永遠の5歳児・チコちゃん。
日常の素朴な疑問を、岡村隆史をはじめとする出演者に投げかけ、答えられなければ間髪を容れずに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と一喝。
そんな斬新な演出が話題のバラエティ番組『チコちゃんに叱られる!』が愛される理由を番組プロデューサーの小松純也氏に聞いた。
【関連記事:初紅白のリハで大はしゃぎ「チコちゃん」注目せねば叱られる!】
――『チコちゃんに叱られる!』は、どんなふうに誕生したのでしょうか。
十数年前に担当した『笑っていいとも!』の「君たちは漫然と生きていないか?」というコーナーは、今振り返るときっかけのひとつですね。
「西の反対は?」などの超常識問題なのに、意外と不正解が出る。知っていて当然と思っていることがわからないというのは、おもしろいなと。その体験が番組の誕生に繋がったと思います。
――最初からチコちゃんを登場させようと決めていたのですか?
企画段階から、5歳の女の子が大人に質問し、答えられなかったら叱るという構想はありました。たとえば、冠婚葬祭のとき、大人のなかに子供がいると、和やかな空間になりませんか?
子供がいることで、より無防備な人間の姿が出ると考えたのです。
それに、ちょっと憎たらしい女の子にゲストが叱られるのを、高みの見物をするのは楽しいし、同時に、答えがわからなかった人は、自分が叱られていたかもと思うはず。家族全員で同じように「自分事」として、観られると思いました。
――いまや多くの日本国民が「チコちゃんに叱られたい!」状態です。
ここまで愛してもらえるとは、想定外でしたね。意図的にちょっと生意気なデザインにしたのに(笑)。でも、名前だけは、かわいくしたいなと悩んで。
じつは、チコって、僕の親友の奥さんのニックネームからとりました。チコちゃんの言動については、番組をおもしろくしようという気持ちで作り上げましたが、NHKさんが5歳児の「ボーっと生きてんじゃねーよ!」にOKを出してくれるとは驚きましたね(笑)。
――いい意味でNHKらしくないという声は多いと思います。
『NHKスペシャル』の映像をそのまま使わせていただいたり、『ダーウィンが来た!』のディレクターさんに解説VTRを作っていただいたり、節操がない(笑)。
NHKさんが持っている映像や映像技術は世界トップクラスですから、本当にありがたい気持ちとリスペクトを持ちながら、「他人のふんどし」を存分に使わせていただいています。そのうえで、徹底して制作過程をオープンに。
質問の答えが想定外の方向へ進んでも、その様子を楽しく見ていただければいいなと。答え自体よりも、日常の疑問を知ろうとしたら、こういうことがわかったという、「気づき」を楽しんでもらいたいですから。
今、番組は家族一緒にテレビを観る楽しさを構築しはじめたと手応えを感じていますし、そこが支持されている理由だと思います。家族で同じ「気づき」を共有してもらえると最高です。
こまつじゅんや
1967年2月22日生まれ テレビプロデューサー、演出家。1990年にフジテレビ入社。『ダウンタウンのごっつええ感じ』、『笑う犬の生活』、『笑っていいとも!』などに携わり、今年3月に退社。現在『人生最高レストラン』(TBS系)などを担当