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【食堂のおばちゃんの人生相談】51歳・自営業のお悩み
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.07.10 11:00 最終更新日:2020.07.10 11:00
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/犬伏さん(51)自営業】
真田幸村を尊敬している。知勇に優れ、損得より義を重んじ、信念を貫いた生き方こそ “男の鑑” だ。しかし最近の若い男どもは、目先の利益ばかり追いかけて、信念すらない奴が多い。このままでは、日本から「男」が消えてしまうのでは?
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【山口先生のお答え】
仰る通りで、まことに同感です。特に昭和が終わって以来、男女を問わずスケールが小さくなっているような気がしてなりません。
一番違和感を感じるのが、若い人に「尊敬する人物」を挙げさせると「両親」と答える人が多いこと。子供が両親に抱く主要な気持ちは「親愛」です。それに、両親は「人物」じゃないでしょう。
私はこの一番の元凶は、幼少の頃から「偉人伝」に接する機会が失われたことにあると思います。昔の小学校の図書室には必ず偉人伝のコーナーがあって、ガンジー、シュバイツァー、ナイチンゲール、ヘレン・ケラーなど、立派な人の生涯に感動したものです。
ところが、今や「偉人伝」は完全に教育の埒外におかれています。コンピュータと早期英語教育に取って代わられてしまいました。これが大間違いなんです。
純真な子供心に「立派な人は素晴しい」という観念を植え付けなければ、どうして「将来は自分も及ばずながら、ああいう立派な人を目指そう」と志せるでしょうか。
ほとんどの人間の想像力には限界があって、ゼロから理想の生き方を作り上げるのは難しいです。でも、理想のモデルがいくつか見えていたら、それを目指して努力することは出来ます。
だから犬伏さん、若者たちの「小者感」を払拭したければ、幼児の頃から偉人伝を読ませるに限ります。よみがえれ、偉人伝!
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中