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『江戸前の旬』原作者が語る「ズワイガニよりも紅ズワイ」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.06.01 16:00 最終更新日:2020.06.01 16:00
マンガ雑誌『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)で、1999年から今も連載が続く、“老舗” の寿司漫画『江戸前の旬』。寿司の具である “タネ” のエピソードを中心に、すでに100巻が発売されている。原作者の九十九森先生が、「寿司ウンチク」を存分に語ってくれた。
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「最近、私が漫画でよく使っているのが、『紅ズワイガニ』。時期的には、9月から2月ぐらいが最盛期です。
紅ズワイとズワイガニの混合種で『黄金ガニ』というのがありまして。鳥取の寿司屋が『獲れました!』と送ってくれて、家でゆでて食べたんですが……なんとカニカマの味がして、がっかり(笑)。
そのあと、私が漫画の相談をする銀座の『やまだ』の親方も、黄金ガニを市場で見つけて、ゆでて食べたそうなんですが、『ウマいですよ』と。『なぜだろう?』と思いました」
答えを見つけるきっかけは、意外なところにあった。
「同じ時期に、たまたま回転寿司に行ったとき、『紅ズワイのにぎり』があったんですよ。ズワイガニは、身がパサパサしてるし、それ自体に味がないから、酢飯に合わず寿司は美味しくない。
でも、紅ズワイは身が水っぽいから、ちょうどいいんです。発見したときは驚きました。『カニカマだと小馬鹿にしていたけど、紅ズワイのほうがウマいじゃん』って。
それからいろいろ調べてみたら、生息している水深が、ぜんぜん違ったんです。ズワイが200m~400m、紅ズワイが500m~2500m。そして調理の方法も、ズワイガニと紅ズワイでは、まるで違った。
普通のズワイって、カニ味噌が流れちゃうから、背中を下にして脚をたたんでゆでる。そして業者さんは、紅ズワイや黄金ガニも同じようにゆでています。
ところが、紅ズワイは糞や泥やゴミが、腕の付け根や味噌のなかに、いっぱい入っている。だから、全部切ってキレイに水洗いしてから、脚はゆでて、甲羅は蒸さなきゃいけないんです」
正しい調理法で食べてからは、紅ズワイに夢中になった。
「ズワイガニより美味しいし、地元だと安い。ただ、紅ズワイはそもそも日本海側でしか獲れませんし、正しい調理法で紅ズワイを出しているお店は、東京にはないかもしれません。
現地でも、“漁師の食べ物” とされていましたので、これはいいと思って、『江戸前の旬』と外伝の『ウオバカ!!!』の両方に描きました(笑)。鳥取や富山などに行かれたときは、ぜひ食べてみてください」
つくもしん
青森県出身 漫画原作者 作画担当のさとう輝先生とコンビで週刊漫画ゴラクで連載中『銀座「柳寿司」三代目 江戸前の旬』、スピンオフ作品の『寿司魂』『旬と大吾』『ウオバカ!!!』などを執筆。メディアへの出演は、連載20年で「ほとんどない」そう
(C)九十九森/さとう輝・日本文芸社
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