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名曲散歩/山口百恵『いい日旅立ち』は商売っ気たっぷりのタイトル
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.01.16 20:00 最終更新日:2020.01.21 17:10
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん お、このイントロ……山口百恵の『いい日旅立ち』だね。作詞作曲は谷村新司! これはもう、単なる歌じゃなくて芸術だよね。
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マスター おっしゃるとおり。でもさ、知ってる? この曲のタイトル、実は商売っ気たっぷりだってこと。
お客さん 何よそれ。
マスター もともとこの歌は、1978年、国鉄のキャンペーンソングとして作られたよね。でも当時の国鉄は慢性的な赤字で、とてもキャンペーンにお金を回す余裕なんてなかった。
そこで音楽プロデューサーの酒井政利さんが、ふたつの会社に協賛を頼んだんだって。そのときの条件がタイトルに社名を入れること。
酒井さんは谷村新司に「タイトルにこの2社の社名を入れてくれないか」と頼んだんだって。
お客さん 社名が入ってる? 『いい日旅立ち』……あっ! 日立だ!
マスター そう、日立製作所は車両を作っているからね。もう1社は?
お客さん ……わかった! 日本旅行!
マスター 正解! ま、そういった大人の事情がからんででき上がった商売っ気たっぷりのタイトルだったってことなのよ。
お客さん そんなことを少しも感じさせない谷村新司もプロフェッショナルだねえ。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考文献:濱口英樹『ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人』(シンコーミュージック)