも感情が激しくなることがある……らしいです。あとは、いつもは標準語なんですけど、関西弁の役をやったら、バリバリ関西弁の気の強い女の子になってたりとか。そういうことがけっこうあって、友達とか共演者の人に指摘されます。自分じゃ全然わからないんですけど、人に言われて『あ、そうなんだな』って(笑)。
役をいただいて取り組むときは、考えすぎてしまうタイプです。根を詰めすぎて、どうしたらいいかわからなくなってしまって、『ちょっと1回お休みしよう』ということが、1回の現場で何回かありますね
うちに犬がいるんですけど、お芝居の練習するとき、台本覚えるときとかも、犬に向かって喋るんです。目を離さずにずっと聞いてくれるから、覚えやすくて、最高のパートナーですね(笑)。作業として台本は覚えつつも、そういうときが『考えるのを1回お休み』する時間です」
私生活の過ごし方にも、ちょっと変わった感性が働いている。
「物語が好きなので、30ページぐらいの、海外の英文で書いてある絵本を図書館で借りてきて、よく読みます。動物たちが出てきて、仲間内のまじめな子がいい結末を迎える結果になる、王道のストーリーばかりで。
でも英語まったくできないんです(笑)。1個ずつ単語を調べていくんですけど、なかなか楽しいんですよ。『辞書引いてる自分頑張ってるな』って。
あと最近は、本を読みながらお茶できる、『本屋カフェ』によく行きます。『コーヒー』と『カフェの場』と『本』が好きなので、お休みの日は、本の匂いを嗅ぎながらコーヒー飲んで、何時間もぼーっと過ごすのがお気に入りの過ごし方です。
ちなみにコーヒーは濃い、苦い系が好きです。最近ブラック飲めるようになりました。突然、飲めるようになったんですよ! ブラックコーヒー飲める人って、大人でかっこいいなと思ってて。じつはそういうのが何個もあります。
たとえば、パクチーも『食べれるひと、可愛いな』って思ってて。それで、パクチーを無理して食べてたり、ブラックコーヒーを無理して飲んでたら、好きになったという(笑)」
物語や理想の姿に、自分を溶かしていく。そんな性分に、変幻自在の演技の秘密があるのかもしれない。撮影が終わってから役を引きずっている自覚はないが、自分の中の「ホラー」には気づいていて……。
「犬と散歩に行ってリフレッシュすることが多いんですけど、家の中ではもちろん、外でもずっと、ひとりで犬に喋りかけてるんですよ。だから、歩いている時にすれ違った年配の女性に『赤ちゃんがいると思ったら、犬だったの!?』って言われることがよくあります。若い女性とすれ違うと、すごい早歩きになって逃げていきますし。
ジャージに帽子かぶってマスクして、喋りながら散歩してるので、見ためは確実に不審者なんですけど(笑)。それでいて、けっこう声もオンモードで、前見て歩きながら、今日あったことなんかを話しているので、気持ち悪いですよね……。夜中、ジャージに帽子にマスク姿で、大声で喋りながら歩いている人がいたら、それは確実に私です(笑)」
あすかりん
1991年3月28日生まれ 大阪府出身 2007年に女優デビュー、『ひぐらしのなく頃に』シリーズ、『口裂け女2』などのホラー作品に出演後、『仮面ライダーW』でブレイク。2017年2月に中田秀夫監督のポルノ映画『ホワイトリリー』に出演し、同時期にヌード写真集『凛』を出版。6月5日から16日まで、赤坂レッドシアターで舞台『バクステ!!』に出演。詳しい情報は公式ツイッター(@rrrrrin_0328)またはインスタグラム(@rin_asuka0328)で
※最新主演映画『殺人鬼を飼う女』は、全国公開中