今回の著書の執筆にあたり、新しく発見した仕事があって驚いたと山田氏は話す。
「『シーグラス拾い』なんて、本当に存在するんだと(笑)。コロナ禍で需要は減りましたが、『シェアビジネス』というものがあります。共有するものの典型は、車や住居だと思いますが、洋服などのモノ、スキルに時間と、なんでもシェア。空きスペースをシェアしてビジネスをしたり、飼い主が留守の犬を預かったりするサービスもあります。
旅行者が激減したので、民泊用の空き部屋を仕事スペースとして貸し出す『テレワーク部屋貸し』といった副業も現われました。アイデア次第で、なんでも副業になり得ます」
コロナ禍は、テレワークやニューノーマルなどの概念に象徴されるように、大きな社会変容をもたらした。しかし、山田氏が副業をすすめるいちばんの理由は、それではない。
「僕がもっとも伝えたいメッセージは、『脱会社』なんです。2019年の夏ごろ、ブラック企業に勤務して過労死するというニュースが相次ぐなか、『こうした労働問題を解決する手段こそ副業だ』と思ったのです。
仕事に追われて疲弊する前に、副業を始めて広い視野を得られれば会社を辞めやすくなるし、人生も豊かなものになると私は考えています。それが今回の本の企画段階でのコンセプトでした。
そこへ、コロナ禍による変化を踏まえた内容を加えました。たしかに、このパンデミックは社会の状況を、5年くらい一気に先へ進めたと言っても大げさではありません」
少子高齢化による労働力不足に備え、もともと国が副業を推奨していたところをコロナ禍に見舞われた。今後、労働環境が週5日勤務の体制に戻るかというと、そうではない企業も多いだろう。
「人件費を減らすためにも、正社員は雇いにくくなるでしょう。そうすると企業側も、不足する部分は副業人材で埋め合わせようとする。需要と供給がマッチして、副業の市場規模は拡大すると思います」
40代以上で、これから副業を始めるとしたら、どんな職種を選べばいいのだろう。
「目的によって変わります。確実にお金を稼ぎたいならティッシュ配り。逆に老後を考えるなら、コンサルタントやオンライン講師を目指したほうがいいです。自分の経験を生かして長く続けられます。
あとは、(8)株式投資やFX投資。これは長期間やれば稼げるものなので、老後も続けるのにちょうどいい。不動産価格は基本的に急落するものではないので、(9)少額不動産投資もいいと思いますよ」
山田氏が副業を始めようとする人に注意したいのが、「副業うつ」だという。
「自分のスケジュールをマネージメントできなくなり、時間がなくなって精神的にまいってしまう人がいます。本業も副業も完璧にやろうとする “真面目な人” が陥りやすい状況です。
あくまで副業ですから、楽しみながら手を抜くぐらいの気持ちでやるのがちょうどいい。人によって向き/不向きがありますから、自分に合わないと思ったらすぐにやめて、次の副業を探しましょう」
時間に追われて余裕も楽しさも失っては、元も子もない。まずは自分に合ったものを見つけることが肝心だ。そこで、山田氏からアドバイスが。
「これまで仕事と考えられていなかったものが、お金を得る手段になってきています。(10)ユーチューバーが、その典型。時代状況も変わるし、自分のスキルがどう生きるかは、本当にわからないものです。一度、自分に何ができそうかをじっくり考えたり、まわりの人に聞いてみたりするといいでしょう。
副業は、始めたらすぐに儲かるというものではありません。小さな積み重ねが勝利につながると考えて、根気よく続けてください」
隙間時間を活用する副業。地道に稼ぐことが確実な結果を生むのだ。
やまだしんや
公認会計士・税理士。芸能・エンタメ界の顧客を扱う「芸能文化税理士法人」会長。著作は『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書・165万部)、『女子大生会計士の事件簿』(英治出版・100万部)など。YouTubeチャンネル「オタク会計士ch」は、登録者数15万超
(週刊FLASH 2021年1月5日・12日合併号)