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おかやまはじめ、緒形拳と大杉漣に「役者の道」を学ぶ
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2019.11.04 20:00 最終更新日:2019.11.04 20:00
重厚な扉を開けると、店の壁にはたくさんの映画や演劇の告知ポスターが貼られている。おかやまはじめ(55)が通う「犀門」は、演劇人が集うことで有名な居酒屋「池林房」(新宿)の系列店だ。
「池林房には、サラリーマンになった大学の先輩などに連れていってもらっていたので、自然とここにも30年前の開店時から通っています。還暦祝いもここでやろうかなんて、仲間内で笑っています」
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おかやまは、いま引っ張りだこの俳優のひとりだ。
「僕の何かを見てもらっているんでしょうね。下手な演技を、若いころはうまく見せようと思っていたけど、いまは開き直ってます。ようやく出演依頼が増えてきました(笑)」
2018年8月に発表された「ドラマ出演数ランキング」では、光石研、滝藤賢一、遠藤憲一らと並ぶ9位(「日経エンタテインメント!」調べ)。この1、2年だけでも、病院の事務長、ホテルの総支配人、喫茶店や定食屋の店主、秘書、町工場の経営者などを演じた。
「いろいろな役で出演しているせいか、顔は認知されているのかなと思います。でも、名前は覚えられていないのでしょうね。街を歩いていても『あ、見たことある』みたいな反応が多いですから。
最近は、父親役が多くなりました。子供がいないから、擬似体験をしている感じです。少し前までは幼稚園児の父親の役だったのですが、いまは娘を嫁に出す父親。役柄でも、少しずつ年齢が上がっています(笑)。
飲み屋で隣り合ったお客さんの会話や仕草が、役作りのヒントになったりもしています」
おかやまの役者歴は、30年を超えた。しかし、その役者人生は、けっして順風満帆ではなかった。当初、おかやまは役者志望ではなかったが、一浪して大東文化大学経済学部に入学し、映画サークルに所属する。
「カメラマンなど “作り手” になりたかったんです。それが、大学2年のとき、学生劇団の舞台照明を手伝うことになった。
上演後に感想を聞かれて『つまんねえな。俺が舞台に上がったほうがおもしろい』と演技の経験もないのに言ってしまったんです。引くに引けず、その年の秋に舞台デビューしました。しゃべる猫の役でした(笑)」
そして、1987年に劇団「ラッパ屋」に参加することになる。その理由は「チラシがカッコよかったから」だった。
「そのとき見たのが『小百合さんのビル・エバンス』(1987年、鈴木聡演出)。感動して『この劇団、もしかしたら売れるかもしれない』と入団を決意したのですが……(笑)」
しかし役者をやめようと思ったことはない。
「芝居が好きなんです。単純に。売れないときも悲壮に感じたことはないです。ずっと昔にほかの役者さんと比較することをやめて、自分を褒めることにしましたから」
笑いながら語るが、忸怩たる思いをしたことも多かった。34歳のときのことである。
「芝居仲間が次々とテレビに出るようになっているのに、気がつけば僕は、取り返しがつかない年齢になっていた。沼の中にズブズブと入っていく感じがして、もがきました。
そこで、退路を断つため、バイトをすべて辞めたんです。だからカネがない。実家の母親に電話して、『お金を送ってください』とお願いしました。何も聞かず、5万円が振り込まれました。『俺、何やってんだろう』って落ち込みましたね」