じつは千葉氏、現在26歳の若手局員。入社2年めの24歳のときに、フジテレビの企画コンペで1位になったのがこの『99人の壁』だった。「世間があっと驚くMCは誰だろう」と考えた末、佐藤二朗を “熱血企画書” で口説き落とした。
「大人数対1人という構図で何かをやりたいと思ったんです。そこで、ふと、『早押しクイズをやったらどうなんだろう』と考えました。99人相手に1人で倒す瞬間を想像したら、『すごいぞ』って」(千葉氏)
なんとか佐藤を振り向かせようと作った企画書は、「愛のメッセージのような手紙でした」という。佐藤が、オファーを受けたときのことを振り返る。
「いただいた企画書が、完全に僕を落としにかかってました。『あなたしかいない。全力でバックアップします!』って(笑)。
当時は48歳。それまで、『まわりの熱に押されて船に乗っかって、いつのまにか船出してた−−』ということが、人生であまりなかったんです。そういう経験が1回ぐらいあってもいいかなと思いました」
そんな佐藤は、今も千葉氏に全幅の信頼を寄せる。
「年齢的にはダブルスコアですけど、精神的には完全に、千葉に依存してます。心の中で、『お父さん』と呼んでます(笑)。千葉がいなかったら、ひと言もしゃべれません」
じつは台本は、ほぼない。千葉氏が出したカンペを佐藤が読み、番組は進行していく。
「二朗さんがフリーズしているときは、僕がカンペを出すのが遅れているときです(笑)。『このボールを投げ込んだら、なんて言うんだろう』って考えながら、カンペを書いています。いつもワクワクさせられる、おもちゃ箱のような人なんです」(千葉氏)
出場者の幅広さは、クイズ番組史上でも例を見ない。取材日も、小学生、芸能人、現役東大医学部生、そして14日開幕のW杯に出場するバレーボール日本代表チームなど、さまざまな顔ぶれ。身長181cmの佐藤だが、204cmの山内晶大選手との腰位置の差に絶句していた。
「100名いらっしゃる挑戦者の方たちそれぞれに、人間ドラマがあります。挑戦者に親しみを感じたり、興味をもったりできる番組なんですよ」(槇原氏)
実際、何度も番組に出場し、人気を呼ぶ小学生男子も多い。佐藤と彼らの絡みも魅力だ。
「あいつらは、ちょっとでも興味がなくなると寝ますからね(笑)。こっちも “精神年齢8歳” でやってますし、『コントロールしよう』なんて思っていません」(佐藤)
業績不振で “超逆境” にあったフジテレビだが、2018年から売り上げは回復傾向。2019年6月に就任した遠藤龍之介社長(63)は、本誌のインタビューでこう語っている。
「さらに上げ潮ムードにするためには、ゴールデンタイムのバラエティでヒット作が出ること。バラエティのメリットは、視聴習慣がつくことです」
『99人の壁』は、その期待を一身に受けているのだ。千葉氏はさらなる進化を目指す。
「クイズ番組群の枠からはみ出てる番組、クイズ好きな人も、そうでない人も観られるような番組が理想。ほかのクイズ番組とは一線を画するような、へんな番組であってほしいと思っています」
若き局員と個性派俳優のコンビが、フジテレビを変える。
(週刊FLASH 2019年9月17日号)